D.C.P.S〜ダ・カーポ プラスシチュエーション〜 作者 スズラン〜幸福の再来〜
キャスト
主人公 朝倉 純一
メインヒロイン 霧羽 香澄
サブキャラ
名無しの少女
芳乃 さくら
霧羽 明日美
霧羽香澄After story月と桜に込めた願い〜悲シキ恋ノ詩〜
第十三話 止まらない想い〜Thought to intersect(後編)
「どう?少しは落ち着いた?」
「えへへ、お蔭様でね」
ボクは笑いながら涙を拭った。久しぶりに思いっきり泣いたものだから、まだ目がヒリヒリする。
人前で声を出して大泣きするなんて一体何年ぶりだろう?こんな歳になって恥ずかしい事だと思う。でも自然とボクの心はかつて無いほどに晴れやかであった。
「じぃぃぃーー」
「え?」
「じぃぃぃぃぃーーーー」
気が付けばお嬢ちゃんはボクの顔を文字通り「じーーーー」っと見ていた。それもかなり近い距離で。
「うん」
ひとしきりボクの顔を見た後に何かうれしそうな顔をしてようやく顔を離してくれた。
「さっきより、ずーーーーっといい顔になったね」
「え?」
初め何を言われたのかよく理解できずボクは自分の顔を触ってみた。
「今のさくらちゃん、前よりずっと可愛いよ♪」
「か、可愛い?」
「そうだよね、アルキメデス」
「ウム、一皮剥けた「いい女」だぞ?」
「?」
二人の言っている事が良く解らない。「前よりずっと可愛い?」「一皮剥けた?」どういうことなのだろうか?
(わからないな・・・)
「当の本人はわかっていない様子ですな、お嬢」
「みたいだね」
ふたりが笑っている横でボクには気になる事があった。どうしてお嬢ちゃんとアルキメデスは「ボクの願い」なんて聞いてきたのだろう?
そして何故あそこまで必死にボクに呼びかけてくれたのだろう?
お陰で長くから続いていた心の蟠りはスッカリ消えた。それはとても有難い事でもある。
(どうしてそこまでしてくれたの?)
っと、聞こうとしたところでアルキメデスが口を開いた。
「さて、さくら殿」
その声は何時に無く真剣身が帯びていた。この口調は彼が何か重要な事を話す時だと、ボクは感じ取った。
「もう御主も気づいているのではないか?この島で起きた事全てが、一つにまとまろうとしている事に」
ギクリとした。
アルキメデスも気づいていたんだ。当然といえば当然かも知れない。
霧羽香住
3月15日
初音島の桜
二回目の死神の来訪
これらのキーワードが全てお互いに必然性を帯びている事に・・・
「もうお互い秘密を無くしてもいいのではないか?」
決断の時だ、とアルキメデスは付け加えて言った。
決断か・・・
お嬢ちゃんの方を見る。お嬢ちゃんの顔には表情が無く唯、ボクの事を見つめている。どうやらお嬢ちゃんも全てを悟っているらしい。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
二つの視線がボクに注がれる。
その視線が何を言わんとしているのかボクにも想像が付いた。
「ふう、なるほどね」
一息、ため息を漏らすとボクはあの桜の木へ歩み寄りその大きな幹にそっと手を置き静かに眼を閉じた。
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
どうしてどの位時間が経ったのだろう。ボクはゆっくりと話し始めた。
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この桜の木はね人々の願いの結晶なんだ。
この島の人たちの願いが形になったもの・・・
一人の願いは小さなものだけど、それが沢山集まれば誰かの願いだって叶えてあげられる。
夢のような木なんだ。
その人々の願いを集めた桜は
本当に切実で必要な人の願いを叶えてくれる、
そんな夢のような優しさで満ちた・・・
優しい願い(桜)という揺りかごに揺られている島
それがこの初音島なんだ・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
ゆっくりと、本当に多くのことをゆっくりと話し終えた。このさくらの全てを誰かに明かしたのは初めてだった。普通なら島の中の人間でも話してはならない事なのだが、今回はケースが特殊だ。
まあそれにこの二人なら信頼できるとボクも信じていた。何はともわれ、これでボクに秘密は無くなった。
後は・・・
「・・・よく、話してくれたね」
「お嬢ちゃん・・・」
表情を変えずに彼女は呟く。真っ黒な服、真っ白な素肌、真っ赤な瞳、それぞれのパーツが操り人形のように動いている、今のお嬢ちゃんをみてボクはそんな錯覚を覚えた。そして改めて悟った。
本当に目の前の少女は人間じゃないのだと・・・
「今回の件は僕たちにとってもちょっと特殊なんだ。本来生業としていない事をボクはやろとしているからね」
「本来生業としていない事?」
「うん、だからこうして他の誰かと‘関係無し’に一緒にいる」
「他の誰かって・・・ボクの事?」
「うん」
その淡々とした口調に嫌な違和感を覚えた。もしお嬢ちゃんの言っている事が正しいのならお嬢ちゃんとアルキメデスは意図的にボクに近づいたのだろうか?
