D.C.P.S〜ダ・カーポ プラスシチュエーション〜                     作者 スズラン〜幸福の再来〜


                                                       キャスト
                                                       主人公     朝倉 純一
                                                       メインヒロイン 霧羽 香澄
                                                       サブキャラ    名無しの少女
                                                                  芳乃 さくら
                                                                  霧羽 明日美




霧羽香澄After story月と桜に込めた願い〜悲シキ恋ノ詩〜




第五話 図書室での告白(前編)



三月二十六日AM11:00



・・・目覚めは眩しい。

太陽の光が鋭く俺の体にふりぞぞぐ。

何時もと違う目覚めの天上。

それは真っ青なシェルターの様だった。

(おいおい、冗談じゃないぞ?)

どうやら昨夜、何時ものように風見学園の中庭の何時ものベンチに来たところまでは覚えているがそのまま眠ってしまったらしい。
硬いベンチからギシギシと痛む体を無理やり起こす。

体調は最悪だ。妙な場所で寝てしまった為か体全身の骨や筋肉が軋む様に痛いし、ひどい頭痛がする。

「はあ」

もはやため息しか出ない。
髪をクシャリと描くと俺はベンチを立ち上がろうとしたが、無様にも俺の足は俺の体の体重を支えるのを嫌がり両膝を地に着いた。

(うそだろ?)

「朝倉君!」

「朝倉!」

聞き覚えのある声に僅かに反応する。白河暦先生とその妹で俺の同級生の白河ことりだった。



・・・・・・



・・・・・・



・・・・・・



「全くお前は附属を卒業しても世話をかける奴だな」

「・・・スイマセン」

暦先生は溜まっていた仕事を終わらせる為にたまたま学園に来ていて、ことりはその付き添いで着いて来ていたらしい。
軽い立ちくらみだといってその場を誤魔化そうとして帰ろうとしたのだが、そんな理由で二人は俺を見逃してくれるはずも無く、
暦先生の所有物である生物準備室へ強制送還され暦先生の説教を喰らっている所だ。

「それにしても朝倉君、どうして学校なんかに?」

「いや、ちょっと」

本気で心配そうに俺の身を案じることり。まさか、夜中から忍び込んでそのまま寝入っちまった事なんて言える筈も無い。

「そ・れ・よ・り・だ!」

暦先生の声には怒気が入っていて鋭く俺を見ていた、もとい睨みつけていた。

「お前は今までどんな生活をしていたんだ?いきなり倒れるなんて普通じゃないぞ、音夢がいなくなってから少し弛んでるんじゃないか?」

「う」

図星だった。全くもっておっしゃる通りです。

「ダメですよ朝倉君、人間食生活や生活リズムが少しでも狂うと直に体調を壊してしまうんですから」

ことりも暦先生も心底俺の事を心配してくれている。二人の優しさになんだか少し目頭が熱くなった。

(俺も幸せ者だな、音夢がいなくなっても世話を焼いてくれる人がいるって言うのは)

「で、話は戻すがお前はあんな場所で何をしていたんだ?卒業式の夜といい最近のお前には何時もに増して不可解な行動が多いぞ」

「卒業式の夜?」

ことりの頭には終止?マークが飛び交っていた。

卒業式の夜、その言葉を聞いて一瞬だけ俺の心に同様が生まれた。
そういえばそうだった、香澄と図書室で居る所を暦先生には目撃されていたんだった。その目撃されたその後の記憶が鮮明に蘇る。



・・・・・・



・・・・・・



・・・・・・



3月15日



風見学園真夜中の図書室にて



暦先生が去っていって暫らく、俺と香澄は図書室の一番奥の机で安堵をついていた時だった。
俺達はどう言う訳か電気を消して月明かりが優しく射す場所に居着いていた。
そもそも香澄がしばらく‘月光欲’をしたいと言い出したのが原因だった。その日の月は見事なまでの‘満月’だった。

香澄は何も言わず、図書室の窓から月を見上げていた。
青白い月光に照らされた香澄の姿は本当に幻想的で「聖母マリア」の再来とでも言おうか。
月光のストールが彼女の体を纏っているかのような錯覚を覚える。

(ホント、顔だけは美人だよな)

月光が良く似合う女というのは居るものだと感じさせられた瞬間だった。でも、香澄なら青白い月夜に照らされた姿も様になっているが眩しい太陽の下で無邪気に笑っていた方が良く似合う様な気がする。

「・・・・・・」

ふと、そんなことを考えながら俺は香澄の横顔を唯見つめていた。
年上と見間違えてしまうような美しい容姿と表情に俺はさっきから疑問に感じていた事を口にした。

「なあ香澄」

「何?」

三本ピンで髪をまとめたショートの髪を揺らし俺の方に目を向ける。その仕草が妙に色っぽくてちょっとドキリと心拍を高めた。

「オマエの妹さん、明日美さんって言ったか?明日美さんは本が好きだったのか?」

「何?あからさまに妙な質問をするわね」

「唯の興味本位だよ」

香澄は今は無き妹を思うように視線を窓の外に向けて思い出に浸るように話し始めた。

「そうね、前にも言ったけど明日美は生まれた時から体が弱かったの。
だから外で遊んだり運動をしたりする事があまり出来るような子じゃなかったの」

「へえ、そうなんだ」

体が弱かったか、音夢と似ているな。最もアイツは木っ端恥ずかしいポエムを書くのが昔からの趣味だったな。
音夢は俺にバレていないと思っているらしいが俺はアイツがそんな事が趣味だったという事はさくらと出会う前から気づいていた。

