D.C.P.S〜ダ・カーポ プラスシチュエーション〜                     作者 スズラン〜幸福の再来〜


                                                       キャスト
                                                       主人公     朝倉 純一
                                                       メインヒロイン 霧羽 香澄
                                                       サブキャラ    名無しの少女
                                                                  芳乃 さくら
                                                                  霧羽 明日美




霧羽香澄After story月と桜に込めた願い〜悲シキ恋ノ詩




第八話 霧羽明日美の帰郷(中編)


ことりSIDE


三月二十六日PM4:08


風見学園校内


「あっ、そう言えば」

私はさっき廊下で途方にくれていた女の子の先頭を歩き思い立ったように振り返って言った。

「お互い自己紹介がまだでしたね」

その子は驚いたように目を丸めてオドオドとし始めました。歳は私と同じ或いはそれより下でしょうか?
ちょっと気弱そうなオロオロした表情と、綺麗に短くカットされた髪の毛が特徴的です。
私が話し掛けると逐一、いいリアクションを取ってくれるので見てて飽きない子です。

(というより、なんだか可愛い)

「私はさっきも名前は出したと思うけど、白河ことり今年からは本校の一年生って事になるのかな?貴方は?」

「え?は、ハイ。え、えーと」

目を回すように彼女は返答に戸惑う。そんな彼女を見て私はもし自分ににこんな妹が居たら毎日が楽しいだろうなあ、と思った。

「私は今年からこの風見学園の本校の一年生として編入する事になった霧羽明日美といいます」

霧羽その苗字には確かに聞き覚えがありました。確か、それはさっきお姉ちゃんが口にした名前で

「霧羽?なら貴方が」

「え?私のこと知っているんですか?」



・・・・・・



・・・・・・



・・・・・・



さっきお姉ちゃんに話してもらった事を明日美さんに大まか話しました。

「へえ、そうだったんですか」

「そうだよ!だから新学期から私と同じクラスだよ♪宜しくね明日美ちゃん」

私は明日美ちゃんに手を出して握手を求めると彼女は戸惑いながらも私の手を握ってくれた。

「は、ハイ宜しくお願いします。えーと、白河さん」

「'ことり'」

「え?」

「そう呼んでください、私達もう友達でしょ?」

明日美ちゃんはびっくりしながらもちょっと恥ずかしそうに顔を赤らめて私の名を口にしてくれました。

「じゃあ、ことりさん」

うーん、予想はしていましたがやはり呼び捨てでは呼んでくれませんか。

「もう、'さん'付けなんてしなくていいのに」

「すみません、これ以上は性分なので」

うつむき加減に彼女は言う。結構、人見知りの激しい子なのかも。

「ま、いいんだけどね。で、生物準備室に行きたいんだったよね?」

「ハイ」

「ならそのこの階段を上がって右の一番奥にある煤けた感じの部屋がそうです」

明日美ちゃんは昨日わざわざ電話でお姉ちゃんに呼び出されて今日、学園に来たらしいです。
本当ならこのまま明日美ちゃんに付いて行きたいのが本心なのですが、さっきのお姉ちゃんの態度から言って、
多分二人きりで話したい事もあるのでしょう。私は早々と退散しようとしましょう。

「わざわざ、スミマセンでした」

そう言うと明日美ちゃんは深々と頭を下げました。その姿がちょっと可笑しくて私は笑いをこらえて

「いえいえ、いいんですよ。じゃあ、今度は新学期に逢おうね」

「ハ、ハイ」

「それじゃあ、またね」

そう言うと私は明日美ちゃんに元気に手を振って別れを告げると夕暮れの校舎を後にしました。





明日美SIDE


生物準備室前


PM4:15


「はあ、ことりさんのお陰で何とかここに来る事が出来ましたね」

私は生物準備室の前で大きくため息をついた。何だか今日ここまで来るのに物凄く疲れてしまった。
まあ、その半分がことりさんのせいである事は言うまでのないですね。

初対面であんなに綺麗で気さくな人と出会ったのは初めてだった。
でも、同い年にしては嫌に子ども扱いされた感覚があるのは私の気のせいかな?

