D.C.外伝『ハルと呼ばれる少年』第一章
「記憶喪失、俺の存在、美春」D

音夢「あ、起きた」
純一「春巳は・・・戻ったのか」

兄貴と音夢姉ちゃんはずっと俺と美春を見守っていた。
俺らが寝ているのにもかかわらず、兄貴と音夢姉ちゃんは寝ずに俺たちを見ていた。もちろんさくらもだ。

さくら「どうなっているのかは、自分で見てね」

さくらはその場から姿を消した。



美春「う〜ん、よく寝たぁ」
ハル「ああ、気がつけばもう朝になってたな」
美春「不思議な夢だったぁ。何かハルちゃんとの思い出を見たよ」
ハル「マジか。俺も同じ夢を見たぞ」

当たり前だ。そのためにさくらを呼び、俺の小さな頃の夢を見たんだからな。

音夢「ハルちゃん」
ハル「?」

音夢姉ちゃんが俺のところに来た。

音夢「記憶、戻ったの?」
ハル「うん、音夢お姉ちゃん♪」

俺はその時、昔の呼び名を口にした。すると、

音夢「・・・ハルちゃぁん!! 戻ったんだね!!
あぁ、懐かしい(涙)」

音夢姉ちゃんは急に俺に抱きつき、涙を流していた。

純一「ちくしょう、長い間心配かけやがって」

兄貴もやってくる。

ハル「兄貴・・・」
純一「!」

兄貴は音夢姉ちゃんと同じく、俺を抱いた。

ハル「小さい頃のこと、秘密基地で遊んだこと、さくらとの出会い、全て思い出したよ」

俺は以前のように、兄貴と音夢姉ちゃんに敬語は使わないことにした。そのほうがいいと思ったから。

音夢「こうして再会したね、ハルちゃん」
兄貴「もうお前は、美春の世話になることもなくなったな」
美春「え?」

それはあまりに早い別れだった。

兄貴「だってそうだろ、春巳は自分の名前と家族を思い出したんだ。もう美春に世話になることはないだろう」
美春「え、で、でも」

俺は自分の思いを兄貴に言った。

ハル「俺の住む場所は元々あるんだ。だから、美春・・・」
美春「そんな、別れるなんてやだよ」

美春の瞳が潤ってきていた。

音夢「兄さん、そんなこと・・・ハルちゃんができるわけないじゃない」
兄貴「・・・春巳、もう決まったんだろ、家」
ハル「ええ。俺は・・・」

つーか・・・

ハル「天枷家でお世話になります!!」
美春・音夢・兄貴「え!?」

当たり前だろ。

音夢「ってことは、美春のところで・・・」
ハル「ええ。美春、またよろしくな!」

俺は美春の頭を撫でた。

美春「もぅ〜! ハルちゃんのいじわる!」

こうして長かった俺の記憶が戻ってきたのだ。
さくらには感謝感謝の気持ちをいつでも持たなくてはならない。







俺のエピソードが長くなってしまったが、それから2年、現在俺は風見学園本校1年生である。

音夢さんは看護学校にしばらく行っていたのだが、風見学園にまた来ることになり、さくらは何と本校の先生(教諭?)になり、兄貴、杉並先輩、ことりさん、萌さん、眞子さん、そして学校で知り合った環先輩、ななこ先輩、叶先輩というすばらしい親友ができた。

そして俺はというと、相変わらず美春と同じクラスだった。

もう毎日の日々が楽しい。俺はこれほどまでに学校が楽しいと思っただろうか。

それは多くの親友を持ったからであろう。そして何より、一日が楽しめるいじりがいのある友達を持ったからであろう。

美春「ん? 何か言いました?」



俺は記憶が取り戻すことが出来、初音島の人々との面識がわかってきた。

まず、俺が昔から知っている人は、

美春、兄貴、音夢姉ちゃん、さくら。

次に、初音島再来〜附属時代の間に知った人は、

ことりさん、萌さん、眞子さん。

そして、本校に入り、

アリス、杉並先輩、叶先輩、環先輩、ななこ先輩

と出会った。





さくら「こら、授業中に寝ないで」
ハル「・・・ん?」

気がつくと、俺はさくらの授業で寝ていた。
どうやら俺は長い眠りに落ちていたらしい。ってことは、今まで俺は、寝ていたのか。



授業終了後。

さくら「もう、結局授業開始から終わりまでずっと寝てたね」
ハル「すまん、さくら」
さくら「さくらじゃないでしょ、先生って呼びなさい。それに敬語で言うものだよ」

どうもさくら相手に、『先生』と呼ぶのは慣れないな。

ハル「ここは俺の前のテストの結果に免じて、見逃してくだせぇ」
さくら「もう、仕方ないなぁ。次からは寝ないようにね」
ハル「ほーい」

別に自慢なのではないのだが、1学期の期末テストで3日前からの詰め込み勉強法で俺はクラス3位を獲得した。
美春はというと・・・本人の希望により伏せて頂きます。



昼休み

美春「ねえ、ハルちゃん。音夢先輩のとこ行こう!」
ハル「え、いいのか? 保健室で昼食なんかとって」

っていうより衛生上、問題があるんじゃ・・・。

美春「いいの。美春は音夢先輩公認なんですから」

いや、公認って・・・。
だが、特に寄る所もその時はなかったので、俺たちは保健室に行くことにした。

ハル「本当に大丈夫なのか?」
美春「大丈夫って?」
ハル「保健室だろ? けが人や患者とかが居たら、俺たち思いっきり邪魔になるだけなんじゃないのか」
美春「それも・・・そうだけど・・・」