「だから読書や音楽を聞いたりピアノを弾くのが好きな子だったわね。本は主に神話系の書物が好きだったわ。
昔、良く明日美は覚えたての神話のお話を私に良く話してくれたわ。本当に嬉しそうに、ね」

香澄は優しく目を細め遠い所を見ているようだった。悲しいことを思い出させてしまっただろうか?

「確かあの子は中でもギリシャ神話のプシュケとエロスの恋話が好きだったわ」

うーむ、神話の本なんて読んだことなんてないから全く持って解らん。

「まあ、本なんて読まなそうなそうな朝倉にはわからないでしょうね?」

「ぐっ」

クソ、相変わらず一言多い奴だ。黙ってりゃ美少女と言えるくらいの容姿はしているのに。
それでも俺はそんなキツイ外見の中にあるコイツの優しさに惚れたわけで。一応ここは下手にでてやるか。

「なあ、どんな話なんだ?」

「あら、随分と素直に聞くのね」

「っつ!お前なあ!」

「アハハハハハ♪ゴメン、ゴメン、まあ落ち着きなさいな。ちゃんと話してあげるから」

怒る俺を宥めるように制した後、一呼吸おいて香澄は再度窓の外に目線を変えてゆっくりと優しい苦笑で喋り始めた。



・・・・・・・・・・・・



・・・・・・


・・・



「ある国の王と女王の間に三人の娘がいました。皆素晴らしい美女でしたが特に末っ子のプシュケは褒め言葉に無いほど美しい少女でした。


しかし、これを不愉快に思ったのは愛と美の女神「アフロディーテ」でした。
彼女は息子であるエロスを呼び出しプシュケを世界一下賎でつまらない男に、恋をさせるように命じます。


エロスはさっそく甘い水と苦い水を琥珀の瓶に汲み分け、矢筒の先に下げてプシュケの元に飛んで行きました。
ところがプシュケの美しい寝顔を見るうち、エロスは悪戯するのが気の毒になってしまいます。


そうして、ふとプシュケが目を開けた時、エロスは慌てて恋の矢で自分自身を傷つけてしまったのでした。


一方、王と女王は、プシュケに一向に花婿が現れないのを案じ、アポロンに神託を伺います。
しかしそのお告げは、『その娘は人間の花嫁になることはできない。娘の夫は山の頂上に住む、神でも人間でもない怪物だ』
という恐ろしいものでした。


王と女王は悲しみにくれながら、プシュケを山に一人置いて帰ります。


一人ぼっちになったプシュケが震えて泣いていると西風がプシュケを抱いて、山頂にある美しい宮殿へと運んで行きました。


そこに人の姿はありませんでしたが、一つの声が彼女を導き、美味しい食べ物や音楽でもてなしてくれました。
夫は夜になるとプシュケの前に現れ、明けないうちに去って行きました。
夫は決して姿を見せませんでしたが、とても優しく可愛がってくれるので、プシュケも心から慕うようになりました。
プシュケは姿を見せて下さいと幾度も頼みましたが、夫は『僕の愛に疑いでもあるのかい』と聞き入れません。


そんなある日、プシュケの姉たちがやって来て、彼女に言います。
「その夫はきっと恐ろしい怪物で、いつかお前を食べてしまうつもりなのよ。夫がすっかり寝入ったら、明かりを点けて、その姿を見てごらん。
もし怪物だったら、その頭をすぐに切り落とすのよ」


夫を信じきっていたプシュケも、姉たちにいろいろ言われるうちに、だんだん疑い始めます。
そしてその夜、夫が寝入ると、プシュケは小刀を持って明かりを点け、夫の姿を目にします。


ところが、そこに眠っていたのは恐ろしい怪物などではなく、白い翼をもった、この上なく美しい神様でした。
プシュケが明かりを近づけると、彼の肩に蝋が滴り落ち、エロスは驚いて目を醒まします。
彼はじっとプシュケを見つめると、白い翼を広げて窓から飛び出しました。
プシュケも夫の後を追いましたが、翼の無い彼女は窓から地上に落ちてしまいます。泣いて悲しむプシュケにエロスは言いました。


「愛と疑いは一緒にいられないのだよ」


そう言い残すとエロスは天界へと翼を翻し去っていってしまいました。」



・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・


・・・



「・・・・・・」

「ちょっと、朝倉?」

「・・・・・・」

「朝倉!何、ハトが豆鉄砲喰らった様な顔してるのよ!」

「あ、ああ悪い悪い」

香澄の話にすっかりのめり込んでいたせいか、随分と時間が経ったような錯覚を覚える。

(でも)