(それにしても・・・)

どうして私はこんな所へ呼び出されたのだろう。
転校の手続きも編入試験も済ますべきことは全て済ませたはずなのに、こうして呼び出された事に初めて疑問を感じた。

(っとと、そうでしたこんな所で悩んでいる暇はないんでした)

何せ指定された時間を過ぎているのだ、早くこの中へ入らないと。


コンコン____________________________________


「ハイ、どうぞ」

私が軽く扉をノックすると直に扉の向こうから良く通る女性の声が聞こえた。

「失礼します」


ガラガラ____________________________________


控えめに扉を開けるとまず癖のある薬品とコーヒーの香りがしました。
部屋を見回せば科学の実験で使いそうなビーカーや試験管などが誇りまみれに棚に多く並んでいて、
部屋の壁も幾分と汚らしいシミなどが付着している。ことりさんの言う通り随分と煤けた感じのする部屋。

(掃除とかしてないのでしょうか?)

「君が霧羽明日美さんだな?」

座椅子を回転させてその人は私のほうへ身体を向けた。
白衣の似合う綺麗な人で口元に加えているタバコを加えてえてなんだかフランクな印象を受ける。
この人がどうやら昨日の電話の主と考えて間違いないみたいです。

「悪かったね、ここまで来るのに苦労したでしょ?道も教えてなかったからね」

「えっと、まあ」

ニヤリとその人は悪戯っ子のような顔で私を見つめる。遅刻してきた事はそんなに怒っていない様です。ちょっと安心。

(でも、ここまでくるのに確かに苦労はしましたけど・・・)

「ま、そんな所に突っ立ってないで座んなさいな」

そう言って私に目の前の椅子し勧めました。私はそこへ戸惑いながらも座った。

「自己紹介が遅れたね、私は白河暦この学校の専任講師で新学期から君の担任になる。まあ、宜しく」

そういうと彼女はまだ半分も吸っていないタバコを灰皿に押し付けた。

「は、ハイ宜しくお願いします」

(あれ?でも白河って)

なにかの偶然でしょうか?白河さんじゃなかった、ことりさんと同じ苗字?

「ふ〜ん」

「え?」

気がつけば白河先生はは椅子に座った私の顔をマジマジと見つめていました。それも結構、接近して。私は思わず身を引いてしまいました。

「な、何か?」

「なるほどね」

何を納得したのかしばらくすると、白河先生は私からクスリと笑って顔を離してくれました。

(私の顔って、そんなに変な顔なのかな?)

これでも一応、私は女の子であるわけで自分の見栄えの事は多少は気になる。

「うーん、何処と無く香澄の面影はある。やっぱり姉妹だね」

「!?」

私の予想に反して白河先生の口からは予想だにしない人の名が飛び出した。

(今この人なんて?)

「驚いているようだね」

「どうしてお姉ちゃんの事・・・」

私の問いに暦先生はニヤリと口元に笑みを浮べた。

「実は三年前、付属でお前の姉である霧羽香澄の担任を受け持っていてな」

「そ、そうだったんですか!?」

「ああ、その妹が今年になって我が風見学園に来ると聞いたんで始業式まえにちょっと顔を見ときたくてな。
何、唯の興味本位で呼んだだけど深い意味はないよ」

「それで私がわざわざ呼び出された訳ですか」

それにしても驚きです、まさかこんな形でお姉ちゃんと関わりのある人と出会えるなんて。

「でも霧羽を、いや、明日美と呼ばせてもらおうよ。明日美を見ていると本当に香澄を思い出すよ。
性格のほうは幾分、君のほうが落ち着いているみたいだけどね」

白河先生は何か懐かしむようにとても優しい口調で話す。

(この人はこんな表情もできるんだ)

その深みのある大人な表情を素直に綺麗だと思った。それでいてこの人はすごくいい人だ。

「あの・・・」

そのとき、私の唇は自然と動いていた。

「何だ?」

「その当時の、白河先生が担任だったときのお姉ちゃんの話、聞かせてくれませんか?」

'私の知らなかったお姉ちゃんの事を知りたいんです'と付け加え質問したら白河先生は目を細め微笑み。

「ああ、構わないよ」

と、優しい声で答えてくれた。

「とにかく付属時代のアイツはクラスの核弾頭のような奴だったな」

「え?」

随分、破壊的な言葉が白河先生の口から飛び出したものだから私としては結構戸惑いました。
お姉ちゃんが言うに事欠いて'核弾頭'のようだった?一体何のことなんだろう?

