やはり、さくらとことりさんが居て、兄貴も好きな人が誰なのかわからないのだな。
確かに、彼女達はみんな綺麗だ。普通の男子生徒はみんな彼女達に首ったけだしな。
しかし兄貴の場合、その日によってさくらが好きになったりことりさんが好きになったりするからな。
まぁ、兄貴の気持ちも分からなくもないが・・・。
音夢「でも、兄さんに告白したら、ハルちゃんが・・・」
ハル「俺が、なんです?」
音夢「ハルちゃんは、兄さんと同じくらい好きだから」
俺は家に着き、それ以来ずっと音夢姉ちゃんのことを考えていた。
兄貴と音夢姉ちゃんをどうか結ばせたい。
だが、それだとさくらやことりさんにどんな影響が出るのだろうか。
そのうえ、音夢姉ちゃんはまだ躊躇っているし・・・。
俺をここで指名されたら、間違いなく断るわけにもいかない。
本当なら断りたいが、音夢姉ちゃんを悲しませるわけにもいかない。
それに、もし音夢姉ちゃんの気持ちを快く受け取ったら、美春がどうなるかわからない。
俺は迷った・・・。
美春「ハルちゃん、家に着いてからずっとぼぉ〜としてるけど、どうしたの?」
ハル「なぁ、美春」
美春「うん?」
ハル「お前、好きな人はいるか?」
美春「えええ???」
美春は恥ずかしそうに、俺から視線を逸らし顔を真っ赤にする。
美春「そんな・・・唐突に言われても・・・」
ハル「で、いるのか?」
美春「・・・うん」
やはりこの年頃の女の子は好きな人がいるんだな。
ハル「それは誰だ? 兄貴か?」
ここで兄貴を言ってしまったら、音夢姉ちゃんをどうするかわかるんだよな。
もちろん、その時は俺が音夢姉ちゃんを取る。
美春「もちろん朝倉先輩もそうだけど、ハルちゃんのことが好き、かな」
・・・え、俺。
ハル「お前、どっちが好きなんだ。俺か? 兄貴か?」
別に兄貴と張り合うわけではないのだが、美春の答え次第で俺の今後の音夢姉ちゃんに対する行動が変わるのは確かだ。
美春は『ええと、う〜んと』と悩んでいた。
美春には頭を混乱させる問題だったか。
美春「それは・・・ハルちゃん」
嘘ぉぉぉぉぉぉ!!!!!
途端に俺は顔が熱くなりだした。
ハル「お前、じょ、冗談じゃないよな」
美春「冗談なんかじゃないよ」
ど、どうすればいいんだ。
ハル「そうか、じゃ、俺は部屋に戻ってる」
俺が美春の部屋から出ようとした時、
美春「待って!」
美春が俺の腕を掴み、止めた。
美春「ハルちゃんは誰が好きなの?」
俺にとって、痛い言葉が突きつけられた。
俺は美春は好きだけど、音夢姉ちゃんのことも、ことりさんのことも好きなんだよな・・・。
単に、ことりさんはその美しさに惹かれ、音夢姉ちゃんは俺の姉として、美春はかわいいんだよな。
よくよく考えて、俺も優柔不断だな。こんなことじゃ、いつか嫌われるな。
ハル「誰って・・・」
俺は困った。今は誰を好きになればいいなんてわからない。
美春のことは好きだ。だが、それと同じくらいに好きな人が2人いる。
ハル「俺は、まだ見つからないんだ。誰よりも好きな人のことが」
美春「そうなんだ・・・」
ハル「おやすみ」
俺は美春の言うのを聞くことなく、部屋を出た。
俺はまだ見つからないんだ。美春のことが好きなのか。音夢姉ちゃんのことが好きなのか。はたまたことりさんのことが好きなのか。
早く決めておかないと、取り返しのつかないことになりそうだ。
それに口頭で『美春と音夢姉ちゃんとことりさんが好きなんだ〜』なんて言えるわけがない。
クラスメートが『贅沢な奴だ』とか言われそうな気がして・・・。
それに美春、音夢姉ちゃん、ことりさんの3人のお互いの関係が悪くなりそうだ。特に美春と音夢姉ちゃんは・・・。
翌朝
そうか。確か、今日は、
音夢『明日、一緒にどこか行こうか?』
音夢姉ちゃんと海に行くんだっけ。
だが、美春と兄貴はそれには行かない。
行くのは、俺と音夢姉ちゃんだけだ。
でも、なぜだろう。
音夢姉ちゃんは兄貴のことが好きなはずなのに・・・
なんで、美春にくっつかれてばかりのこの俺を誘ったんだろう?
