チッ・・・・・・・・・チッ・・・・・・・・・チッ・・・・・・・・・
ジィ〜〜〜ン・・・ミィ〜〜〜ン・・・・・・
時刻は真夏の午前十時過ぎ。
いよいよもって緊張する。
いや、緊張するというか、ドキドキするというか・・・とにかく、いてもたってもいられない。
何故なら今日・・・美咲が、家に泊まりにくるのだ。
無論美咲の親父さんも合意の下で。




事の顛末はこうだ。
ある日、美咲がクラスメート(眞子)と話していると・・・。
「え?美咲ったらまだ朝倉の家に泊まった事ないの?」
と、眞子が言ったらしく、美咲は

「え・・・ええ、まぁ・・・」
と、便利な日本語で言葉を濁したらしい。
すると、眞子は何を思ったか

「駄目だよ、美咲。仮にも恋人同士なら相手の家に泊まりに行くぐらいの勇気を出さなきゃ!」
と、言い。

「こ、恋人同士・・・」
と、過敏に反応。

「というわけで、朝倉!」
「あ?」
「美咲を泊めてあげなさい」
「ぶっ!」
思わず飲んでいたお茶を吹いてしまった。

「お前、自分で何言ってるのか、わかってるのか?仮にも健全な男子と女子が・・・」
「健全なら尚更でしょうが!」
・・・と、押しの強い言いようで言いくるめられた。

「別にあんたの為に言ってるんじゃないからね!美咲の為よ!美咲の!」
と。最後に言っていた。
なるほど、どうやらこれが噂のツンデレというものらしい。

・・・まあ、それはともかく。
(妙に)まんざらでも無さそうな美咲の表情を見て、決断した訳だが。
最大の問題が残っていた。
それは美咲の親父さんの事だ。
自分の娘を可愛がるあまり、無理矢理美咲の旧友と関係を引き剥がしたぐらいの厳格な親父さんだ。
一言で了承は出さないだろうと思っていたが・・・


「ふむ・・・・・・良いだろう」
『へ?』
さすがに美咲も驚いていた。
一言で了承をしたよ、この人。

「ただし、・・・純一君、こっちに」
チョイチョイと指で、「こっちに来い」と指示してきたので、ついて行き、誰もいない部屋に着くと・・・

「一応ここまで君の行動には何も問題無い。それは評価する。美咲も君の事を信頼している様だし、
何より美咲を大切にしているという君の態度も、私は高く評価している」
「はぁ」
「故に、私は外泊の許可をした」
用はこれで終わりかと思いきや、話しはこれで終わりでは無かった。
むしろ、ここからが本番だった。

「しかし・・・」
「う・・・」
親父さんの背中から並々ならぬ何かが出ていた。
娘大切オーラだ。
そのオーラは辺り一面を揺るがす程のものだった。

「もし君が・・・二人きりなのを良い事に、美咲に破廉恥な事や、精神的苦痛を与えた場合・・・私は」
親父さんの口が大きく開く。
俺は急いで耳を指で塞いだ。

「私は君にかつてない程の苦痛を与え、(自主規制)、
そのまま永遠の眠りに就かせてやるからな!!」


「は、はい・・・」

「わかったか!!!!」
「わかりましたであります!!!」


・・・ごめんなさい、親父さん。
実はもう美咲とは色々しております・・・
というか、それは酷です。
美咲父「よろしい。では美咲を頼むぞ」
・・・という事があった。
まさかこんな大事に(一方的に親父さんが騒いでるだけな気がするが)なるとは・・・




・・・・・・ピンポ〜ン。
「はっ!来た!」
かつて無い程のスピードで玄関に向かい、ドアノブを回す。

「いらっしゃ・・・・・・」
「いよう、MY同・・・」
「砕け散れぇぇぇ!!!」
ドガッ!!!!
某龍玉Zのようなアッパーカットが杉並に炸裂し、見なかった事にしようとした。
しかし奴はそんな事では諦めない奴なので、しつこく立ち上がる。

「ぐ・・・・・・まさか普通の人間で龍拳が出来る奴が居るとは・・・さすがMY同・・・」
「いいから帰れ。でないともう一発喰らわすぞ。人の緊張感とテンションと時間と体力を台無しにしやがって」
「どうしても同士とは言わせてくれん上に色々文句か。まあいい。とりあえず俺は何も用は無しに来た訳ではない」
「・・・何かあるのか。言っとくが出かけるなら断るぞ。俺は今日大事な用事があるんだから」
「美咲嬢と今日一日過ごすんだろう?昼も夜も夜中も朝も」
「・・・何故それを」
「ふふん、俺が何も知らないと思うか?変態であるお前の一日のスケジュールなどとっくにお見通しだ」
「聞かなかった事にしてやる。で、本題は?」
「ふ・・・・・・ずばり、コレだ!」
「・・・お菓子?」
杉並の手には、やけに赤いスナック菓子が入っている透明な袋が握られていた。

