D.C.外伝『ハルと呼ばれる少年』第二章
「恋心、弟想い、音夢」C

ハル「これで、いいんだよな」

俺は兄貴のほうに行く音夢姉ちゃんを見送った。
音夢姉ちゃんは兄貴と一緒のほうがいい。俺とは、姉弟関係でいいんです。
そう、これが男なんだ、男なんだ、男なんだぁぁぁぁ!!!!!

ハル「・・・」

これからどうしようかな。まだ、誕生会が終わるまで時間があるし。




結局あの後、他の人たちとは普通に話したが、内心、俺は音夢姉ちゃんのことばかり考えていた。

家に着いても、俺は音夢姉ちゃんがちゃんと兄貴とより親交が深まったかと心配していた。

誕生日会は楽しかったけど・・・。




しかし、まだまだ夏休み真っ盛りだ。家に居たって何も起こらない。

美春は朝から音夢姉ちゃんとどっか行っちゃったし、今からさくらかことりさんのとこでも行ってこよっかなぁ。

でもなぁ・・・何も用はないし。

用があるといったら・・・音夢姉ちゃん。




音夢「あれ? ハルちゃん」
ハル「こんにちは」

俺は朝倉家に行った。今、用があるといえば音夢姉ちゃんと兄貴のことだ。
音夢姉ちゃんは美春とどこかに行っていた。何をしていたかはあまり深入りしなくてもいいだろう。

音夢「ねえ、美春。先に家の中に入ってて」
美春「はぁ〜い」

美春は朝倉家に入った。
こうして玄関の前にいるのは俺と音夢姉ちゃんだけだ。

ハル「ねえ、姉ちゃん。兄貴に言ったんでしょ」
音夢「うん」
ハル「で、どうだった?」

音夢姉ちゃんの頬が段々紅潮してきた。
兄貴との仲がより一層深まったんだろう。

音夢「兄さん、誰よりも私が大切な存在だって。さくらちゃんよりも、白河さんよりも」
ハル「ってことは、音夢姉ちゃんと兄貴は形からしたら恋人関係になったのですか?」
音夢「まあ、形からならそうなるかな」

完全に音夢姉ちゃんは照れていた。
こんなことをさくらが知ったら、間違いなく積極的に兄貴にまた猛アタックするだろうな。

ハル「そっか、姉ちゃんと兄貴は恋人になったのかぁ・・・」
音夢「ハルちゃん、もしかして嫉妬してる?」
ハル「いえ、全然」

この時の俺は、間違いなく嫉妬していた。
優しくて、俺をかわいがってくれた音夢姉ちゃんを兄貴が取ったからだ。
でも、それがどうした。俺には美春がいるじゃないか。
あいつは、親友同然だ。遊び仲間とでも言おうか、相談相手とでもいうのか。
まぁ、でも仲のいい音夢姉ちゃんと美春が互いに嫉妬しなくてよかった。そう思えばいい。
もう、これで音夢姉ちゃんに用はなくなったな。

音夢「ねえ、ハルちゃん」
ハル「何です?」
音夢「ハルちゃんのことは私も好きだよ。ハルちゃんは私の弟だもん。形だけの弟だけど、私にとっては実の弟同然だよ。
ハルちゃん、私が言うのもどうかと思うけど、貴方には好まれている人が居るの。
それだけは忘れないで。そして、その人の好意に応えてあげてね」
ハル「え・・・」

俺に・・・好意を抱いた人?
それって、やっぱり・・・

ハル「もしかして・・・」
音夢「そう、美春よ」
ハル「美春!?」

やっぱりあいつ、俺を好きだったのか。
そういえば、昨日、好きな人について言われたしな。

音夢「今日、一緒に買い物して美春が言ってたんだよ。
美春と互いに好きな人を言い合ったら、美春は兄さんよりハルちゃんのことが好きだって。
だから今夜自宅に帰ったら、美春に優しく接してね」
ハル「え・・・あぁ・・・はい」

