そんなこんなで、俺達はヒナの親を捜すことにした。

結局、音夢も夕飯の買い物ではないが付いてくることになった。

俺はヒナの右手を、ことりは左手をつないで街を歩く。
そしてその後ろを音夢が付いてくる。

傍から見れば相当変な図だよな・・・

一体どういった関係か、俺が第3者なら尋ねたくなるくらいだ。

「交番に届けた方が早いかな?」
「え、交番?」
俺はもっともな提案をしたつもりだが今の返事から察するに、ことりはあまり乗り気じゃないらしい。

「でも、兄さん・・・・・・」
音夢も同じく乗り気ではないようだ。

「ヒナを1人にするの?」
ヒナが俺とことりの顔を交互に見ながら不安そうに尋ねてくる。

「え、そんなことしないよ?大丈夫」
「うん、お姉ちゃん達が見つけてあげるからね」
これじゃ俺1人悪者じゃないか。

「分かったよ。ヒナのお父さんかお母さんが見つかるまでは一緒にいてやる」
「ありがとう、パパ、ママ」
とヒナは嬉しそうに俺達の顔を見て言った。
だから違うというのに。

「そのパパ、ママってやめないか?別に俺達ヒナのパパとママじゃないんだからさ」
「だってパパとママにそっくりなんだもん」
そっくりねぇ〜。会うのがある意味楽しみだな。

「だからいいでしょ?」
ヒナが音夢の様な下から見上げて来る目でお願いしてくる。
俺は本当にコレに弱いよな〜
俺はことりに目をやる。

「いいよ。ヒナちゃんのお母さんが見つかるまで、私がヒナちゃんのママになってあげる」
「ありがとう、ママ。で、パパは?」
ヒナがじーっと俺のことを見つめてくる。
だからこの目には弱いんだって。

「いいよ、いいよ。俺のこともパパって呼んでかまわないよ」
結局はこうなる運命か・・・・・・

「ところで、ヒナちゃん。お父さんとお母さん、どんな人だったか教えてもらえるかなぁ?」
「うん、いいよ!」
ヒナは満面の笑みで言った。よっぽど両親のことを話すのが好きなのだろう。

「パパとママはね、すっごく仲がいいの。ヒナはね、パパとママのことが大好きで、パパとママもヒナのことが大好きなの」
ヒナは両手で大きな輪を作り、そのくらい好きなのだと言った。

「で、どんな2人なんだ?」
「ママは歌が上手なの。パパはめんどくさがり!」
なんか背後からの視線が痛い・・・・・・

「そっくりね」
「ホント、兄さんとことりにそっくりですね」
「俺は別に似てないと思うがな。ことりはそっくりだけど」
というのはウソだ。自分のことぐらい分かってる。顔だけでなく性格もそっくりとは。
本当に会いたくなってきたよ。

「えーと、ヒナちゃん。なんでもいいから、私達にパパとママの話をしてくれるかな?」
「いいよ。ヒナ、パパとママのお話しするの大好きだもん」
やれやれ・・・・・・。そのうちの、どれかが両親を探す手がかりになるといいけどな。

それからヒナは本当に嬉しそうにヒナの両親の話をした。
聞いていて思ったのは、本当にヒナは愛されているということだ。
それだけに今、ヒナが両親を探しているのが信じられない。

ヒナは俺とことりの顔を交互に見ながら、一生懸命両親の話をした。
俺とことりは、ヒナの手をつなぎ、商店街を歩き続ける。

随分と商店街をうろついてはみたが、ヒナを探しているような大人はいなかった。
時々、街をゆく人々に聞いてみたりもしたのだが、知らないという答えしか返ってこなかった。
ってか、知らない間にウィンドウショッピングになってる気もした。
しかも、店に入って音夢とことりがヒナに白いリボンを買ってやったりもしていた。