楽しそうにそれでも優しさのこもった香澄の声は安らぎに満ちていた。出来るのならずっと彼女の声を聞いていたい。

「で、そんな形でその話は終わっちまうのか?随分と中途半端だな」

「ちょっと、誰が終りだ何て言ったのよ。ここまでで物語の半分って所かしら、まだこの話には続きがあるのよ」

「そうなのか?なら早く続きを聞かせてくれよ」

俺は夢中になって身を乗り出して言った。
物語の続きを知りたいという気持ちの反面、もっと香澄の優しい声を聞きたいという気持ちが強くあったからだ。

「あら、そんなに面白かった?朝倉にこんなファンタジーな話、似合わないわけどねアハハー」

さっきの話している時の神秘さは何処へやら?と言わんばかりに香澄はきつい事を言ってくれる。

「って、おまえなあ!どうして何時もそう一言多いんだ!」

「だってねえ、私もこの先を話すのも結構おっくうなのよねえ。だからさ、後は自分で本でも何でも調べてこの話の結末を知ってくれない?」

「んな!そんな無責任な話あるかあ!一度話したんだから最後まで話すのが筋ってモンだろうが!」

「な、何よそこまで声を大にして言う事?」

「なあ、頼むよ続き聞かせてくれよ」

「えー」

あからさまに嫌そうなリアクションだな。だが、ここまで話を聞いた手前俺も引く訳には行かない。

「お前の口から聞きたいんだよ」

「え?」

俺の言葉に香澄の顔が僅かに蒸気する。

(おいおい、なんでそこで顔を蒸気させるんだ?俺が一体何を・・・)

言ってから気が付いた。随分と俺は恥ずかしい台詞を吐いていたらしい。
俺も自分でなんでそんな事言っちまったんだと、少し後悔していた。でも、出ちまったモンは仕方ないし押し通してみるか。

「お、お前声ってさあ、なんて言うか聞いてると落ち着くんだ。なんつうか魔法に掛けられた様な感じになるんだよ」

所詮、頭でしか考えていなかった事だから、言葉では上手くまとまらない。どう言えばいいんだろうか?自分の文章能力の無さを心から恨む。

「それは、朝倉は私の‘声’が好きだってこと?」

香澄は‘声’という言葉を強調して俺に質問を投げかけで来るがその眼は真剣そのものだ。

「え、えーと、うんまあそんな所だ、な」

香澄の真剣さに動揺したせいか何とも中途半端に答を濁してしまった。

「そ、そうなんだ」

香澄の顔が悲しみの色に染まった。マズイ!何がマズイかは良くわからんが俺は彼女にとって何か不快な言葉を掛けてしまったらしい。

(どうする?どうする?)

月光の光が射す空間で香澄の顔はどんどん悲しみに沈んでいく。そんな顔、お前には似合わないのに。
月の光が香澄の悲しみに満ちていく顔を引き立たせてゆく。もう俺の心中は乱れに乱れていた。どうすれば香澄に上手く伝わるだろうか?

(そんな顔しないでくれよ!香澄、俺は俺は・・・)


チリン___________________


(ん?)

何処からともなく鈴の音が聞こえた。その音のせいで何故か俺の頭はスッキリと邪念が取れた。

(そうだよ!別に何も考える必要なんて無い、俺の思った事を香澄に伝えればいいんだよ)

俺は香澄に向き直り深呼吸をして第一声を発した。

「俺は香澄の事、好きだぜ」

「え?」

(え?)

俺たちが疑問符を出現させたのは、ほぼ同時だった。
しまった、直球にいきなり核心つくコメント出しちまった!とは、言っても出てしまったものは元に戻らないんだから仕方ない。

香澄はそれこそさっきの俺のように「ハトが豆鉄砲喰らったような顔」で俺を見つめている。今の俺は極めて冷静だった。
まあ唯の開き直りかもしれないが、香澄は俺の言葉を待っている。言うなら今しかない。

「俺は香澄のその妹思いの性格、勝気で実は恐がりな所とかそんなとこ含めて全部好きだ。だから話の結末はそんなお前の口から聞きたいんだよ」

「あ、朝倉」

香澄の顔はリンゴのように真赤で俺もそれに負けないぐらい頬に熱を感じる。それでも目は逸らさなかった。
香澄も目を逸らさず俺の事を見ていてくれた。
そして、香澄は‘しょうがないわねえ’と言わんばかりの呆れ顔を作り窓の外に目を向けて、本当に優しい口調で話の続きを話し始めた。


一部引用http://sanmarie.s-n.pl/roman/16psyche.htm





続く

スズランさんの後書き
ようやく、ここで香澄の出番を作れました。
そもそも、ゲーム中では出番が少なくシナリオも短かったので何かイベントを追加したいと思って出来たシナリオでもありました。
ようやくこのSSのメインヒロイン霧羽香澄が登場しました。いやー長かったです。ここまで来るのにどれだけの時間を浪費したか。
さて、この話は前後半に分けられています。それだけ私も力をかけているという証拠です(ムダに)
では後編を楽しみにしててください

管理人感想
SSってのはほとんど妄想ですからねw
香澄の登場がすでに物語の佳境というのが扱いにくさを増してるように思えます。



                                            
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