美春はそっと、ドアを開けて保健室の中を見た。

美春「誰も居ないよ」
ハル「誰も居ないって、中に音夢姉ちゃんが居るんじゃなかったのか」
美春「ううん、そのはずなんだけど・・・」

俺と美春はそっと保健室に入った。

ハル「わっ!!」
音夢「きゃあっ!!」
ハル「す、すいませーーーん!!!」

俺はあまりの恥ずかしさに保健室を出た。
何と、誰も居ないと思ったら、ドアの横のロッカーで音夢姉ちゃんが着替えていた。
しかもタイミングが悪く、音夢姉ちゃんは白下着姿だ。

ハル「ふぅ、何て恥ずかしいんだ。いきなりあのような光景を見たら、どうすればいいかわからないだろ。
それに物が飛んでくる恐れもあるし。なあ、美春・・・ん?」

あれ、美春がそういえば出てこないな。何してんだ、あいつ。
俺は一声『失礼します』と言い、保健室に入った。
そこでは、もう着替えが終わった音夢姉ちゃんが帰る支度をしていた。その横に美春がいた。

ハル「あれ?」
音夢「もう、勝手に入られたら困るよ」

俺を見るなり、音夢姉ちゃんは頬を染めていた。
そりゃ、そっと入ったのは悪かったけど、まさかあんな光景を目の当たりにするなんて思いもしなかった。

ハル「すいません。
ところで、もう帰るの?」
音夢「え、今日は午前だけの授業だけど」
ハル「おい、美春。お前5時間目数学、6時間目英語があるって言っただろうが」
美春「え・・・」

こいつ、全く知りもしないで言いたいこと言いやがって。
どうやら、知らなかったのは俺と美春だけのようだ。
昼飯持って保健室に入るなんて、何て恥ずかしい光景だろう。幸い、音夢姉ちゃんだけに見られただけでよかったけど。

ハル「じゃ、俺たちも帰るか」
美春「うん。音夢先輩、一緒に帰りましょ」
音夢「じゃあ、下で待ってるね」



ハル「美春、お前だけが頼りなんだからな。うちのクラスでは」
美春「っていうより、ハルちゃん友達って居るの? 私以外に」

そう考えると、1日の学校生活で話しているのは美春以外あまり居ないのかもしれない。
まあ、男子でも仲がいいのは居るが・・・。それに、まだ本校に入学して間もないし。

ハル「っていうより、うちの担任の情報不足だろ。今日が午前だけの授業って一言も言ってなかったぞ」
美春「もう、担任の先生のおかげで音夢先輩に恥ずかしい光景を見られちゃったよ」

実際、恥ずかしい思いをしたのは俺たちより音夢姉ちゃんのような気がするが・・・。



美春「お待たせしました〜」
ハル「あれ、兄貴は?」
音夢「兄さんは、補習」

また何かやらかしたのかな。

美春「朝倉先輩を待ちますか?」
音夢「ううん、いいの。せっかく午後はフリータイムなんだし、どっか遊びにいこうか」

俺はそっと、2人から離れた。

音夢「あれ、ハルちゃんは?」
美春「さっきまで私の隣に居たんですけど・・・」



俺はあの事故の場所に行った。

俺はこうして記憶を取り戻した。取り戻したから、あの事故のこともよく覚えている。

美春は小さい時からどんな行動に出るかはわからなかった。だから、あんな事故も起こるなんてあの頃は知る由もなかった。

そうなると俺は、これから美春を守るべきなのだろうか。兄貴は音夢姉ちゃんを守ってるし、俺は・・・。

美春は好きだ。俺が好きというのは1人の女性というわけではなく、かわいいということで好きなんだ。

あいつはいじり甲斐のあるやつだけど、その奥で美春を好きになったのかもしれない。

美春というのは俺が物心つくときから居て、まるで家族同然だった。

でも、あの事故で美春の身代わりとなって事故に巻き込まれ、記憶喪失になってしまったが、別に後悔はしていない。

時々記憶喪失で後悔する時や怪我の影響で俺の体が痛む時もあるが、一時的なものだ。俺は美春を守れてよかったと思っている。

もちろん、いろんな人々に心配をかけたが、俺自身、それほど苦にはなっていない。

それにまた、美春とこうして暮らせるようになったんだ。

だが・・・

もう二度と、美春に痛い思い、苦しい思いをさせたくないんだ。

そのためにも、俺が守らなければ!






あとがき
海です♪
美春編完結しましたぁ〜。
初めて小説書いたので、終わった時は達成感があります。
ストーリー的にはD.C.S.S.、D.C.P.S.、D.C.S.G.が混ざっています。
看護学校に居るはずの音夢が風見学園にいたり、姿を消していたさくらが本校の先生になったりと・・・。
アイシア、和泉子、工藤、美咲が出るかは自己検討中です。
私的には、ことりを最終章にしようかなと考えています(あくまで

管理人から
さくら先生の授業で寝るなんてハルは不謹慎ですねw
まぁ、無事に記憶も戻り学園生活にも馴染んでるようで、とりあえずめでたしめでたしです。
ってことで美春編お疲れ様でした。
最終章のことり編も楽しみですが、次は音夢編です。
それではお楽しみに〜



                                        
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