ジリリリリ・・・

「ハルちゃん、おはよう!!」
「ったく、うるせェな」
俺は目覚まし時計と美春の目覚ましコールによって起きた。
つか、何かいつもより美春の胸がでかくみえた。って、どこ見てんだ、俺・・・

「兄貴じゃねェんだから、そんなでかい声出さなくたって起きれるって」
目覚めに関しては兄貴よりいい。朝には強いからな。

そんないつもの朝のはずが・・・今日は特別ゲストがいた。

「おはよ〜、もう遅いよぉ〜」
部屋にそう言いながらさくらさんが入ってきた。

さくらさんが俺の部屋でぶつぶつ言いながら待っている。
俺は体を起こし、ベッドから出る。

「遅いって、今日は何かあるんですか?」
「何か? ハルちゃんに教えてなかったっけ、魔法武術大会があるってこと」
「ああ、思い出しました。でも俺は関係ないでしょ。魔法使いではないし」

何でも1年に1回ある大会らしく、今年の舞台が風見学園になったらしい。
世の魔法使いがその舞台に集まって力を競う大会なのだが、俺は魔法使いでも何でもないのにさくらさんの推薦で選ばれた。
一体何を考えてんだか。そういうわけで風見学園全生徒は今日の授業は全て免除され、自由参加で体育館で試合を観戦できる。

「でも、ハルちゃんは風見学園の中で一番強いんでしょ」
「まぁ、それはケンカでですよ。魔法では歯が立ちません」
「何言ってるのぉ、君の拳銃があるじゃん」

さくらさんは俺のポケットに眼を向ける。

「何も罪なき人には向けませんよ」
「いいな〜、美春も参加したい」
美春が恍惚な目で俺を見る。が、どんくさい美春がこんなもんに出たら数秒で決着がつくだろう。

「お前は参加してもしなくとも予選で敗退だ。ムリはするな」
「むぅ〜。バナナという武器があるから出れるよ」
そう言い、服の中からバナナの束を出す。そして美春のサイズはいつものCくらいに戻った。

「滑りやすいものを使うのは卑怯なやり方だぞ。つか、どこからそんなモノ出してんだ、お前は」
「だって、いつも美春が取りに行こうとするとハルちゃんがそれを制するんだもん」
「そんなめんどくせーことするからだ。少しは胸が大きいなと思って期待してたのによ」
俺が行った途端、さくらさんと美春が冷たい視線を送る。

「ふーん、ハルちゃんってそういうのが好きなんだ」
「ごめんねぇ〜、ボク幼児体系で〜」
さくらさんは口を尖らしながらそっぽを向く。

「さくらさん!!」
何かこの場に居づらくなったので俺はそそくさとロビーに移動した。




俺と美春はチャリで風見学園に移動した。

「久しぶりだね、こうやって自転車に乗るのって」
「たまにはこういう登校もいいだろ。バイクにも乗りてェけどな」
ちなみにさくらさんは一足先に今回の大会会場に向かった。

「何か面白い大会だね、ハルちゃん」
「ああ。でもよ、さくらさんってあんま魔法を使ったこと観たことねぇけどな。何で参謀なんてやるんだ?」
「友達がいるんじゃない?」
「友達がいるだけで・・・ねぇ・・・」
さくらさんって魔法が嫌いだとか言わなかったっけ?

「あれ、知らないの、ハルちゃん」
いきなり美春が俺に問いかける。

「何がだ、俺は全く知らん。さくらさんは魔法が嫌いなんじゃなかったのか」
「それは美春はよくわからないけど・・・ハルちゃん、それよりも・・・
その魔法武術大会、ハルちゃんも登録されているんだよ」

「はァ!?」

なななななななななななななななな何で!!!!!!!???????
俺、魔法使えねぇよ!

「芳乃先輩が登録したって言ってたよ」
「俺は聞いちゃいねぇよ!」

冗談じゃねぇ! 何で一般人の俺が!? 魔法武術大会ってのは魔法が使える奴らが競い合う大会だっつぅのに。

「ハルちゃんって、魔法使えたんだね」
「んなわけねェだろっ!!」
自転車は風見学園の門をくぐる。

「羨ましいなぁ〜、美春も魔法が欲しいですぅ〜」
「人の話聞けっ!!」
だが、俺が美春に顔を向けた瞬間、

「ハルちゃん、前っ!」
美春が青ざめた表情で言う。俺は振り向く。

「・・・!」
何と、グラウンドに置いてあったベンチが前から飛んできた。

「何だ!?」
そして俺らの乗った自転車がそれに直撃する。そしてその衝撃により俺と美春の体は宙に吹き飛ばされる。

「きゃあぁぁぁ!!!」
って、何だこれ! また俺飛んでるよ。飛んでるぜ、オイ!!(5.25章参照)