「ほら、アイツって思った事を直に口にするタイプだろ?だから自分が気に入らないと思った事にはとことん突っかかって行ってな。
それでかなり多くの先生たちに'生意気'だと嫌われていたがな。だから先生たちの間では「歩く核弾頭」とまで呼ばせくらいだ。
その伝説の数々だが聞いていくか?」

「・・・・・・いえ、結構です」

「何だ、残念だな」

(お姉ちゃん、私にはそんな事一言も行ってなかったよね・・・・)

「まあそんな顔するな。後はそうだなアイツは口は悪いがクラスでは人気者だった。女子にも男子にも良く好かれていたよ。
周りの教師から煙たがられても、何だかんだ言われても同級生には誰にでも優しかった。何より勝気で絶対に嘘をつかない真っ直ぐな性格からか
皆に良く頼られていた。そういえばアイツ、当時の女子達の中でも飛び向けて顔と雰囲気は随分大人びてたから
男子からの評判も悪くなかったしそれなりにモテてたんじゃないかな?」

「へえ、そうだったんですか」

「それなりに責任感も強かったから私が強制的に学級委員にしてやったんだが、随分と噛み付かれてなあ」

「学級委員か、私にも自慢気に話してくれましたよ」

「ふーん、明日美には自分の良い所だけ話して聞かされていたようだな。
アイツは本当に器量も頭も悪くなかったからな、だからあんなに高飛車な性格だったのだろう。
頼むから明日美、お前はあんな風にならないでくれよ。あんな生徒は一生のうち一人受け持つだけで十分だ」

「あははっ♪ハイ大丈夫だと思います」

「じゃあ話を戻そうか。後、香澄の事といえばそうだな・・・そうそうアイツは本当におせっかいな奴でな、自分の事より友達のおせっかいばかり
焼いていた事がしばしばだった。本当は明日美の事もあったりで自分が一番誰かに甘えたいのに、
絶対に回りに自分の弱い所を周りに見せないように必死だった」

「・・・そう、ですか」

「クラスの連中は騙せても私の目は騙せんよ。でも香澄に明日美っていう病弱な妹がいる事は私も香澄から直接聞いていたから、
知っていたから言える事だ。そういう不器用な生き方しか出来ないアイツはバカ正直だったけど私はそんなアイツが大好きだったよ」

「・・・そうなんだ」

私はその話を聞いて自然と目頭が熱くなるのを感じた。うれしい、本当にうれしい。
私はお姉ちゃんが生きていた頃を知っていた人がこの人で良かったと心からそう思った。

こんな風にお姉ちゃんがこの世を去って三年間の時間が流れようともこうして、胸が熱くなるのを感じられるのは
私の中でまだお姉ちゃんが生きていると言う証拠だ。それを改めて実感できた事もまたうれしい。

「・・・あの事故から三年か」

「・・・・・・」

暫らく沈黙が続いた後、白河先生は徐に胸のポケットからタバコを取り出し火をつけた。

「全く時が経つのは早いもんだな」

一言、呟いた後に不味そうに、タバコの煙を吐いた白河先生の顔は随分と儚げだった・・・





続く

スズランさんの後書き
読み直してみるとかなり無理な話の展開だなと思っています。
うーん、どうにかして香澄の存在を引き出そうとした結果このようなアイデアが浮かんだ事をよく覚えています。
この作品の短所であるのがメインヒロインである「霧羽香澄」がまるで登場しない所にあるんですよね。
部分部分みればなんか、ことりがヒロインっぽいし・・・どうにかしないといかんとしみじみ感じさせられた話でしたね。
うーん、課題はまだまだ多しですね・・・

管理人感想
ことりと明日美のコンビは自分もいつか書いてみたいな〜と思いますね。
暦から語られる香澄は死んだのが実に残念に思えるような人物ですね。
前回の掲載からだけではなく、貰ってからも大分時間が経ってしまってました。
この場を借りてお詫びします。それでは次回明日美の帰還後編で。



                                            
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