「早くしないと日が暮れちまうぞ?」
「あっ、そうだね。音夢行こっか?」
「そうだね。ヒナちゃん、おいで」
空は少しずつだが暗くなり始めていた。

「ねぇ、パパ、ママ」
「なんだ?足でも痛くなったか?」
「お腹でも空いたの?」
俺とことりがヒナに尋ねる。

「足も痛いし、お腹も空いたの」
ま、そりゃそうだよな。あれだけうろうろしてたら。

「ん〜、じゃあ休憩にするか」
「あ、なら花より団子にしようよ」
音夢が少し離れたところにある店を指差す。

「賛成」
「ヒナも〜」
「いきなり元気になったな」
ま、子供なんてこんなもんか。




さっきはまいったな。
花より団子に同級生のバイトの子がいたんだが、よりにもよって音夢の前で夫婦とか言うんだから。
食事中の音夢の視線がマジで痛かった。
で、俺は情けないことだが、会計を音夢とことりに任せてヒナと外で待っていた。
2人のクリスマスプレゼントで金が無いとは口が裂けても言えん。

「あれっ?朝倉?」
「ん?げっ!眞子」
「何よ、げっ!ってのは」
と、眞子が俺の隣にいたヒナに気付く。

「あ、朝倉・・・まさか・・・・・・誘拐?」
またかよ・・・・・・

「ち〜が〜う!こいつはだな・・・」
「パパ〜、この人誰〜?」
「ぱ、パパ〜〜〜!?」
「ちょっ!や、待て眞子。これは・・・」
「や、やっぱりあんた・・・」
眞子の手がワナワナと震えている。
またこの展開かよ・・・・・・。
昼間にも殴られそうになったな〜、って落ち着いてる場合じゃない!

「お、落ち着け。俺はだな、この子の親を捜してるだけで・・・・・・」
「問答無用!女の敵!音夢に謝れ〜!!」
「うわ〜っ!!」
「私がどうかしたんですか?眞子?」
間一髪。着弾寸前で拳が止まった。

「ね、音夢?」
「ナイスタイミングだ、音夢。お前からこの早とちり女に言ってやってくれ」
本当に危なかった。危うく今日だけで2回も三途の川を拝むところだった。




後から出てきたことりと一緒に眞子に説明して、なんとか俺の身の潔白を証明することに成功した。
「なるほど。昼の噂もあったし本当のことかと・・・」
「あれは俺のせいじゃねぇ」
「あはははは・・・・・・」
ことりが苦笑いしているが、俺は何も言った記憶はないからな。

「でも、もう日も沈むしやっぱり警察に任せた方がいいんじゃ・・・」
「俺もそう思ったけど・・・」
と言って俺はヒナを見る。

「ヒナを1人にしないで」
「大丈夫よ、ヒナちゃん。私達が絶対に見つけてあげるから、ね?」
「そうそう。って、ことで俺達は行くわ。じゃあな」
シュビっと手を上げて眞子に別れを告げようとするが

「私も手伝うわよ」
「へっ?手伝うって親捜しを?」
「でも、眞子・・・・・」
「いいの、いいの。こういう時は人数がいた方が有利でしょ?気にしないで」
「まぁ、眞子がそう言うなら」
「決まりね。さ、頑張って捜そう」
そう言って眞子は率先して歩きだす。




眞子も加わって休憩前とは違うところも捜したが結果は同じだった。
日は沈み辺りは完璧に真っ暗になっていた。

「さて、どうしたもんか」
「もう完全に夜だもんね」
「うん。どうするの、兄さん?やっぱり警察に・・・」
「う〜ん。でも、ヒナが嫌がるだろ?家に連れて帰る・・・訳には行かないよな〜」
「それじゃあ本当に誘拐犯になっちゃうもんね」
う〜ん、と4人で桜公園のベンチに座って考えてる時、見知った顔が通りかかる。

「美春!」
「はいっ?あ、朝倉先輩!と、音夢せんぱ〜い!!」
尻尾を振りながら突進して来る犬のように、美春が音夢に迫って来た。

ガシッ!
だが、その前に俺が美春の頭を掴む。

「あいたたた。何するんですか、朝倉先輩」
「俺はだな〜美春。お前のせいで半殺しにされたんだぞ〜!!」
リンゴでも潰そうかといわんばかりに手に力を込める。

「うわ〜ごめんなさい、ごめんなさい〜〜〜」
「コレに懲りたら眞子みたいな早とちりはよせ」
美春の頭から手を放すと美春は頭を抱えてうめいた。

「う〜、朝倉先輩、jヒドイです〜」
「俺の方がもっとヒドイ目にあったっての」
「あれっ?ヒナちゃん?」
と、俺の言葉を無視して美春はヒナの名前を呼ぶ。
ん?なんでこいつ知ってるんだ?