「!」
ベンチに自転車が当たりふっとんだことによって、俺らの体は本校の校舎に向かって吹き飛ばされた。
このままでは校舎に直撃してしまう。空中では体勢を整えるのも至難の業だ。

「ハルちゃん、何とかしてぇぇぇぇ!!!」
「知るかよ、んなこと!!」
その時、鎖が飛んできて俺と美春の腰に巻きついた。それは普通の鎖ではなく魔法によるものだった。

「・・・あれ」
俺と美春の動きは封じられ、その鎖によって俺と美春の体は徐々にゆらゆらと地面に着いた。

「何だ、この鎖」
「これは、チェーンバインドですよ」
美春が何やら興奮した状態で解説する。美春のマニア魂に火が点いた瞬間であろう。
着地した瞬間、バインドは解ける。

「危なかったぁ〜」
聞き覚えの全くない女性の声がした。
そして俺と美春の前に1人の女性が現れる。彼女が先ほどのバインドを使っていたのだ。

「あと少しタイミングがずれてたら、校舎に当たるところだったよ」
「ありがとうござい・・・っあ、貴方!!」
美春がその女性に礼を言うなり、いきなり人を指差す。指された女性もきょとんとする。
俺はその指を下げる。

「バ、バカ! 初対面の人に向かってなにをしてんだ、お前は」

ゴスッ!

「痛いよ、ハルちゃん〜!」
俺は美春の頭を叩いた。自分の家族としては・・・恥ずかしい。

「だってこの人、『高町なのは』さんだよ」
「・・・マジか」
「え、私のこと、知ってるの?」
彼女、なのはさんも少々驚く。

「知ってますよ。観てますよ、『魔法少女リリカルなのは』シリーズ。ハルちゃんと一緒に」
「俺は、見せられていると言ったところだ」
「ありがとう」
なのはさんも微笑んで美春に応える。しかしホント、風貌がどことなくさくらさんに似ているな。声とか特に。
そんな似た人がいたために俺も少しは見ていた。
何というか・・・大人になったさくらさんに髪の色等違うところはあるものの、大部分がそっくりだった。

「今日はやはり魔法武術大会に来たんですか?」
「うん、今回の大会はどんな感じになってるか見学にね」
「え〜、出ないのですか?」
「それは参加者によるね。私より強い人がいれば参加するし、今回から出場する人が多数いればアドバイザーにもなるし」
「いいなぁ〜、美春も魔法が使いたいですぅ〜」
「それだったら、私と一緒にミッドチルダに来ればいいのに。そして時空管理局に入局してみたら」
「美春みたいな魔法が使えない人も入れるでしょうか」
「そしたら、私が育てるから心配ないよ」
すっかり俺は、美春となのはさんから蚊帳の外にされていた。

「・・・すんません、それ、どんな勧誘?」
「あ、ごめんハルちゃん、忘れてた」
「君が春巳クンね。さくらちゃんからは話は伺ってるよ。どんな試合になるか楽しみにしてるよ」
「いえ、俺、魔法使えないんすけど。さくらさんから強制的に・・・」
なのはさんは俺の前でガッツポーズをする。

「どんな状況下であろうと何事も挑戦するのみ、だよ!」
「世の中それで成功していけますかね・・・?」
「どうかな・・・?」
自分で言っておいてそれはないでしょう・・・。

「努力が肝心!」
サッパリ流しちゃいましたよ、この人。

「美春、俺はさくらさんでも探しにいくから。美春はここでなのはさんとでも話しておけ」
なのはさんと美春が少し長話をしている間、俺は辺りを見回す。
今日は特別な日だけあって風見学園の校庭には人だかりができている。しかもほとんどが女性だ。
そしてその中から、先ほどベンチを飛ばしたと思われる人がこちらに来る。なぜなら、その飛ばしたベンチをよくチェックしていたからだ。

「ごめんねェ〜、大丈夫だったぁ?」
さくらさんと同じくツインテールな彼女も魔法使いなのだろう。
白い杖を持っている。しかしながら、彼女の言葉には反省の色が見えなかった。
俺はそのノーテンキさに苛立ちを隠せなかった。

「『大丈夫だったぁ?』じゃねェ! 何をやってんだ、てめェは!」
「そんな怒らなくてもいいじゃない」
彼女に反省の色はない。むしろ、

「殺す気ですか、アンタ。えぇ? 自転車で『登校』というスクールライフを満喫している生徒を殺す気ですか!」
「ちょっと、さっきから謝ってるじゃない。いいでしょ」
「もっとねェ、魔法使いなら自分の力くらい管理しろよ。俺だってなァ、自分の欲しいものとか我慢するくらいの力あんだからよ」
「いや、それは少し違うから」
「ま、今日のところはこれで許してやる」
「ムカッ、何その言い草」
余計に口げんかの方向に行ってしまっている。