そういえば、2年前、音夢姉ちゃんとさくらとの間で、兄貴をめぐっての内戦があったっけな。
俺は記憶を戻したばかりだったけど、あの2人は互いに火花を散らしてたっけ。
それが、また起こったというのか。
俺は音夢姉ちゃんの家に行った。
もう夏休みに入ったことだし、もしかして海に行って海水浴をするつもりだろう。
しかし、俺は何も持ってきていない。
音夢「さ、行こ」
やはり音夢姉ちゃんは水着を入れたバッグを持っていた。
しまった、俺、水着持ってきてねぇ。
ハル「あの、海行く前にちょっと家に戻ってもいいですか?」
音夢「もう、しょうがないなぁ」
音夢姉ちゃんによると、兄貴はさくらとどこかに行っているらしい。
長時間のデートだとか言っていたので、それを機に音夢姉ちゃんは俺を誘った。
だが、俺が美春と一緒に行こうと言っても、音夢姉ちゃんは聞く耳を持ってくれなかった。
兄貴はさくらと一緒、音夢姉ちゃんは俺と一緒。なら、美春は1人ぼっちじゃないのか。
まあ、他の人たちにも1人ぼっちになっている人がいるかもしれないけど、みんなはあることに熱中しているに違いない。
例えば、環先輩は弓矢の練習、ななこ先輩は漫画の連載、アリスにはあのじいさんと旅行といった感じで。
しかし、ただバナナが好きなだけの美春では熱中するものがないと思う。せいぜいバナナ勉強か。
美春も誘いたかったが、それは音夢姉ちゃんが俺に何か言いたいからだろう。誰にも邪魔されたくないところで。
俺は、せっかく音夢姉ちゃんと一緒だっていうのに、美春のことしか考えていない。俺って、最悪だな。
俺は家に戻ったのだが、美春がどこにも居ないことにきづいた。
あいつ、どこに行ったんだ?
また、事故とかに巻き込まれなきゃいいが・・・。
海に移動している間
ハル「音夢姉ちゃんは兄貴のこと、好きなんだよね?」
俺は同じ質問だが、音夢姉ちゃんに言った。
音夢姉ちゃんはその質問に快く答えた。
音夢「うん、もちろんだよ」
ハル「じゃあ、何でさくらに兄貴を渡したの? あの時ならまだ取り返せるチャンスがあったかもしれないんだよ」
音夢「うん、でも・・・」
なぜかわからないが、音夢姉ちゃんは1つも悲しんだ表情をしていなかった。
音夢「ハルちゃんとの時間も、大事でしょ」
ってことは、本当に音夢姉ちゃんは俺のこと・・・。
ハル「俺も音夢姉ちゃんの時間は大切だけど、音夢姉ちゃんはいいの?
兄貴との時間のほうが俺との時間より大切じゃないの?」
音夢「もちろん、大切だよ。でも、ハルちゃんとの時間のほうがあまりないでしょ。
だから、今日くらいはずっとハルちゃんと一緒に居ようかなと思って」
まあ、兄貴と音夢姉ちゃんはいつも家に2人で暮らしているからな。
俺との時間って大体は学校で美春と3人で保健室で飯を食ったり、休日に美春と一緒にでかけたり・・・。
確かに、こうして2人きりでの音夢姉ちゃんとの接触があまりないかもしれない。
でも、夏休みになれば音夢姉ちゃんも俺との時間が増えるんじゃないか。
・・・。
いや、それはない。風見学園にだって部活動くらいはある。
もし、怪我した部活の部員が居たら?