「こんばんは、美春お姉ちゃん」
「やっぱりだ〜」
「美春!ヒナと知り合いなのか?」
「へっ?」
「ヒナちゃんのお父さんかお母さん捜してるんだけど知らない?」
「はひっ?ちょ、ちょっと待って下さいよ。ヒナちゃん、まだお家に帰れてないの?」
「うん・・・・・・」
なんか雲行きが怪しくなって来たぞ・・・・・・。




「で、帰れるって言ったから別れたって訳だな」
「はい、そうなんです」
「はぁ、手掛かりなしか〜」
またどうすることも出来なくなり、俺達は夜の桜公園でため息をつく。

「どうする?」
「どうしよう?」
「どうしましょうか?」
「どうするの?」
「どうします?」
5人でお互いの顔を見合わせるが、ちっともいい案が思い付かない。

その時、
「ん?雪が降ってきたのか?」
気付くといつの間にか雪が降ってきていた。

「わ〜い、雪だよ〜パパ、ママ」
「ホントだね〜」
「どうするにしても1度家に帰るか。雪も降って来たし」
「そうだね」
そう言ってベンチを立ち上がろうとした瞬間、視界が一瞬真っ白になった。

「眩しっ!・・・・・・って、あれ?」
「うわ〜。雪が積もってるよ、パパ〜」
辺り一面が一瞬にして銀世界になっていた。

「夢・・・・・かな?これ?」
「うわ〜すごいですね〜。雪だるま作れますよ〜」
「夢じゃないのかな?」
と言って音夢と眞子が俺の頬をつねる。

「いてててて。つねるなら自分のをつねれよ」
「夢じゃないみたいね」
「そうらしいわね」
無視かよ。とりあえず夢では無いらしい。

「どうなってるんだろうね、これ?」
「さぁな〜」
無邪気に走り回るヒナと美春を見ながら首を捻る。

「パパ〜ママ〜、雪合戦しようよ〜」
「手がしもやけになっちゃうぞ?」
「そうだよ、せめて手袋着けないと」
「ところがどっこい。なんとこの雪そこまで冷たくないんです!」
と美春が素手で雪を掴む。

「なんだそりゃ?」
試しに俺も雪を掴んでみるが、確かにそこまで冷たくない。
これはやっぱり夢なのか?
でも、さっきは思いっ切り痛かったしな〜
などと考えていると

「わぷっ!?」
「ストライク〜」
「うわぁ、美春お姉ちゃん上手いね〜」
「そうかな?よ〜し次も」
どうやら美春の投げた雪が顔面に当たったらしい。

「こいつ」
トリャッ

「うわわ。な、なんてことするんですか、朝倉先輩!」
「そりゃこっちのセリフだ。もう一発・・・ぐわっ!!」
と、投げようとした瞬間後頭部に石か何かが当たったみたいな衝撃を受ける。

「な、なんだ〜?」
「ナイスコントロールよね」
間近で眞子がカラカラ笑っていた。
どうやらさっきのはこの至近距離で眞子が思いっきり投げたらしい。
しかも、バカみたいに硬かったし。何がナイスコントロールだ。この距離で言う言葉か。

「このっ!」
「うわっ!いった〜。なんてことすんのよ、朝倉」
「やかましい!こんな至近距離で背後から投げた奴の言うことか」
「いいのよ。あんたはオニなんだし」
「は?オニってなんだよ?雪合戦てのは・・・うぉっ!」
音夢からも凄まじいスピードで雪球が飛んできたのをギリギリで回避する。

「そうですよ。兄さんは逃げ回るだけですからね」
「な、音夢まで何言ってんだよ」
「そうそう。言うなれば節分みたいなもんです」
笑顔で言うなよ、ことり。

「と、言うわけで〜。攻撃〜」
「何がと、言うわけじゃ〜!!」
俺は四方からの攻撃を必死で回避する。

「くっ!なかなか当たらないわね〜」
「ちょっとは当たってよ、兄さん」
「なにが、ちょっとはじゃ〜!!喜んで当たる奴がどこにおる」
「パパ〜、当たって〜」
・・・・・・・・・仕方ないな〜。
と回避運動を止めた瞬間、5つの球が同時にヒットした。