確かにこの島の中で枯れないさくらの秘密を知っているのはボクだけだし、そう考えれば辻褄は合うだろう。
でも・・・
「でも、さくらちゃんとの「関係」が生まれたのは本当に偶然の事だったんだよ。決してボク達は計画的に動いていたわけじゃない、コレだけは信じて」
そう、この子がいくら目的の為とはいえ嘘をつき続けるような器用な子ではない事はボクにも解っていた。だからボクは自分もそうされると嬉しいと思ったので、お嬢ちゃんの頭にポンと手を置いた。
「さくらちゃん」
ようやくお嬢ちゃんの顔に笑顔が灯った。何時ものお嬢ちゃんの顔だ。
そうだ、ボクはお嬢ちゃんの支えになると決めたのだ、この笑顔を守りたいと思ったから全てを話したのだ。
友達を疑う事なんてある訳ない。
「で、お嬢ちゃんのやろうとしている「本来生業としていない事」って何?」
「それは・・・全部終わったら話してあげる♪」
と、いつものような笑顔でお嬢ちゃんは言った。見てるこっちまで嬉しくなるような笑顔で。
「安心して、ボクがしようとしてることはさくらちゃんにとっても良い事だから。だから今は」
「うん、わかったよ」
一体、お嬢ちゃんが何を思っているのかは解らないけど別にソレはソレでいいと思う。ボクはこの笑顔を、この優しい死神さんの言う事を信じる事にした。
「では、さくら殿。こちらも全ての秘密を話す事にしよう」
「え?」
「御主が初音島の事を話してくれたお陰で全てが繋がったのだ、言ったであろう?お互いに秘密を無くそうと」
「な、なら」
「ウム、全てを話そう。霧生香澄の事件から今起こってしまっている事態の全てを、そしてこの先に起こる出来事を」
覚悟は決まっていた、全てを知る覚悟を。全てを知った上でボクはボクの出来る事をする。それはこの島の為だけでなく僕自身の願いの為に!
砂時計の砂はもう既に落ち始めていたのだ。全ての終焉へ向けて・・・
運命の日まであと13日・・・・・
第一部・完結
第二部に続く
スズランさんの後書き
中途半端だとは解っています。しかしここで全てを暴露するわけには行かないのでとりあえず第一部?完結って形で。
第二部では全てに決着がつきます。アルキメデスの言おうとした事も全て明らかにします。タイトルの(中篇)というのも間違いではないので。
エー多分、近いうちに13話の改訂版を更新する予定です。コレではまだちょっとという感じなので
しかし久々の更新だ。そして私は思うのです。「コレ一応ヒロイン香澄だよな?ヒロインがさくらに見えてきた」
多分14話は13話の改定が終わり次第、結構早く上がると思います。もうラストまで一直線ですし。
次回では明日美がようやく愛しの朝倉君に再会します♪ちなみにこの話のなかの明日美は既にことりと友達になっています。