「ノン。ただのお菓子ではない。これを美咲嬢に食べさせればアラ不思議、みるみるラブラブで甘々ちゅっちゅな展開になるぞ」
「まさか変なモノでも仕込んでるんじゃなかろうな」
「そうしたいのも山々だが、あいにくブツを切らしてな。
という訳で正攻法かつ普通な手段のこの菓子をお前に渡す事にした」
ブツというのは気になったが、とりあえず杉並は杉並で手伝ってくれるらしい。

「杉並・・・」
少し感動した。
「ふ・・・さあ、それを使ってそのまま美咲嬢を押し倒し、あまつさえ夜の仕事から朝の日課まで・・・・・・」
「星に還れこの(略)!!!」
・・・杉並は星になった。

「はぁ・・・あいつを信じた俺が馬鹿だった・・・・・・ん?」
足元には先程まで杉並が持っていた透明な菓子袋が落ちていた。

「・・・袋は特に破れてないな・・・」
脳裏に不快だが杉並の声が響く。

『ラブラブで甘々ちゅっちゅな展開になるぞ』
「・・・まあ、少しは試してみるか」
それでラブラブな展開になるのなら、おつりも十分来る。

「よし、来たら食べさせてみよう」




それから少しして・・・

「お邪魔します・・・」
「どうぞどうぞ」
普段より大きめな手提げバッグを持った美咲がやってきた。

「パジャマとか、歯ブラシが入ってるんです」
美咲のパジャマ姿・・・

「・・・・・・・・・」
やばい、想像しただけでめちゃくちゃ可愛い。

「? どうしたんですか?」
「あ、いや、なんでもない。いや、美咲のパジャマ姿はきっと可愛いんだろうなあってね」
「そ、そんなことないですよ・・・」
アセアセと、頬を真っ赤にしながら顔を横に振る美咲。
その仕草が猛烈に可愛い。

「ま、まあとりあえず椅子に座ってくつろいで。今菓子と飲み物出すから」
「は、はい・・・」
台所に向かい、冷蔵庫でキンキンに冷やしておいたオレンジジュースと氷を出す。
コップにまず氷を入れ、ジュースを注ぐ。
次に皿の上に先程の菓子を出す。準備は万端。

「はい、お待たせ」
「あ、ありがとうございます」
やはりこの真夏の中を歩いてきて喉が渇いたせいか、美咲は一気にオレンジジュースを飲んだ。

「冷たくておいしいです」
「それはよかった」
俺も少し飲む。確かに冷たくておいしい。
と、美咲が例の菓子に手をつけた。そのまま口にもっていき、そして・・・食べた。

だがおかしい。
美咲は妙に静かに、そして動かない。
やがて全身がプルプルと震え、顔もみるみる赤くなっていった。
目も涙目になっていた。

「・・・美咲?」
「・・・・・・ひ」
「ひ?」
「ひにゃあぁーーーーーーーーー!!!!!」
「うわあ!どうしたんだ美咲!」
「辛いれふ(です)ーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「か、辛い?」
確かに見た目は赤いが・・・赤い?

「・・・ああ!これは今噂のハバネロってヤツか!!」
「<:@*‘“%#!〜$”)%|:;・、・―――!!!!!」
って、それどころじゃねえ!
美咲が辛さのあまり声にならない声を出してる。

「えーと、口の中を冷やすもの・・・」
と、言えば近くにあるオレンジジュースだ。
しかし美咲のはもう空になっている。

「・・・よし!」
俺は急いで自分の口に冷えたジュースを入れ、暴れている美咲の下へ駆け寄り抱きしめた。

「ん、んん!?」
そしてそのまま抱きしめながら美咲にキスをして、美咲の口の中に注いだ。
いわゆる、口移しだ。

「ん・・・」
移されたジュースを飲み、じょじょに大人しくなる美咲。
ついでに、辛さのせいか少し熱くなっていた舌も、俺のジュースを含んでいた為に冷えていた舌で冷やす。
・・・やがて口移しも、いつの間にか濃いキスになっていた。




「はむ・・・もっと・・・純一さんのキスと舌・・・・・・気持ちいいです・・・・・・ん・・・」
「ん・・・・・・美咲のキスと舌も気持ちいい・・・」
いつの間にか美咲の『辛さ』もひいていた。
ただ、お互い求めるように舌を交わしていた。

「ん・・・ふ・・・」
また少しして、お互いの唇が離れる。
お互いの舌と舌で、透明な線が出来ていた。

「・・・本当に、夢みたいです・・・純一さんとこんな事が出来るなんて・・・とても、幸せです」
「俺も・・・」
・・・杉並が持ってきた菓子・・・・・・ハバネロに感謝だな。




それから、ハバネロはとりあえず処分した(美咲がもう食べるのは嫌がってた為)。
日が傾き、辺りが暗闇になるまで語り、夕食の時間となった。
メニューは肉じゃがだった。