「親バカじゃん」
「ヒナちゃんには優しいんですね、兄さん」
「うるさい」
俺は冷たくない雪の上で寝転がりながら言う。

「いいパパになれますよ」
「笑いながら言うな」
「次は雪だるま作ろうよ〜」
ヒナが俺の服の袖を引っ張りながら頼んで来る。

「でもな〜。ホントはこんなことしてる場合じゃないんだけどな」
「まぁ、もうちょっと位いいんじゃない?」
「じゃ、ちっちゃいの作るか」
よっ、と掛け声を出して起き上がる。

俺達は手分けして雪を集めだした。
そしてある程度の大きさになってから転がし始める。

「じゃあ私達はあっちから行くね」
「おう。眞子もいるけど暗いから一応気を付けろよ」
「どういう意味よ!」
俺達は1度別れて公園の出口ら辺で再び合流することにした。
まぁ何かあっても、すぐに駆けつければ問題ないだろう。




「楽しいか、ヒナ?」
「うん!すっごく楽しいよ」
「そりゃ良かった」
俺とことりとヒナは仲良く雪を押して行った。

さっきスタートしたところから公園の出口まで半分ぐらいの所でだろうか。
ヒナがふと立ち止まった。

「帰る時間になっちゃった・・・」
「えっ!?」
「帰る時間になったってどういうこと、ヒナちゃん?」
「それに帰るってどこに?」
「決まってるでしょ?ヒナのだ〜い好きな、パパとママのところ」
ヒナは嬉しそうにそう言った。
どういうことだ・・・・・・?

「ねぇ、パパ」
「ヒナ・・・」
「ママ?」
「ヒナちゃん」
俺とことりを交互にヒナは見て言った。

「――――2人ともヒナのこと好き?」
ヒナが、頭をちょこんと右に傾ける。
俺とことりは顔を見合わせた。

「俺は・・・・・・パパは、ヒナのことがだ〜い好きだぞ」
「私も・・・・・・ママも、ヒナのことがだ〜い好きよ」
そう言うと、ヒナはにこ〜と、まるで天使のような笑みを浮かべて、

「ヒナも、二人のこと、だ〜い好きだよ」
と目尻に涙を浮かべながらヒナは言った。

「じゃあね、パパ、ママ。ヒナは帰るね」
ヒナはそう言うと、くるりと長い髪を翻してこちらに背を向ける。

そして、もう一度俺とことりの方をわずかに向き、ぱたぱたと手を振って公園の出口の方に向かって駆け出した。

「ヒナ!」
「ヒナちゃん!」
俺とことりはヒナを追い駆けた。
その声にヒナは立ち止まった。
しかし、

「バイバイ、パパ、ママ」
と言うと、辺り一面の雪と共に消えてしまった。雪は少しも積もっていない。
代わりにさっきまでの雪とは違う、正真正銘の冷たい雪が空から降り注いでいる。

「・・・・・・ヒナ?」
ヒナが今の今までいた場所には誰もいなかった。
まるで誰も最初からいなかったように。

俺とことりは思わず顔を見合わせ、目をごしごしとこすり、もう一度ヒナのいた場所を見たがやはりヒナはいなかった。

彼女は・・・・・・、ほんの数時間だけ、俺とことりの子どもだったヒナは、どこかに消えてしまった。

「朝倉くん・・・・・・?」
「ことり・・・・・・?」
しばらく呆然としていると前から音夢たちがやって来た。

音夢たちに事情を話し、冷たい雪の降り続ける公園内を捜したが、ヒナの姿はどこにもなかった。

「帰ろうか・・・・・・」
手分けして集まってを3回繰り返した時俺はそう言った。
雪は更に強さを増し、風も少しずつだが強くなり始めている。
ことりも無言で頷いた。

「でも・・・・・・。いいの?兄さんもことりも?」
「そうですよ」
音夢と美春が俺達に尋ねてくる。

「ヒナは帰ったんだよ、きっと」
「うん・・・・・・」
「家にですか?」
「ああ、ヒナの大好きな両親が待ってる家にさ。そんな気がする」
確証もないのに何故か俺はそうだと思えた。

