D.C.P.S〜ダ・カーポ プラスシチュエーション〜                     作者 スズラン〜幸福の再来〜


                                                       キャスト
                                                       主人公     朝倉 純一
                                                       メインヒロイン 霧羽 香澄
                                                       サブキャラ    名無しの少女
                                                                  芳乃 さくら
                                                                  霧羽 明日美




霧羽香澄After story月と桜に込めた願い〜悲シキ恋ノ詩〜




第十二話 止まらない想い〜Thought to intersect(前編)



四月二日


PM8:30


朝倉家_______________


「ハァ」


ため息をつきながら俺は遅めの夕食を取っていた。最近ため息の数が自身の口癖である「かったりぃ」に比例して増えている気がする。


「こりゃ、相当なもんだな」


箸を置いてテレビの電源をつける。ブラウン管には面白くも無いバラエティ番組が映った。
何をするでもなく俺は頬杖をついてそれに目を向ける。当然テレビの内容なんて頭には入ってこない。


(ああ、そういえば)


昼間さくらに会ったのはなんだか嫌に久しぶりだった気がする。


(前に会ったのは・・・)


あの黒服の少女を家に連れてきたときだったな。その日以降、あの少女はさくらの家に泊まることになって、


「まだ、あの子居たんだな」


昼間のあの黒服の少女の事を思い出す。あの子は何をするでもなく俺とさくらの会話をずっと見ていた。
いや、見ていたというよりアレは何か睨んでいたと言った方が正しいかもしれない。


冷たい視線で俺たちのやり取りを唯睨んでいたのだ。
どうしてあんな顔を少女は作っていたのか、まあ子供心に突然の来訪者に戸惑ってしまっただけだろう。


その少女より気になるのはアイツだ。今日のさくらの様子はちょっと何時もと違っていた気がする。なにかそわそわしていると言うか・・・


「何かあれば俺に言えばいいのに」


今更、何か隠し事をする間柄ではない。アイツはどうして肝心な所で回りに気を使って、自分ひとりで背負ってしまうのだろう?
普段は躊躇無く甘えてくる奴なのに・・・




(普段は躊躇無く?)





その言葉に何か疑問のようなものを感じた。





_____________そうだ______________





さくらは何時も俺に向かって躊躇無く「おにーちゃーん」と言いながら飛び込んで来る。



本当にガキの頃から変わっていない。





________なら今は?____________





どうなのだろう?



今のさくらは一体どういう心境で俺に甘えてきてるのか?



あいつはガキの頃のままで、その姿のまま、その時の心境のままアイツは俺の前に居る。





__________本当に?_________





体は成長していないが、確かにさくらは俺と同じ長さの時間を向こうで過ごしている。



ならばさくらの心境は本当は何か変わっているのではないか?



もし、もしもそれが事実だとしたら



(変わっていないのは俺のほうなのか?)



そしてさくらの本当の心境は俺が思っているものとは違うのでは?



「って、今更俺は何考えてるんだろうな」


ハハハッ、と笑った。本当にどうかしている、こんな事今まで考えた事も無かった。そんな事あるはずない。
俺たちの関係は何時だって変わりやしない。


「でも」


今日、さくらの様子が少し可笑しかったのは事実だ。
まあ最近アイツに構ってなかったからな、体が本調子になってきたら少しばかりアイツの我が侭を聞いてやろう。



うん、それがいい。



______________________________




PM10:30



桜並木道



「うわぁ、さくらの花びらが綺麗だね、アハハッ♪」


お嬢ちゃんは先頭を切ってうれしそうに桜並木を見上げてはしゃいでいる。


「うにゃあ〜」


お嬢ちゃんの頭の上のうたまる(最近、いつもお嬢ちゃんの頭にいる)もまた随分とご機嫌だ。


「辺り一体の桜吹雪、夜空には鋭い三日月、後雪でも降れば‘桜・雪月花’とでも言うのだろうな」


アルキメデスはと言うとボクの腕の中で中々にロマンティックなことを言う。


どうしてこの妙な組み合わせのメンバーで夜な夜な出歩いているかというと
夕飯が済んだ後、お嬢ちゃんは散歩に行きたいと言い出したので
こうして二人と二匹という奇妙な組み合わせで、夜の初音島を徘徊している訳なのだが・・・


