D.C.外伝『ハルと呼ばれる少年』第二章
「恋心、弟想い、音夢」@

あぁ、何か寝ても疲れがとれないな。
そうだった、昨日は音夢姉ちゃんと美春の買い物につきあわされたうえに、音夢姉ちゃんと美春の荷物を持たされたんだった。



昨日の買い物での出来事。

美春「あぁ!音夢先輩、この服とてもかわいくて音夢先輩に似合うと思いますよ」
音夢「えぇ、そうかな?」
美春「この店に入りましょう」
音夢「そうね」
ハル「あ?」



美春「あぁ〜、いい店でしたねぇ〜」
音夢「素敵な服がいっぱいあって、たくさん買っちゃったよ」
美春「私もですぅ〜」
ハル「・・・」
美春「次はこのオルゴール屋さんに行きましょう」
音夢「うん」
ハル「・・・え」



音夢「いい音色だったなぁ」
美春「和みますね〜」
音夢「そうだ、晩ご飯を買いに行かなきゃ」
美春「そうですね、私もいっぱい買っちゃおう」
ハル「・・・え?」



美春「随分買ったわりには、インスタント食品ばかりですね」
音夢「そういう美春は、バナナばかりじゃない」
美春「何を言っているんですか、これでいろんな料理を作るんですよ」
ハル「・・・お、おい」
音夢・美春「え?」
ハル「見てわからんのか」

俺は美春と音夢姉ちゃんの買った服7着とオルゴール3つ、スーパーで買ったインスタントラーメン8個にバナナ6本、さらにはバナナヨーグルト3セット(3個入り)とバナナクレープ3個を持たせられていた。
さすがにこんなに持たせられると俺の両腕が悲鳴をあげる。
2人とも、全く買い物に夢中で気づいていない。
・・・酷い、酷すぎる(泣)

美春「あはは、ごめんね。いっぱい持たせちゃって」
ハル「限度がありすぎだろ」
音夢「でもハルちゃんは力持ちなんだから、ね」
ハル「いつから俺は力持ちだって言いました?」

俺がそう言った瞬間、2人は俺に刃向かった。

音夢・美春「だーめ!! か弱い女の子2人に重い物を持たせる気なの!!」
ハル「え・・・」

元々口論が弱い俺は、美春との口論なら何とかなるが、音夢姉ちゃんとの口論となると全く勝てない。
それに、音夢姉ちゃんは次第に口論が激しすぎると嘘泣きを仕掛けてくる。嘘だと思っていてもどうも同情してしまう。
今だって、音夢姉ちゃんが嘘泣きをしたら、こんな街中のうえ、横には美春がいる。
音夢姉ちゃんが泣き、美春が俺を冷たい目で見て、そして人々も俺を冷ややかな視線で送るだろう。
俺の悪い噂が広まっちまうのはまちがいないかもしれない。
口論が激しくならないうちにこっちが白旗あげるか。

ハル「・・・わかりました;;」



そうか、それから俺はその買い物疲れで朝倉家で寝てしまって、結局1日経ったんだった。

美春「おはようございます、先輩」
純一「おう、おはよう」

廊下では美春と兄貴が挨拶を交わしていた。
もうそんな時間か。そろそろ起きるか。
それによくよく考えてみると、音夢姉ちゃんと美春と買い物ができたんだ。
女の子2人と一緒に外出なんて、俺はなんてぜいたくなのだろう。
ある意味、喜んだほうがよかったのかもしれない。

ハル「疲れはとれなかったけど、随分俺って寝たよな」

俺は部屋を出て、階段を下りた。が、しかし、

ハル「うわ、わぁぁぁ!!!」

俺は床に置いてあったバナナの皮を踏み、滑ってしまい、階段をまっ逆さまに頭から落ちてしまい、そのまま1階に落ちた。

ドン!!

純一「ななな、何だ?」
音夢「ちょっと、どうしたの? は、ハルちゃん!?」
ハル「(ガクッ)」

完全に俺は気絶した。

美春「ん?」

こんなことするなんて、どう考えても1人しかいない。

音夢「何やってるの、美春! これでハルちゃんがまた記憶喪失になったらどうするの」
美春「は・・・ハルちゃん・・・。そうですね、また私のせいで記憶喪失になっちゃったら・・・」

美春は泣いているのだろうか。涙声になっていた。

純一「気をつけろよ、美春。人間の頭はそれほど頑丈じゃないんだからな。外見が何も問題なくても、内部に問題があったらどうする?」
美春「う、うぅ・・・」

この辺りまで俺は気絶をしていながら、脳裏で聞こえていたが、すぐに完全に意識を失った。



俺が起きた時には、夕方になっていた。
俺はベッドに運ばれていた。
って、ここって音夢姉ちゃんの部屋じゃん。
あのかわいい猫のクッションもあるし、それに、どことなく女の子らしい部屋の雰囲気・・・。
じゃあ、俺は音夢姉ちゃんのベッドで寝ていたってわけか。
どことなく、この優しい感じがしていたな。