「ま、朝倉と白河さんがそう言うんならそうなのかもね」
「そうですね・・・・・・。帰ろうか」
「バス停まで送ってくよ」
そう・・・きっとヒナは帰ったんだ。本当の両親が待つ家に。




音夢と2人の帰り道。
音夢はやけに本当に良かったのかと聞いてきたが、俺は大丈夫だと言い切れた。
「心配性だな、お前は」
「兄さんの妹をしてたら嫌でもこうなります」
失礼な奴だな。

「ちゃんと一人暮らし出来てるだろうが」
「そうですね。意外と片付いてましたが、ゴミはこまめに出した方がいいですよ?」
「はぁ?一人なら1週間に1回で十分だぞ?」
「期末テストが捨ててありました。それでも、大丈夫なんですか?」
「すみません・・・・・・」
ここは素直に謝っておこう。

「さて、遅い夕食にするか」
俺は鍵を開けながら音夢に言った。

「そうだね〜。でも、遅い間食に遅い夕食。太ったら嫌だな〜」
そのスタイルでよく言うよ。

「出前頼んでる間に風呂にしようぜ。身体が冷えて仕方ない」
「そうですね。私もすっかり身体が冷え切っちゃいましたし」
さて、出前は身体を温める為にもラーメンにでもするかな?




「おっかえり〜!お兄ちゃん!」
「さ、さくら〜!?」
服を取りに部屋に戻るとさくらがいた。
それはよくあることだが、電気も付けずになにやってたんだか。

「また勝手に入って・・・」
「いいの、いいの。気にしない、気にしない」
さくらはぱたぱたと手を振って言った。
その姿が妙にヒナとダブったのは・・・・・・さくらが小さいからだな、うん。

「お兄ちゃん?なにかすっごく失礼なこと考えてなかった?」
「いや、全然。で、なんか用があったのか?わざわざ待ってたんだろう?」
「うん。ヒナちゃんのことでね」
さくらの口から出た予想もしない名前に思わずさくらに詰め寄ってしまう。

「何か知ってるのか?」
「お兄ちゃん、ちょっと落ち着いてよ」
「わ、悪い。・・・・・・でお前は何か知ってるんだろ?」
さくらから少し離れて俺は聞き直した。

「う〜ん。あまり具体的に言うのもなんだしこれだけ言っとくね」
「早く言ってくれよ」
「もうせっかちだな〜、お兄ちゃんは」
「いいから早く!」
「あのね・・・ヒナちゃんは本当にお兄ちゃんの子どもだよ。これだけは言っとくね。それじゃボクは帰るから」
それだけ言うとさくらは窓から桜の木を伝って出て行った。

「あっ、おい。いい加減玄関から帰れよ!」
「近いんだし大目に見てよ〜!」
と言う声が外から返って来た。
ったく、あいつは。

それにしても本当の子どもって・・・・・・
やっぱり未来から来たとか考えるのが普通?なのかな?
ってそれは普通じゃないか・・・

「兄さん?」
と、扉の外から音夢の声が聞こえた。
・・・・・・まさか聞かれてた?

「ちょ〜っとお聞きしたいことがあるんですが」
「ん?いいぞ」
俺は勤めて平静を装う。

「では、テーブルでゆっくりと」
なんか嫌な予感がしてきた・・・・・・。

「なぁ、腹も減ったし、寒いし後にしないか?」
「大丈夫ですよ。ちょ〜っとぐらい」
「あ、じゃあ今日は疲れたし、明日にでも・・・・・・」
「いいえ!さぁ、洗いざらい話して貰いますよ、兄さん!」
助けてくれ〜

俺は次の日まで尋問され続けた。
俺は無実だって・・・・・・





終わり

さて、予告通りに今年度中の完成となった雪の降る季節にです。
後編だけ長くなっちゃいましたね。
美春、眞子を登場させての後編でした。外伝での美春、さくらとの出会いを混ぜてみましたがお楽しみ頂けたでしょうか?
結局音夢はあまり話に絡めなかったんですが、W.S.にはない第3者として機能してくれたように思います。
まさに今の季節というか同じ日時ですね。12月23日のつもりで書いてるので。
最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。
それでは、多分次回作になると思われる美春&アリスSSで。



                                         

雪の降る季節に(後編)

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