「アハハハッ〜」


我が家のお姫様は終始ご機嫌なようで見るもの全て、初めて見るかのような反応を示している。
こちらとすればそんなお嬢ちゃんの姿を見ているのはとても微笑ましい。



そんな些細な時間がゆっくりと過ぎていく・・・



目の前には自分に初めて出来た妹のような無垢な少女、ボクの腕の中には口は悪くて少し素直じゃなくて、
でもその少女の事を誰より理解し本当に優しさに満ちたぬいぐるみ。



(姉妹がいるって、こんな感じなのかな)


そんな事を考えながらボクはお嬢ちゃんの姿を見て微笑んでいた。


「ぬ?何を口元にやらしく笑みを浮べているのだ?」


「やらしくって、本当に君は」


もう少し言葉を選んで欲しいものだ。


「別に何でもないよ、ただ・・・」


「ただ?」


「妹が居るってこんな感じなのかな?ってさ」


「・・・・・・」


「ボクってさ、一人っ子なんだけどさ・・・‘妹みたいな友達’が出来たのって初めてで、本当にうれしんだ」


「・・・・・・」


「な、なんだよ急に黙らないでってば」


「フッ」


「・・・そのニヒルな笑いは何?」


「まあ、暫くの間はその‘妹’の世話を焼いてやればいいのではないか?」


「ま、まぁそのつもりだけどさ」


「・・・りがとう」


「え?何か言った?」


「な、何でも無い、ほらもうお嬢は大分遠くまで行ってしまったぞ」


「あ、ほんとだ。待ってよ〜、お嬢ちゃ〜ん!」

ボクはそう言って駆け出した。ふと、腕の中のアルキメデスに目を向けてみるとなんだか、優しく笑っているように見えた。



______________________________





PM11:30



朝倉家



少し、体が痛い。


頬に堅い物が当たっている。


なんだろう?


気が付けば目の前には食べ残してそのままの食事と、ブラウン管から流れるテレビの音。


(少し眠ってしまったのか)


体を机の上から起こす。頭が重い、目の焦点が合っていないのか辺りがボヤけて見える。それでも意識はハッキリしていた。


(・・・行かなくては)


不調気味の体を持ち上げて俺は何かに導かれるように何時ものように出かける。




あの場所へ・・・




______________________________




PM11:31



桜公園



「うわっ、もうこんな場所まで来ちゃったんだ」


ボク達は桜並木を歩いて公園までやってきた。お嬢ちゃんはと言うと、まだまだ元気な様子でうたまるを頭に載せて公園を走り回っている。


公園の時計を見ると、既に時間は十一時を回っている事に驚いた。ボク達は一時間近く散歩をしていたようだ。


「もうこんな時間」


「ウム、楽しいと時間が経つのが早く感じるな」


「そろそろ帰らなきゃね、こんな時間まで子供が起きてたらいけないし」


「ウム、同感だな」


「お嬢ちゃーん!そろそろ帰らない?」


噴水の周りを走り回るお嬢ちゃんに呼びかける。お嬢ちゃんは立ち止まってボクの方を見た。


「えーーーー!もっとお散歩しようよ!」


「ダーメ!もう、子供は寝る時間だよ!」


「ぶう、ボク見た目ほど子供じゃないよ!」


頬を膨らませて怒りを露にするお嬢ちゃん。うん、そういう表情もトビキリ可愛いけどお姉ちゃん感心しないぞ。ここは冷静に促さなくては、


「いや、そういう問題だけじゃなくてね、夜も遅いし危ないでしょ?」


「あれれ?ここって・・・」


「ちょっと、お嬢ちゃん聞いてる?」


お嬢ちゃんはボクの呼びかけを聞いていないのか、公園の草むら辺りをジロジロと見ている。


「・・・そっか、暗くて解りにくかったけどあの場所の近くだったんだ」


「ほ〜ら、お嬢ちゃん。帰るよ?」


「なら、この草むらをつっ切って行くと・・・えい!」




ガサッ_________________________



「え?」


何を思ったのかお嬢ちゃんは公園のサクを超えて草むらをつっ切ってボクらの視界から忽然と消えた。
まるで‘神隠し’を今、目の前で見たような感覚だった。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・本当に‘消えた’ね」


「・・・まあ、全身黒服だからな。闇夜に溶け込むかのように消えて行った
な」


「・・・ぶ、無事かなぁ?」


「・・・さ、さあな」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「っておい!見とれている場合ではないぞ!早くお嬢を追うのだ!」


