ゆらゆらとゆらゆらと・・・
優しい桜の揺り篭に乗せられて。
夢を見たいなあの頃の。
今日も良い天気。
こんなにも穏やかな日の桜公園のベンチ。
わたしはベンチに座って舞い散りゆく桜を眺めていた。
「ふぁ〜あ・・・。」
桜の花弁が口の中にでも入ってくるような怠惰なあくび。
こんな姿をお父様に見られたらと思うと背筋が寒くなるけど、春眠暁を覚えずって言葉と春の日差しがわたしに呼びかけるから・・・
・・・うんん、本当は隣りに誰も居ないから。
―今は一人でも大丈夫だから。
それもあの人のお陰。
今頃あの人はどうしてるんだろう・・・
メイドさんがいなくなって寂しがってくれてるかな。
それもねこミミ付きと言う豪華特典付きの。
ピンク色に覆われた桜公園。
見上げた空の青とピンク色のコントラストが美しくて。
ふとあの時の事を思い出してしまう。
そう、あの人がわたしを助けてくれた桜公園。
そして・・・あの人との出会いの場所も桜公園だった。
―いつもと変わらぬ春の日に 二人は出会い恋をしました
ゆらゆらとゆらゆらと・・・
優しい桜の揺り篭に乗せられて。
とっても素敵な夢見心地・・・
ゆらゆらとゆらゆらと・・・
優しい桜の揺り篭に乗せられて。
ゆっくりとした目覚め、うっすらと目を空けると・・・そこにはあの人が。
「ぁああっと、えっと・・・そう、桜の花弁が顔に付いてたんだよ。」
「・・・ほへ?」
あの人 ― 純一君 ― の目の前にある驚き顔に負けないくらいにわたしは驚いた。
あれれ、ここは・・・・・・桜公園?
そうか・・・わたし寝ちゃったんだね。
純一君は苦笑しつつも楽しげに話してくれる。
「デートなのに二人とも寝ちまったな。」
・・・デート?
そうか、今日も良い天気だもんね。
いや正確には良い天気だったとでも言うべきなのだろうか?
辺りはもう静寂に包まれていたから。
外灯がポツリポツリとベンチを照らし出すけど、人の通りもなくてまるで二人きりの世界のよう。
「かったりい事になってゴメンな。」
頭をポリポリとかきながら純一君は言った。
「・・・あ、あの、そんなことないですよ。」
二人ずっと一緒だっただけで十分です、と付け加えておく。
「そう言ってもらうと助かるよ、頼子さん。」
・・・頼子さん?
そうか、わたしはメイドさんだもんね。
わたしは確認すべく自分の耳のほうに手を向けて・・・
やはりあったのはねこミミ、この感触。
「また明日も来ようか?」
「はい♪」
わたしは純一君の言葉が嬉しくて飛び跳ねるような勢いで返事を返した。
何も変わらない日常がそこにはあった。
朝、早起きは苦手だけど・・・早く起きて「おはよう」って起こして、朝ご飯を作って、
寂しいけど「いってらっしゃい」って純一君を学園に送り出すの。
それから帰ってきたら「お帰り」って言って、一緒に買い物にも行けたらいいな、
そして、晩御飯は腕によりを入れて作るから「美味しい」って言ってくれると嬉しいな。
そんな、何も変わらない日常が夢。
・・・夢?
そうか、夢なんだもんね。
わたしは、
わたしは?
「・・・美咲」
呼び起こしてくれるようなそんな声が聞こえた気がした。
ゆらゆらとゆらゆらと・・・
優しい桜の揺り篭に乗せられて。
今日は登校日・・・良い天気・・・
―おろしたての制服と
GWの連休も終わってしまって今日は登校日・・・
だけれども転入の日でもある。
そう、風見学園に。
わたしはちょっとダボダボの着慣れない制服を身に纏っていた。
そんな新しい制服を思わせる鼻にツンと来る独特の匂いも今は嬉しい。
―桜の舞う通学路
今日も良い天気・・・
澄み渡る青空と舞い散る桜がそこにあって。
それだけで十分に思えるけど、やっぱりあの人と一緒に行きたい。
そう考えてしまうと、この明るさが恨めしくさえ思えてくる。
だって、一緒に通ったのは・・・闇が深かった頃だった。
一緒に過ごした教室には・・・皆が帰った頃だった。
わたしの夢はあの人と歩んでゆくこと。
そんな現実が待っている日差しが眩しいくらいの教室へ。
「鷺澤美咲と申します、よろしくお願いします・・・」
改めてよろしくお願いします・・・純一君。
また、会えたね。
―いつもと変わらぬ春の日に 二人は出会い恋をしました
終わり
ちょくちょくさんあとがき
電波系小説作家ちょくちょくです。その上に構成までも以前、私が書いたのに似てますね・・・おまけに短絡的な夢オチで。
そうそうOP曲の詞を引用する点に関しても進展がないようで、私(爆)
こっちはプロット(というたいそうな物ではないが)を書いてから書いたんだけど。短編こそネタが必要なのでむずかしいです。
ちなみに書いたのはこれ↓
『D.C.〜ダ・カーポ〜鷺澤頼子か美咲SS
設定:別れた後の205時間中の夢物語で3部構成?
・夢へのいざない(桜公園の演出でも)
・夢(D.C.本編みたいなのだけど悲愛っぽいの、別れみたいな。名前の呼び方で覚醒。)
・現(主人公と会う前の心情みたいなの。「おろしたての制服と…」)
テーマ性:―いつもと変わらぬ春の日に 二人は出会い恋をしました』
こんなのをプロットと呼ぶのだろうか、答えは否。
最後に一言
ねこミミ萌え〜(だから頼子たんSSなんです)