ガラガラ。

ドアが開いた。

音夢「あ、気がついた」
ハル「ええ、起きてますから」
音夢「大丈夫? ちゃんと私のこと覚えてる?」
ハル「っていうより、俺がまた記憶喪失にでもなってると思ってるんすか?」
音夢「いや、そんな感じがしたかなぁって思ってね。ははは・・・」

今思うと、音夢姉ちゃんとの再会から短時間でもうこんなに打ち解けるなんて、すげェスピードだな。
でも俺がそう思った時に、音夢姉ちゃんは俺をじっと見つめていた。

ハル「な、何ですか?」
音夢「ううん、やっぱりハルちゃんはあの幼い頃のハルちゃんじゃないなぁって思ってたの。
あの時のハルちゃんは私に向かって敬語なんて喋らなかったもの」
ハル「あ・・・」

俺は自分の唇を手で隠した。
んー、どうも数年という月日があるだけに、音夢姉ちゃんにはタメ口では言えないな。
ガキの頃とは全く何も考えてなかったけど、今は音夢姉ちゃんのことを何か、意識し始めているのだろうか。

音夢「でも、やっぱり小学生の頃と比べたら、随分大きくなったね。兄さんと同じくらいかな」
ハル「いや、兄貴には勝てないと思います」

男性なんだから、身長はもの凄い成長するよな。
俺の場合、中学生からいきなり1年で10cmも伸びたっけ?
音夢姉ちゃんが驚くのも無理はないよな。そう考えると、再会した時はよく俺だってわかったよな。
もしかして、それって、顔だちがまだまだガキっぽいってこと?

ハル「俺もまだまだ物事の考え方とかがガキですよね」
音夢「そうかな、ハルちゃんは兄さんと同じくらい大人になったと思うよ」

『兄貴と同じくらい』ってとこが微妙だな。
あ、そういえば、今日は・・・終業式だ!

ハル「あの、音夢姉ちゃん。俺の状態ってどうなんですか?」
音夢「今日は安静ね。学校は無理よ」
ハル「えええ!!??」

そんな、俺の成績がどうなっているのかが今すぐ知りたいのに。
そのうえ、俺が休みってことで通知表を美春が預けるんじゃないのか。
いかんいかん、美春なんかに見られたら、どう嘲笑されるか・・・。
俺はそう思った瞬間、顔面が蒼白になった。

音夢「私、今日はずっとハルちゃんの側に居るから」
ハル「俺って、そんなに重傷なんですか!?」
音夢「ぜ〜んぜん。でも、1週間の間にハルちゃんと一緒にいる時間ってあんまりないじゃない?
学校がある時も私はずっと保健室にいるだけだし、怪我しに保健室に来てもその傍らには美春が居て、それに土日もハルちゃんはいつも美春と一緒で・・・」
ハル「美春は・・・家族ですから」

もしかして音夢姉ちゃん、美春に嫉妬してる?
でも、音夢姉ちゃんは兄貴と一緒のほうが似合うんだ。昔から見ていた俺が言うんだから間違いない。

音夢「美春がいたっていい。でも、今日だけはハルちゃんと久しぶりに一緒の時間を過ごしたいの。
だからハルちゃん、私と一緒に・・・」

俺はさすがにこの雰囲気はまずいと思った。
俺はここで兄貴がさくらと結ばれたことを仮定していた。
さくらは兄貴がいる、美春には俺がいる、そうすると音夢姉ちゃんには何があるんだろう。
さくらも兄貴のことを恋愛感情持っているし、俺は関係ないにしても、悲しい音夢姉ちゃんを見ると辛くなるな。
だからといって、さくらも辛くなる。いや、辛い表情をした女性を見ると俺も辛くなる。
今の音夢姉ちゃんには誰が必要なんだろう。俺なのかな?

ハル「ちょっと待ってください。終業式があるんですよ。行かなきゃ欠席になるんですよ。
それに音夢姉ちゃんだって、学校行かなきゃ行けないでしょ?」
音夢「今日は元々休みだから学校もないし、家に居ても誰もいないの」