「そ、そうだね!」


本当にお嬢ちゃんが神隠しにあっては冗談では済まない。アルキメデス
の言葉に我に返ってボクはお嬢ちゃんの後を必死に追った。


「お嬢ちゃーーーん!!」


「お嬢ーーー!!」


ボク達は草むらを掻き分けてお嬢ちゃんの後を必死に追いかけた。




「ハア、ハア」


「ゼイ、ゼイ」


「よ、ようやく広場にでた、ね」


「そ、そのようだな」


ボクら二人は草むらを掻き分けてながら真っ暗闇の中を苦悩しながら前進した。
いくら原住民のボクも夜目が利くわけではないので、歩くのに大分苦労をした。


「しかし・・・」


「お互い酷い有様だね」


ボクの洋服は草まみれになり汚れに汚れていて、アルキメデスもそれに負けず劣らずの形(ナリ)をしている。


「あ、二人とも遅いよ〜!」


「にゃ〜あ!」


息の上がっているボクらに我が家のお姫様は元気な声をかけてくれた。
見るとお嬢ちゃんは大きな大きな桜の前にいた。どうやら‘神隠し’にはあってはいないようだ。ホッと胸をなでおろした。


(そっか、ここってあの場所だったんだ)


いくら夜とはいえ驚いた。知らず知らずのうちにボクは‘おばあちゃんの桜’の前に来ていたなんて。


昼間ならば何の苦もなく来れるこの場所だが、夜になればこうまで気が付かないとは・・・


(それにしても・・・)


何時見てもこの桜の姿には圧巻させられるものがある。
眩暈のするような辺り一杯に舞う桜の花びら、周りの桜の木々に囲まれその中心に佇む巨大な桜の木。本当にこの世のものとは思えない光景。



でもなんか底知れぬ違和感がココ最近この場所からは漂っている、そんな気がする。



それはこの間のあの‘真っ赤な桜の花びら’を見たからだろうか?



いや、それだけではない。



‘あの日’他にも何かあったような気がする。



何だったかな・・・



「・・・ちゃん、さくらちゃんてっば!」


「え?」


気が付けばお嬢ちゃんがボクに向かって何かを呼びかけているのに気づいた。


「ねえ、どうしたの?最近こう何かボーってしてるの、多いよ?」


「う、うん。ゴメンゴメン、ちょっと考え事を・・・ね」


「考え事?」


「うん、たいした事じゃないよ。全然」


「・・・本当に?」


「本当だよ」


「本当の本当に?」


お嬢ちゃんは眼を細めてジトー目でボクの事を見つめてきた。明らかに疑っているな。


「本当の本当だってば。で、さっきボクに呼びかけていたみたいだけど、どうかしたの?」


「え?う、うん」


今度はボクの方から目をそらしてモジモジと両手を膝の上で弄り出した。不安げな表情で、何かボクに遠慮するような仕草。


「なあに?」


ボクはアルキメデスを自分の頭に置いて(傍からみるとさぞ滑稽だろう)優しい声でお嬢ちゃんの両肩に手を置いて呼びかけた。


「何でも言ってごらん、ね」


「・・・昼間」


「え?」


「昼間、あの人が来たよね」


(あの人?)


「それってお兄ちゃんのこと?」



___コクン_______



儚げにお嬢ちゃんは無言で頷いた。
そういえばお嬢ちゃんは昼間にお兄ちゃんがやってきてボクとお兄ちゃんが話している間、ずっと黙り込んでボクらの事を見つめていた。


それも冷たい表情で・・・


そう、一緒にいると稀にそんな顔をしている時がある。


だからなんとなく思ってしまった。


普段は見えない、不安な影のようなものがボクらの間にはあって、


お嬢ちゃんはそれを垣間見ているのではないかと・・・


「で、お兄ちゃんがどうかしたの?」


「・・・ボクが気になっているのはあの人じゃないんだ」


「え?」


「あ、ちがう!確かにあの人もあの人で気になることはあるんだけど、ちょっと違うの」


お嬢ちゃんが伝えようとしている事がイマイチよくわからない。


「つまりね、ボクは昼間にあの人と話していた「さくらちゃん」が気になっていたの」


「え?ボクに」


「・・・うん」


随分と予想外な返答が帰ってきた。
どうやらお嬢ちゃんは昼間、お兄ちゃんがやってきてボクと一緒に話をしている時のボクに何か気になることがあったようだ。


あの時ボクは何かお嬢ちゃんの目に付くような事でもしていたのだろうか?


