「ねえ純一君。目、閉じてくれない?」
「なんだよ急に」
やっぱり純一君慌ててる。

「ダメ……?」
ちょっと上目遣いで純一君を見つめる。
このちょっとっていうのがポイントなんだよね〜
向こうじゃみんなこれでほぼ100%お願いを聞いてくれるんだよね。
といっても、そんな大したお願いじゃないからだと思うけど。
でもそれってもしかして……うん、今はそんなこと考えてる場合じゃないよね。

「わ、わかったよ……ちょっとだけだからな」
そういって純一君は目を閉じた。
さて、ここからが勝負どころだよ。
純一君の顔を、拳一個分くらいの距離をとって見続ける。
我慢我慢。まだ我慢。
純一君が目を開けるまで我慢するんだ、ボク。
そう自分に言い聞かせる。




……今だ!
純一君が目を少し開けたのを確認すると、ボクは純一君との顔の距離を詰
めていく。
そして……ボクと純一君の唇が触れる。
えへへ、ボクの作戦がちだね。

「ビックリした?」
「ビックリしたというか……かったりぃ」
純一君は恥ずかしいのかボクの方を見ていない。

「純一君、人と話すときは相手の目を見て話さないとだめだよ」
そういってボクは純一君の顔を覗き込むように見る。
すると純一君は顔を反対方向に向けた。
ボクもそっちを向くと純一君が反対に顔を向ける。
そんなことを続けていると、疲れたのか荒い息をしながら純一君がベットに倒れこんだ。

「にゃはは、楽しかったね〜」
「はぁ…はぁ…た、楽しかったか?」
「うん!」
だって、こんな風に純一君とできるんだもん。
楽しくないわけがないじゃないか〜

「っていうか……お前は…こんなことをしにわざわざ来たのか?」
もちろんそんなわけないのに〜。う〜ん、なんでわかんないかな〜
……ちょっといじめちゃおっかな。

「ねぇ純一君、久しぶりに……しない?」
「す、するって、何を?」
「もう、これ以上ボクに言わせるつもり?」
その言葉を聞いて純一君の顔が見る見るうちに赤くなっていく。
てれちゃって可愛いよ、純一君。

「で、でも。まさかこんなことになるとは思わなかったから用意してないぞ」
「大丈夫だよ。ボクの家にあるから」
う〜ん、さすがにそろそろやめておこうかな。
すでに純一君はやる気になってる気がするけど、気にしない気にしない。

「じゃあ取って来るね。トランプ」
「えっ……今何て言った?」
「ん、だからトランプ取ってくるって。もしかして……純一君、えっちなこと考えてた?」
たぶん考えてたんだろうなぁ。でも、それはまた今度ね。

「……さくら、お前もしかして……」
ガラガラガラ

「じゃあ純一君。ボクはこの辺で失礼するね、バイバ〜イ」
そういって、木を伝って下りていく。逃げるが勝ちだよ。
「ま、待てやさくらぁぁぁーーーーーーーーー!!」
うにゃ。純一君、そんな大きな声で窓から叫んだら近所迷惑だよ。
まったく、これだから最近の若い人は困るんだよ。

「へっへ〜んだ。待てと言われても待てないよ〜」
地面に着くとボクは走り出した。追いかけっこなら負けないもんね。
いつもはボクが追う方だけど、今日は逆だね。
にゃはは、果たして純一君にボクが捕まえられるかな。

それからボクと純一君の追いかけっこが始まった。
走っているうちに、ボクはあの桜の樹のところまできていた。
純一君も追いついて、いろいろなことを話して、ボク達はそれぞれの家へと帰っていった。




朝になった。そろそろボクはアメリカに帰らないといけない。
何ていったって、研究中の身だからね。それに無理にとった休みでもあるし。
外に出ると、春の朝というのにふさわしいくらいに、お日様が日を注いでいた。
桜の花びらが、風でひらひら舞っている。う〜ん、春だねぇ。
久しぶりに純一君に会えてよかった。さて、そろそろ家を出ないとね。

「……もう、行っちゃうのか?」
玄関の鍵を閉めて道路に出ると、純一君がいた。いつもなら寝てるはずなのに、わざわざ起きてくれたんだね。
ありがとう。優しい純一君がいるから、ボクは頑張れるんだよ。

「うん、まだ研究の途中だからね。早く帰って、続きをやらないといけないんだ」
「そっか……寂しくなるな」
純一君が小さな声でつぶやいた。
ボクも寂しいよ、純一君。口には出さない。
だって、言わなくてもわかっているはずだから。

「ねぇ、純一君」
「なんだ?」
「ボクがいなくなっても、浮気しちゃだめだからね」
寂しいまま別れるのはいやだから、ちょっと冗談を言ってみる。
純一君が浮気することが無いのは、わかってるからね。

「大丈夫だよ。俺が生涯愛するのは……さくら、お前だけだ」
冗談のつもりで言った一言が、思わぬ言葉で返ってきちゃった。
嬉しいよ……えへへ、嬉しくて涙がでてきそうだよ。

「純一君!」
ボクはとびっきりの笑顔抱きついて、耳元で呟いた。

「今のって、プロポーズとして受け取ってもいいよね?」
「かったるいからまだ駄目だ」
なんでこんな時にかったるいとか言うかなぁ〜
あっ、もしかして純一君照れてるのかな。
じゃあ……

「ボクも生涯愛するのは……純一君だけだよ」
にゃはは、恥ずかしいね、このセリフ。
恥ずかしくて体が熱くなってきちゃったよ。

「さくら……プロポーズはまだ待ってくれ。絶対に……絶対にするから」
「うん!」
楽しみに待ってるからね、純一君!
ずっとずっとずーーーーーっとね。だからそれまでは……
約束忘れちゃ駄目だからね!





終わり

<HHさんあとがき>
えっと、まずは完成がものすごく遅れてしまい申し訳ないです。
前編投稿してからかなりの月日が経ってしまいました。受験生という事で勘弁してください(汗)
とりあえずあまあま目指してこのSS書いたのですが。
これが今現在の自分の限界です(笑)というかただのラブの可能性が。
あとは意味深な終わりかたしてますが、それは省いた場面の出来事が鍵なのです。
それはまた外伝みたいな形で書こうと思っています。はい。
何はともあれ、こんな拙作を読んでくださいましてありがとうございました。それでは、この辺で。

<管理人感想>
すっご〜く久しぶりに身悶えするようなあまあまなSSを読ませて頂きました。
長いこと待たせて貰った分の価値が十分にあると思います。
こういうだだあまが本来のD.C.SSを目標に自分も頑張って行きたいです。
この度はHHさんありがとうございました。次回も楽しみにしています。



                                         
純一君わかってるはずなのに〜
全くなんでキスくらいしてくれないのかなぁ。 
あっちじゃ挨拶代わりに日常茶飯事なんだけど。
う〜ん、どうすればキスしてもらえるかなぁ……
そうだ、こうなったら強硬手段だよ!
巡り来る季節の中で(後編)
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