間違いなく保健室で手当てするだろう。その怪我した部員の手当てとかで音夢姉ちゃんが風見学園に行くかもしれない。
そう考えれば、1年中、俺との時間はあまりないな。
ハル「それじゃ、この休日を楽しみますか!」
音夢「うん!」
そういうことで、今日は音夢姉ちゃんとこのホリデーを楽しむことにした。
ハル「あっつ〜。やっと海に着きましたね」
音夢「ほんと〜、日陰がないから暑いね」
俺たちは日陰が全くない道路を歩いていた。
そして目的地の海に到着した。
ハル「ん?」
俺はその海をよく見てみた。
見覚えのある人たちが1,2,3・・・・・・。
って、ありゃ、兄貴達か!? しかもバーベキューなんかしているし。
なんでまたこんなところに!
ハル「あの、兄貴たち、ここに居るんですが・・・」
音夢「あ、ほんとだね」
そしてその横に居るのは、
ハル「さくらがいる。美春がいる。ことりさんがいる。萌さんがいる。眞子先輩がいる・・・。
ってか、全員集合じゃん!」
音夢「ねえ、ハルちゃん。今日が何の日かわかる?」
ハル「何の日か?」
え、単に平日だし、7月○日・・・あああ!!
ハル「俺の誕生日!」
音夢「ピンポ〜ン!」
そうか、だから音夢姉ちゃんは俺のために海に連れて行ってくれたんだ。
しかもみんなで俺の誕生日会をして。
嬉しい、嬉しいよ! 涙が出そうだ。
ハル「もしかして、それを知って、兄貴たちとミーティングを?」
音夢「うん。とはいっても、ほとんどは兄さんが言ってくれて、私は美春にしか言ってないんだけどね」
何て俺は幸せ者なんだろう。いい友を持つのはいいことだなぁ。
だが、それも束の間だった。
杉並「よう、天枷弟」
ハル「俺は弟ではありません。兄です、あ・に!」
杉並先輩がひっそりと現れた。
しかも何かやらかしているらしい。
っていうより、よりによって杉並先輩に俺の天枷家の身分が『弟』だってことが知られていたとは・・・。
つーか、外見でも見てのわかるとおり、姉と弟はどことなくおかしいだろ。
一同「お誕生日おめでとう!!」
感動だ、みんなからご祝福の言葉を頂くとは。
俺なんかの誕生日に、みんなが祝ってくれるなんて。
と、ここで兄貴が俺に聞く。
純一「春巳。お前、今日が何の日か知ってるか?」
ハル「ええ、俺の誕生日でしょ?」
純一「ちっちっち、実はそれだけじゃないだよな」
ハル「え?」
俺の記憶は完全に戻ったため、何もかもが覚えているのだが、今日は俺の誕生日というくらいしかしらない。
ハル「何の日です?」
純一「それはな・・・」
兄貴は俺の耳にこそこそ言った。
ハル「はは〜ん、音夢姉ちゃん、貴方そんなことをしていたんですねェ」
音夢「え、ええ??」
杉並「朝倉妹も案外大胆なことをするな」
音夢「も、もしかして・・・」
ハル・純一・杉並「ふっふっふ・・・」
俺と兄貴、そして割って入った杉並先輩は不気味な笑い声を出す。
美春も兄貴の言った意味がわかったらしく、頬を赤らめている。
音夢「もう、兄さん! あの話は忘れてくださいって言ったでしょ」
純一「あ、そうだったっけか?」
音夢姉ちゃんは激しく兄貴と俺、杉並先輩に怒鳴った。
だが、やはり恥ずかしさは顔に出ている。
杉並「あの1件は初音島の中での大スクープだったからな」
要は、去年と同じようにこの海に兄貴達は来た。
そこで兄貴と音夢姉ちゃん、美春、眞子、杉並先輩が来て海で遊んだのだが、しばらくして、音夢姉ちゃんの水着のブラが取れたという大スクープ(杉並理論)が起こった。