「あの時のボクの何処が気になったの?」


「・・・・・・」


お嬢ちゃんは黙り込んで俯くいてしまった。


「お嬢ちゃん?」


「・・・・・・」


「お嬢ちゃん?」


「・・・・・・」


再度、呼びかけてみるもお嬢ちゃんから返答が帰ってくる事はない。


「お、お嬢?」


その様子に流石に心配したのかさっきまで黙っていたアルキメデスもお嬢ちゃんに呼びかけた。


「・・・どうして」


「ん?」


「どうして貴女は笑っていられたの!?」


突然の大声にボクとアルキメデスはたじろいで思わず両肩に乗せていたその手を放してしまった。
そんなボクの反応にもお構いなしに、お嬢ちゃんは言葉を止めない。


「ねえ、どうして!?どうしてあんな顔でいられるの!?自分に嘘ついて
までどうして!?あなたは何時まで嘘をつき続けるつもりなの!?」


「っっ!?」


ズキリ、と


重く圧し掛かる言葉。


その言葉はボクの心を激しく揺さぶった。


気が付けば


お嬢ちゃんの瞳からはポロポロと涙が頬を伝っていて


それでも彼女は必死に言葉を続けた。


「周りだけじゃない!自分や、自分の身近な人たちにも嘘ついて!どうしてそこまでして抱え込もうとするの!?
そんなんじゃ、貴女が先にこわれちゃうよ・・・」


お嬢ちゃんの一言一言がズンっと、心に圧し掛かってくる。


そうか、お嬢ちゃんと今日までずっと傍に居たんだ。お嬢ちゃんはボクが思っている以上にボクの事を見ていたんだ・・・


(全くもって全部言う通りだ)


ボクは嘘をついている。ボクと関わる人全てに嘘をつき自分自身にさえ
も・・・


でもその嘘は今この状況を最善な方法で終わらせる為のものなのだ。ボクはその為に嘘をついている。
たとえ自分がどんなに傷つこうとも、ボクの大切な人たちが傷つく事は絶対に許せないから。


でもまさかその嘘がお嬢ちゃんに見破られているとは思わなかった。


「お嬢ちゃん?」


ボクは泣いているお嬢ちゃんの再び肩を抱いた。


「ボクは大丈夫だから、お嬢ちゃんがそこまで必死になってくれなくたっていいんだよ?」


これは本心であると思う。唯、目の前にいる小さな女の子に泣いてほしくなかった。それがこのボクの為であるというなら、なおさらだったから。


「う、ううっ、」


「大丈夫、大丈夫だから」


そういいながら彼女の涙をぬぐってやった。
大丈夫かと聞かれれば確かに辛い、でもこれはボクのつけなくてはならないケジメのようなものだから・・・


「ボクは・・・全然平気だから」


そう言う他なかった・・・


お嬢ちゃんはその言葉に突然、キリッと涙目になった瞳をボクに向けた。
その瞳にはまだ涙が沢山溜まっていたけれど、お嬢ちゃんの顔はかつて無いほどに真剣身が帯びていて、
これからお嬢ちゃんの言う事がどんなに真剣なのかを理解した。


「貴女の願いは・・・」


「え?」


「貴女の願いはなんなの?」



「ど、どういう」



「他の誰でもない「芳乃さくら」の願いは何?」



その言葉はボクの深い深い、心の一番奥の扉を静かにノックした。



ボクの願い・・・



他の誰でもないボク自身の願い・・・



絶対に偽れないもの・・・



絶対に偽ってはいけないもの・・・



それは・・・



「ボクの願いだなんて、そ、そんな事、関係な・・・」


「まさか、お主「関係無い」だなんて言うつもりではあるまいな?」


「え?」


アルキメデスの口調には厳しいものがあった。まるでボクの全てをしかるようなそんな厳しさが・・・


「御主が一体何の為に嘘をつき続けているかは我輩達は知らん。
だがな、それが御主の大切な存在を守る為と言う事は我輩もお嬢も当に気が付いている。
誰かの為に嘘をつく、嘘と言うもの全てが悪であるとは我輩は思わん。その嘘がその後の最善になるのならその嘘も真実になるだろう。
だがな、絶対についてはならない嘘もあるのだ。それは自分の気持ちに嘘をつく事だ。自分の気持ちに正直に慣れなくてどうして人を救える?」