っていうより、学校に行ってくればいいのでは?
ま、それはそれとして、音夢姉ちゃんはこの家に1人で半日の間過ごすわけか。
確かに、それは暇だろうな。たいくつだろうし。
まるで俺の1日とは比べ物にならないほど差がついているな。
ちなみに俺の普段の1日は、朝から美春の騒がしい目覚し時計で起こされ、朝食はバナナヨーグルトにバナナジャム(美春作)をつけたパン2枚、学校に行き、学校でも色々と騒ぎが起こったり、帰りには商店街でバナナの食べ歩きに付きあわされ、家に着くも早速バナナのトークにされたりと俺までバナナ好きにさせられてしまいそうな一日だ。
最終的には俺は美春の付き人役にされている。
そのうえ、部屋は別々だが、よく美春にベッドを取られることがしばしば。おかげで俺は美春の部屋のベッドで寝るハメに。
しかしバナナだらけの中で寝ている環境の中なので、全く眠れない。
最近、体重を量ったら何と2kgも減っていた。

ハル「そうですね、もう何数年ぶりかの再会なんですし、今日は音夢姉ちゃんの側にいますよ」
音夢「本当は私がハルちゃんの側に居るって形なんだけどね」

音夢姉ちゃんは笑った。
やっぱり1人での生活は大変だったのだろう。看護学校でもおそらく、少しの間は1人で過ごしていたかもしれない。
っていうより、たまにはバナナな一日から離れたかったというのも1つの理由である。

ハル「音夢姉ちゃんもすっかり美人になりましたね。兄貴が羨ましいよ」
音夢「そんなぁ。ハルちゃんだってハンサムになってるよ」
ハル「でも、その割には女の子が集まらないんですよ」
音夢「それって、美春が近くに居るからじゃない」

そういえば、学校生活で俺はほとんど美春と一緒だった。
登校する時もいつも一緒、飯を食う時も一緒、帰る時も一緒で、自宅も一緒。
俺の生活で美春は居なきゃならない存在になっていた。
それで、女の子のほとんどは集まらないのか。いや、別にこれといった変な噂もないし、俺を毛嫌いしている素振りも見せていない。
もしや、俺と話したい世の女の子は美春に嫉妬しているというのだろうか。
・・・俺、これじゃナルシストじゃないか。
いや、単に俺と美春はカップルだと見られているのだろう。
クラスメートだって俺の近くに美春がいておかしくないって言っているし。

ハル「時々、他の女の子も俺の側に寄りますけどね」
音夢「私も・・・実は、ハルちゃんのこと・・・」
ハル「え・・・。音夢姉ちゃん、兄貴がいるじゃないですか」

そんな・・・音夢姉ちゃんが、俺のことを・・・?
ってことは、音夢姉ちゃんは美春を本当に嫉妬しているってこと?

音夢「兄さんには、さくらちゃんがいるしね」

さくらがいるって・・・? 昨日かその前に、音夢姉ちゃんと兄貴に何かあったのか。
さくらに会って兄貴の話になると、絶えることなく長話が続くよな。兄貴もモテる男だな。
それが原因で、音夢姉ちゃんとさくらが兄貴の取り合いになったのだろうか。
そういえば、さくらと音夢姉ちゃんが一緒に居たことって、俺の記憶ではあまりなかったな。
仲がいいと言われていても、本当はさくらと音夢姉ちゃんは仲が悪いのか。
でも、音夢姉ちゃんが俺を好きになるなんて、駄目なんだ。なぜかわからないけど、駄目なんだよ。

ハル「そんな・・・困ります。俺は確かに、音夢姉ちゃんのこと、好きだけど、それ以上に俺は美春が・・・」

って、俺、何を言ってるんだ。何でここで、美春を出すかな。
別にあいつとは恋愛感情持っているわけないのに。
・・・でも、時々あいつが無償にかわいくみえるんだよな。それが、好きって、ことなのか。

音夢「ハルちゃん・・・美春のこと、好き?」

・・・。
困ったな。美春を好きっつったら、好きだけど・・・。
美春は俺をどう思っているんだろう。
俺は美春の尻に敷かれる存在になりかけているが、あいつも甘えん坊になる時は、俺が兄として見ている。
美春は俺を頼りにしているかな。

ハル「まぁ、好きといえば好きですけど。音夢姉ちゃんは俺の姉として好きなんです」
音夢「姉として?」
ハル「ええ。音夢姉ちゃんは俺のお姉ちゃんです。恋人までにはいきませんが・・・。
あと、覚えていますか? 昔、お姉ちゃんが俺を・・・―――」





続く

あとがき
どうも、2作目に入りました。海です♪
美春に続き、今度は音夢が今回の話のメインです。
小説に異常に力を入れているので、TVを見ている時間も勉強する時間もありません。
テストはしばらく先なので、それまでは安泰です^^

管理人から
海さんと違いアニメは見るは漫画は読む派勉強しないわSS書かないわののかーびぃです。マジすみません。
海さんの小説は凄いスピードで送られて来てるんですが、掲載順などでかなり遅くなってしまいました。
この場を借りてお詫びします。今回はハルと音夢がメインのお話です。全4話なのでお楽しみに。
第2話も出来るだけ早くアップしますね。それでは〜



                                         
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