俺も見たかったなぁと内心、俺は思った。
眞子「もう、変態どもはほっといて、向こうで遊びましょ」
音夢「そうね。兄さん、私たちはあっちで遊んでますから」
純一「え、お、おい、ちょっと」
ハル「あ〜、別に期待なんて全くしていませんよ〜」
あぁ、俺の誕生日会がぁ・・・。
昼飯の時間も終わって、午後の遊びになったのだがそこで、
音夢「ハルちゃん、ちょっといいかな?」
ハル「あ、はい」
音夢姉ちゃんは誰にも見られないように、俺を木の陰に連れた。
ハル「こんなところで、何をするつもりですか?」
音夢「ハルちゃん、私、ハルちゃんのこと好きだけど、今のうちに兄さんが誰にも取られないよう私の思い、今から告白してみる」
ハル「いよいよ言うんですね、兄貴に」
いいんです、兄貴もそれを望んでいることでしょう。
今思うと、兄貴の周りの女性はたくさんいる。音夢姉ちゃんの存在が薄れかかってきているのかもしれない。
そうならないように今のうちに思っていることは言ったほうがいい。
音夢「ハルちゃん、ハルちゃんは誰が一番好きなの?」
だが、まだ音夢姉ちゃんは俺のことを想っているのか、俺に改めて好きな人のことを問う。
俺は、未だ答えがわからなかった。
ハル「俺の心配よりも、今は兄貴が誰にも取られないことが最優先なんじゃないですか?」
音夢「うん。でもハルちゃんはいいの?」
ハル「そんな、音夢姉ちゃんは兄貴のことが好きなんでしょ?」
音夢「うん。でもハルちゃんのことも・・・」
ハル「・・・行ってくださいよ」
音夢姉ちゃんが俺に何か言いたそうだったが、俺は
俺は兄貴のところへ音夢姉ちゃんを行かせようとした。
音夢「え?」
ハル「兄貴と音夢姉ちゃんは昔から仲がよかったんだ。それに、血が繋がってないのなら、恋人になったっていいじゃないんですか。
俺なんかを選ぶより自分が本当に好きな人を選んでください」
貴方が俺を好きになるなんて、誰も望んではいない。誰もだ。少なくとも、この話を読んでいる読者がそうだろう。
本来のD.C.は音夢姉ちゃんが兄貴に惚れているというのが正しいのだ。
全くオリジナルな俺が音夢姉ちゃんを取ってはいけない。決してそれはいけないこと。
みんな人それぞれ、好きな人はいる。
でも兄貴と音夢姉ちゃんのような元々お互いがいい関係の中に、俺が割り込んだら、順調だった良い関係が悪くなる。
だから、俺が退く。
音夢「う、うん」
そして結果、音夢姉ちゃんは兄貴のところへ行った。
続く
あとがき
海です♪
何か、ハルがD.C.について語っています。
これはうちのクラスの数ヶ月ごとにあるD.C.定期集会の結果なんです(定期ではありませんが^^;)
なので、早速こちらで使いました。
しかし、各キャラファンの友達は納得いきませんでしたね。
その憂さ晴らしはみんなは勉強で晴らしました。
とはいっても、みんなのテストの結果はそんな良いものとはいえませんでした^^;
管理人から
杉並が杉並っぽくて良かったです。S.S.の杉並なんて終わってますしね・・・
身を引くハルはいいんですが、これがアイシアが気に食わないわけなんですよね・・・
と話がズレましたが、誕生日を祝うSSはいいですよね
みんなが出て来るSSは賑やかで本当にいいです
次回で音夢編ラストになります
近いうちにアップさせる予定です