やめて、


それ以上言ったらボク・・・


「御主はいつまで考えているつもりだ?確かに猶予はある、だが、それも無限でない。考えてもダメなら動くしかあるまい」


「うっ・・・」


胸が熱くなってきて今まで堪えてきたものが溢れてきそうだ。


「動け、芳乃さくら!我輩と違って御主には人を抱く腕も歩み寄る事のできる足もある。
あがくだけあがいてみろ!それが人間だろう?御主にはそれが判っているハズだ!!」


「あ、ああっ」


最後の言葉にボクは地面に膝をついた。


もう気が気でなかった。


ボクの胸の奥から溢れてくるこの思いに。


「さくらちゃん・・・」


お嬢ちゃんは膝を着いたボクの肩にそっと手をかけた。


「ボクだって貴方の事が心配なんだよ?だからもう自分を傷つけるのはやめて、その痛みを一人で背負い込まないで?
辛いならボクも一緒に貴女の痛みを背負ってあげるから」


「ど、どうしてそこまで・・・」


「だって、ボク達友達でしょ?ボクの初めての友達、だからその友達にはいつも笑っていて欲しいから」


「っ!?」


確かに・・・ボクは自分の気持ちにも嘘をついていた。偽ってはいけないもの、それは「お兄ちゃんへの恋心」。
昼間お兄ちゃんといる時、確かにボクはその気持ちを隠そうとした。


何故?


お嬢ちゃんとアルキメデスから霧羽香澄の事を聞いたから?お兄ちゃんの愛おしい人は自分ではない事に気づいたから?


確かにどれも理由にするにはふさわしいかもしれない。


(それでも・・・)




____ボクの気持ちを、長年の思いを偽るには値しない!____




「ぼ、ボクは、」



涙が今にも一斉にこぼれだしそうで声が出ない。



「ぼ、ボクはっ」



でもこの言葉はちゃんと声に言わなくてならない!今この瞬間を逃したらもう声にも出せないかもしれない。



「ボクはっ!」



妹としての存在ではなく一人の女の子としてのボクの偽ってはいけない大切な想いを・・・



「ボクはッ!!」



そう、ボクは・・・



「朝倉純一君の事が大好きなんだっ!!!!!」



酷くしゃくれた声だったけど



綺麗な言葉ではなかったけれど



ボクは確かに



その言葉を口に出来たのだ



ボクの中の絶対に偽れない、ずっとずっと思い続けた大切な気持ち・・・



涙でボロボロになった顔を上げると、そこにはその言葉を心から言ってくれた友達が本当に綺麗な笑顔をボクに向けてくれていた。



ボクは唯、それだけの事がうれしくて。



本当にうれしくて。



久しぶりに声を上げて泣いた。



泣いている間、お嬢ちゃんはボクの肩をずっと抱いていてくれた。





続く

スズランさんの後書き
何だか久々ですね。今回の12話止まらない想い〜Thought to intersect(前編)ですが、
次の後編で一度、一区切りと言う形になると思います。まあ言いなれば「第一部・完」といった所でしょうか?
今回はそうですね、「お嬢とさくら」の姉妹的な関係を描いてみました。
お互い、風貌など相違点は多くある二人なので気が合うというのは間違いないと踏んでいて、書いてみました。
ですが、やはりこの二人を並べてみると改めて気が付かされるのですが、やはり「友達」というより、「友達5割増しな姉妹」、
まあ異常に仲のいい「従兄弟」といった感じなんですよね。
みててなんだが温かい気持ちになる、書いてる自分がいうにも少々おかしいのですが、そんな気持ちになるんですよね。
私的にもこのふたりをセットで描写するのは、とても好きですね。

後他にはそうですね、朝倉のさくらを見る心境に若干の変化が見られたことですね。
これに意味はあるかと聞かれれば、まああるにはあるのですが・・・
次回、死神と魔法使いの互いの秘密を暴露し、彼らの間に「隠しごと」がなくなります。
そして、決意を帯びた「魔法使い」はその決意と共に思い人の下へ走り出す事になるでしょう・・・
気持ち、今年中に終わらせる予定です。まあ一応この「つきと桜」は私の処女作であり、この先二度と書く事のないであろう長編ですので
と言うか私のSS道はこの作品のみかも知れないのだが・・・それなら自分で挿絵でも書いてみるかな?
いや無理だな。誰かに頼むというのもアリやも解らんが、私自身、そんなに完成された物書きじゃないからそれもないな。



                                            
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