お兄ちゃんのことが・・・あなたのことが好きだから。
そう繰り返す言葉は今も、あなたの心へ届くように願っている。
いつからか揺らいでしまったこの世界で、すれ違うボクとお兄ちゃんの想いがいつの日か交差すると信じて。
６年ぶりの再会。あなたの姿は変わってたけど、中身は一緒だった。
あの時、ボクの心を救ってくれた優しいあなた。
ボクは何も変わっていない。あの頃と同じ弱いまま。
あなたがいないと、ボクは前に進めない。
あの日、枯れない桜に願いと祈りを捧げた。
この気持ちは決して消えることのない愛だと誓った。
それなのにあなたはあの子を選んでしまった。
どうしてボクじゃないの？そう心の中で聞き続ける。
誰でもないボクだけを抱きしめて欲しい。
我が侭なその手強く苦しい程に。
あなただけを求めては生きている。
幸せだった記憶の海の底にひとり溺れたまま。
揺れ動く光の先に、あなたの背中を探して夢の中を彷徨う。
柔らかなその温もりに、もう一度だけ包まれたいと願ってしまう。
一人取り残された「さよなら」
ボクだけがあなたの大切な人を助けられる。
ボクが助けなければ、あの子は死んでしまう。
そうすれば、そうなればボクがあなたの隣にいることが出来るのに。
そう声に出せない想いを胸に、頬を涙が伝う。
どうしてボクより先に音夢ちゃんに会っちゃったの？
どうして兄妹なのに好き合ってしまったの？
ボクを選んでくれれば、こんなことにはならなかったのに・・・
あなたとの約束をただ信じ続けたいだけ。あの日、あの時に交わしたあの約束を。
記憶の海の中で、無邪気にボクに笑いかけるあなたがいる。
触れる頬、重ね合わせた鼓動。
優しさに彩られ、とけてゆく愛しさ。
この時間がずっと続けば良いのに、そう思わずにはいられなかった。
でも、このままではいられない。
音夢ちゃんを助けるためにお兄ちゃんはここに来たのだから。
枯れてしまった魔法の桜の木。
さようなら、お祖母ちゃん。
さようなら、純一君。
ボクだけのボクだけのあなたになりますように、とかつて願ったこの場所で、別れを告げる。
でも、これだけは願ってもいいですか？もし枯れてしまった桜にまだ願いが届くのならば。
ボクはまだここに在ると声が枯れる程に。
あなたのことを好きでい続けても良いですか？
記憶の海の底であなたを、ボクだけのお兄ちゃんをずっと求め続けている。
終わり
School Daysの歌から作ったSS第二弾。「記憶の海」は音夢にしようかな～と思ったんですが、結局さくらになりました。
「涙の理由」の方が音夢にピッタリな気がしたので。さくらSSも久しぶりですが、ことりSS同様暗い・・・。ってかラストが一緒ｗ
さくらの場合「お兄ちゃん」連呼になるので、「あなた」にしました。さすがにお兄ちゃん連呼じゃ雰囲気が出ないので。
それにしても「あなたが・・・いない」よりも更に短くなるとは。1000字弱しかありませんが、いかがでしたでしょうか？
一応アニメ版で考えたんですが、これむしろⅡのさくらの方が合ってる気がする・・・
それでは次回のＤ.Ｃ.ＳＳは音夢ＳＳでお待ち下さい。