「ちょっと、杏璃ちゃん」
もう1人少女がやってくる。彼女も杖を持っているところをみると、魔法使いなのだろう。恥ずかしそうにこちらにやってくる。

「あんまり騒ぎにならないようにしよう。他の生徒が見てるよ」
「春姫、少し黙ってて。この人と決着をつけるから!」
この杏璃とかいう奴は杖を構え、俺に向けてきた。

「はいはいわかったわかった。ったく、めんどくせー」
何かバカバカしく思えてきた俺はその場を後にする。

「ちょっと、待ちなさいよ」
だが、俺の裾を杏璃が掴む。それにより俺はその場を後にすることができない。

「いいよ、さっきのは。お前がそんだけドジな魔法使いだってことがわかった」
「ドジってねェ、これでも優秀な魔法使いなのよ」
「わかったから、もういいだろ」
「何か納得いかないわよ。こうなったら、実力見せてもらうわよ」
「は? 実力って」
「アンタも魔法使えるんでしょ」
「使えるわけねーだろ。どこにそんな証拠あんだよ」
「だってここ、魔法武術大会の会場だよ」
「俺はここの学生だ。魔法なんてしらねェ」
「知らないじゃすまないわよ」
「知らんもんは知らん。
魔法? どっかで安売りセールでもしてるんですかぃ。198円で欲しいもんだな、オイ」
「あ・・・杏璃ちゃん・・・(汗)」

杏璃の傍らにいた少女、春姫は俺と杏璃の口げんかに入ることができなかった。
何か俺もやけくそになってきた。
そんな結末がみえない俺と杏璃の試合を封じたのは、

「ハルちゃーーーん!!」
さくらさんだった。助かりました、さくらさん。

「こんなところで何をしてるの。ボクずっと待ってたんだよぉ」
「すいません、さくらさん。つか、勝手に登録しないでくださいよ。魔法が使えないってさくらさんが一番知ってるでしょ」
杏璃と春姫がしばし黙り込む。が、さっきからさくらさんを必要以上に見ている。
さくらさんは2人の視線には全く動じていない。

「でもハルちゃんは特例で参加できるんだよ」
「特例って、何すか」
「人気投票」
「それだけで?」
「うん」
「何やっちゃってくれてんですかっ!!」
人気投票で上位3名が強制参加することになっていた。上位3人には俺、成田、シバ。
見事に『春巳組』が独占していた。4位に兄貴の名が出ていたが、シバとの差は50票差だったらしい。
つか、何の人気投票だ。それがよくわからん。

「題して『魔法武術大会風見学園代表者選出選挙(魔法使用者を除く)』で開催したんだよぉ」
漢字だらけで気持ち悪いわ!

「・・・勝手なマネを」
そんなこんなで俺はもう辞退することはできないらしい。なら、一試合だけ出てそこで腹を壊したフリしてリタイアするしかないか。

「あ、杏璃ちゃんと春姫ちゃんも参加するんだぁ〜」
「そうです、よろしくお願いします」
春姫が頭をペコリと下げる。この2人もさくらさんの知り合いだというのだろうか。さくらさんの交友範囲は広いな。

「さくらさん、第一試合には私をこの男に絶対当ててください!
そこで決着つけますから」
「にゃはは・・・早速やってくれちゃったんだね、杏璃ちゃん」
どうやらさくらさんにもこの杏璃のとんでもない魔法のことは分かっているようだ。

「俺は、別に参加するつもりは・・・」
「いいのかなぁ〜、ハルちゃん。
先週の金曜の夜、美春ちゃんの部屋で―――」
「だァァァ、わかりましたわかりましたわかりましたっ!参加します、参加しますよ!」

金曜はとても恥ずかしい思いをしたので、述べたくない。
それにさくらさんに痛いところを見られてしまったな。つか、なぜ知っているんだ。知
らないはずのさくらさんに何で弱点を突かれているんだ、俺。
思い出したくないからその点だけは今後触れないでください。
とにかく、さくらさんにはかなわないな。
春姫と杏璃は会場に入った。

「おい、さっさと教室に入るぞ、美春」
俺は美春の襟首を掴み教室に向かう。

「ハルちゃんは先に行っててよ。美春はなのはさんと話してから行く」
「あっそ」
俺は襟首を離す。その拍子で美春はしりもちをつく。美春はむぅ〜と頬を膨らます。

「ごめんね、春巳君。美春ちゃんとの話長くなるかもしれないけど、いいかな」
「構わないですよ」

なのはさんは申し訳ないとばかりに手を合わせて謝っていた。
美春はと言えばもう完全になのはさんと一緒にいるだけで夢中になっていた。
美春はしばらくはなのはさんと話していた。