「おお、美味そうだ」
「たくさん食べてくださいね」
言われた通り、かなり腹に詰めた。
いや、マジで美味いんだって。

「あの、知ってますか?肉じゃがって、新婚時における人気メニューのNO1なんです」
「へえ・・・じゃあ、今俺達は新婚さながらの感じなんだな」
「クス・・・そうですね」
美咲との結婚・・・実現は難しいだろうが、いつか・・・。

「その時は子供二人くらい欲しいな」
「二人ですか・・・・・・って、ええ!?」
急に美咲の顔が真っ赤になる。

「じゅ、純一さん、それって・・・」
「・・・さあ、なんだろうね」
慌ててる美咲に、わざととぼけた様に言う。

「も、もう、純一さんったら」
「ははは。・・・お、もうこんな時間か。風呂にでも入んなきゃな」
時刻は既に夜8時。
風呂の時間としてはもう十分だろう。

「あ、それでしたら・・・その・・・」
何故か、美咲がモジモジと上目遣いで何かを言いたい様だった。
・・・やっぱり反則的なまでに可愛い。

「お背中、流します・・・」
・・・いわゆる、混浴ってヤツだ。




「・・・」
「それじゃあ、失礼します」
ひどく緊張する。
健全な男子と女子が、この年で裸・・・しかも風呂場での付き合いなら尚更だ。
美咲が、優しく背中を洗っている。
とても気持ちよかった。
お礼として、美咲の背中も洗った。
本当に、綺麗で華奢な体で・・・この子は絶対に守らなきゃな、と自然に思えてくる。
ちなみに、前の方も洗った。

「こ、これ以上に見られてますから、大丈夫です」
時折、美咲はわざと言ってるのかなと思ってしまうぐらい、凄い事を言う。
このあと、勢いに任せて本気で押し倒した。
そんな事言われたらもう反則だって。
いつにも増して、熱い風呂だった。




「おお、美咲のパジャマ姿。初めて見るな」
白で統一された、いかにも美咲らしい色のパジャマだった。
「そ、そんなに見つめないでください・・・」
ついマジマジと見入ってしまった。
いや、だから反則的に可愛いって。

「じゃあ寝る所は俺の部屋で良い?」
「あ、はい。・・・むしろ、是非・・・」
さすがに義妹の部屋を使うわけにはいかないからな。
というより、もとより自分の部屋以外の部屋で美咲を寝かせる事は考えてない。

「今日は美咲を独り占めだな」
「はい・・・私を独占してください・・・」
ベッドに入り、お互い抱きしめ合いながら、体を寝かす。

「暑くないですか?」
「全然。むしろ、いつまでもこうしていたい」
「・・・私もです・・・」
季節は真夏だが・・・全然暑いという気にはならなかった。
むしろ、美咲から伝わってくるぬくもりが、非常に心地よかった。
数々の偶然が重なって、一種の運命の様に結ばれた俺と美咲。
今はその運命に感謝したい。
でなければ、こうして美咲を抱きしめる事も、語る事も出来なかった。

「美咲・・・」
「純一さん・・・」
眠りにつく前に、そっと触れるぐらいの、優しいキスをした。
・・・心地よい、真夏の一夜だった。




翌朝・・・朝早く、美咲が帰るので見送りをした。

「本当にありがとうございました。とても楽しかったです」
「俺も楽しかったよ。またやろうな、お泊り会」
「はい♪」
本当に楽しかった。
好きな人と一晩過ごすというのは、なんと良いものだろう。

「あ、そうだ、美咲」
「何ですか?」
「俺、美咲の事本気で独占したいから・・・いつでも好きな時に俺に甘えてくれ。俺の懐はいつでも空いてるから」
「純一さん・・・じゃあ、今甘えちゃいます」
美咲が俺をギュッと抱きしめる。
俺も抱きしめる。

「会えない時間の分まで、エネルギー補給です・・・」
「まるでさくらみたいだな」
「さくらさんに教えてもらいましたから」
これはさくらにも感謝だな。




それから少しして、美咲が離れた。

「それでは、また会いましょう、純一さん」
「ああ。また会おう」
こうして、美咲との一日は終わった。
だけどこれが最後ではない。
これからも、美咲とはずっと会える。
そしていつか美咲と・・・

「・・・さて、たまには家の掃除でもするか」
いつか美咲とずっと一緒に過ごす、その時まで。
いつまでもこの日常を。





終わり

管理人感想
眞子がこういうこと言うのはちょっと個人的には意外でしたね〜
結構自分には少女趣味的なイメージがあるので。
しかしまぁ美咲父がなかなかいい味出してますね〜。美咲母も見たかったですね。
あと『ひにゃあぁーーーーーーーーー!!!!!』な美咲も良かったですねw
しかしまぁ美咲の全てが可愛かったですね〜。のかーびぃも混浴お願いしていいですか?



                                       

美咲との一日

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