俺は咄嗟のことなので、何を言えばいいのかわからなかった。
え、美春が俺のことを?
でも、俺はことりさんのことも気になるし・・・。
俺はどうすればいいんだろう。
それに、今思うとことりさんは兄貴のことが好きなのに、俺は音夢姉ちゃんと結ばせてしまった。
この代償はどうすればいいのだろう。
このまま音夢姉ちゃんと兄貴が結ばれてしまったら、ことりさんは1人ぼっち・・・。
いや、ことりさんだけではない。さくらはどうなる?
それは・・・俺の責任なのかもしれない。
でも、俺だって決して好きな人が1人と決まったわけではない。
美春のことも確かに好きだけど、ことりさんも美春や音夢姉ちゃんと同じくらい好きなんだ。
・・・こういう優柔不断な俺は、嫌いだ。




俺はそう思いつつ、その日は朝倉家で晩飯を食い、家に着いた。

ハル「なあ、美春」
美春「うん?」
ハル「美春は好きな人はいるか?」
美春「???」

あいつ、あたふたと混乱している。
つーか、前も同じ質問したな。
しかし、いつにも増して頬が熱くなっているのがわかる。

ハル「そんなに照れる質問か?」
美春「照れるよ〜! 好きな人から質問されたら」
ハル「そうか。え、好きな人から?」
美春「・・・うん」

そうだったな、美春は俺のことが好きなんだった。
っていうより、音夢姉ちゃんと美春、今日の買い物で何の話をしてたんだ?
もしかして俺を話題にしたのか。

ハル「そ、そうか」
美春「・・・ねぇ」
ハル「じゃ、じゃあ、おやすみ」
美春「待って!」

俺は自分で照れてしまい、即座に自分の部屋に戻ることにした。
だが、美春は俺の腕を掴んだ。まるで前の日のように。

美春「今日、私の部屋で寝ない?」
ハル「え? お前の・・・部屋で?」
美春「うん・・・」

すっかりあの健気な美春はどこかに行ってしまってて、大人の女性のような素振りをその時の美春は俺に見せていた。
俺もその誘いに応えた。

ハル「ああ。今日だけはな」

しかし、俺は甘かった。
部屋に入ったところまではよかった。だが、いざ部屋のドアが閉まると美春がバナナの歴史について語りだした。
それも、スーパーのところでその歴史の本を見つけ、それをテキストがわりにして俺に教えていた。
当たり前だが、興味の無い俺の脳には全く記憶されなかった。
っていうより、美春が俺にバナナについて教えていくほど、眠気がどんどん近づいてくる。
結局、美春先生のレッスンは翌朝の5時まで続いた。
時折俺が眠ると、美春は俺を激しくゆすって起こす。
そのため、翌日は美春と揃って昼の1時まで眠ってしまった。




音夢姉ちゃんはその日からより兄貴との親交が深まった。

だが、俺はこれでよかったのだろうかと今更に思う。

それは音夢姉ちゃんと兄貴が恋人に近い関係になるほど喜ぶ人も居れば、嫉妬する人もいる。

俺と美春は兄貴と音夢姉ちゃんが仲良くなっても、愛し愛されていたって何とも思わない。

だがさくら、ことりさん、その他の兄貴に心を射止められた女性はどう思うだろう。

俺が余計なことをしたせいで・・・兄貴の周りの人たちの互いの仲が悪化するだろう。

俺はあのまま、音夢姉ちゃんの言うことを無視しておくべきだったのだろうか。

でも、音夢姉ちゃんの話を無視するのは親友としてやってはならないこと。

・・・。

それぞれの俺の知らない兄貴をめぐる確執はどうやらまだまだ続きそうだ。







あとがき
海です。
第二章が終わりました。
・・・何か、オチがよくないですね。
音夢はこれでいい。さくらはどうなる? ことりはどうなる?
こんな声が出ると思います。
でも、彼女達なりの答えがきっとあるはずです。
海は、その答えが見つかりません・・・;;

管理人から
なんかS.S.を彷彿とさせますね。恋が叶わなかった人はどうなるのか?そして、ハルと美春は?などなど。
順当に純一と音夢が結ばれての音夢編ラストでした。
次回からさくら編になります。
今回ちょっと掲載に時間が掛かり楽しみにしておられた方、海さんに迷惑をお掛けしました。
次回こそはまとめて掲載して行くつもりです。
それでは〜



                                         
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