「でも、強い人が現れれば、私もわくわくするよ〜」
「ですよねぇ〜、あ〜、美春にも魔法が欲しいですぅ」

俺は教室に向かった。
わくわくねェ・・・強き者が現れると面白くなってくる、か。
・・・。
・・・・・・何かバカバカしい大会だが、たくさん暴れられるんだよな。

「・・・それを考えれば面白くなってきたじゃねェか。
聞くところによればこの大会もなかなか有名な大会だ。いい線行ってれば俺の名も載るかもな」
・・・・・・。
・・・それはないか。
魔法が使える人がほとんどのこの試合。俺はどこまで行けるのだろうか。
登録を取り消したいが、さくらさんが参謀の大会じゃムリだろうな・・・。
どちらにしても後戻りはできそうにないな。それに俺は魔法が使えない。これは相当なハンデがありそうだ。
・・・だが、武器はある。
俺の愛用の拳銃がある。だが魔法ならすぐに消えるだろうが、実弾を用いるわけだから体内に入ってしまったら厄介なことになりそうだな。
相手を死なせたら失格として勝てない。

「ちっ、急所を外すしかないか」
俺は教室に入る。いつものようにファンクラブの女の子から一斉に挨拶の嵐が飛び交う。

「うっす」
「おう」
「・・・」
俺は成田・シバのもとに行く。だが、この2人もいつもよりテンションが低い。

「・・・てめェ!」
と、シバがいきなり俺にくってかかる。

「・・・あんなバカバカしい大会に俺を登録するな。
俺はそんなちっぽけな大会に参加するつもりはねェよ!」
「仕方ねーだろ、俺が好きでお前を登録したわけじゃねェし」
「・・・誰だ、誰が登録しやがった」
今日のシバはいつにもまして気が荒かった。さすがの成田も言う言葉が出ない。

「さくらさんだ、人気投票とかでな。でもいいだろ、お前も人気投票で名が載っかったんだし」
「・・・人気なんざ必要いらん。とにかく今すぐ消せ、取消を要請する」
「俺に言うなよ。さくらさんに言え」
「・・・」
「言わんのか」
傍らにいた成田がやっと言葉を出す。

「さてはシバ、芳乃嬢に言うのが苦手だ、と」
「・・・何を言う!」
「言っちゃいなよ。それで気が晴れるって」
俺も成田と挟み撃ちとばかりにシバに詰め寄る。

「・・・参加する、試合に参加すりゃァいいんだろ」
シバはさくらさんに拒否をすることが苦手だった。それを俺と成田は知っていた。
俺と成田は揃って黒い笑みを浮かべる。

「さて、どうしたこったな、この試合よ」
成田が俺の肩に手をやる。

「知るかよ、相手は魔法を使った怪物どもだ」
「・・・怪物というより、女がほとんどだけどな」

とにかく、ここからは負けるわけにはいかないな。魔法で攻撃してくるものを必死で避けるしかできない。
が、必ず隙ができるはずだ。それを逃すわけにはいかない。

「いいじゃないか、さくらさんが俺に戦いの場を与えてくれたんだ。
思いっきり暴れまくろうぜ」
「・・・ま、そう思えば俺はNOとは言わん」
「戦の始まりだ」





A「・・・おい、やつを徹底的にマークだ」

B「どいつ?」

A「春巳って奴だ。奴から発せられる気が異常なまでに強い。それに、何か獣のような妖気も宿っている」

B「まさか、奴にそんなものあるわけないじゃない」

A「いや、俺の勘はよく当たるからな。絶対奴の体内にそれが潜んでいる」

B「ま、記録だけはつけたほうがいいかもね。あの坊やをよく調べないと」

A「クックック・・・、これから楽しい祭りが始まりそうだよ」

C「春巳か・・・俺は好きじゃねェよ」

謎の人たち3人も動き出していた。





続く

あとがき
大プロジェクトが始まりました。D.C.、なのは、はぴねす!の合作です。やっぱり高町なのはと芳乃さくらは一緒にしたかったのですよ。
これを書いている時の私はこの3作品だけにしようと思ったのですが・・・結局増えてしまったのです。
今後も愛読お願いいたします。まだこのシリーズ未完成なので謎の人A,B,Cは出番なしの恐れもありますが、何とかがんばります!



管理人から
あらゆるキャラが総出演の魔法武術大会の開催です!
ってかまずすいません。貰ってから半年以上経ってます。
無職になってようやく更新出来ましたが、これからまた旅に出るので更新が途絶えそうです。
旅が終わっても勉強があるので、また更新途絶えそうですが、なるべく更新して行こうと思います。



                                        
D.C.外伝『ハルと呼ばれる少年』第5.7章
はぴねす!、魔法少女リリカルなのはシリーズ(&etc)融合小説
「魔法武術大会」@
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