「おいおい、どうしたよ。てめー1人で4人も相手したことあんだろ。それがどうだ。その様は」
俺はというと・・・
「・・・ふっ、少し手加減しすぎたかな」
10人相手はさすがにきつく、10人の手の渦に巻き込まれ俺は抵抗する力をなくしていた。
「さすがに拳銃を1発撃たれりゃ抜け殻も同然だな」
俺の右脚を弾が貫通した。出血多量で俺は身動きが取れなくなっていた。俺の周辺には自分の血で満たしている。
「・・・くそっ」
右脚がしびれて動けなかった。
「貴様さえいなくなけりゃ俺らは暴れ放題だ」
俺は左脚だけで何とか態勢を直そうとしたが、その時、財布がズボンから落ちる。
「おい、アレ取れ」
頭が若手に俺の財布を取るようにアゴで示し行かせる。
「ま・・・て・・・」
が、その若手から右脚を踏まれる。
「ぐああああ!!!!!!!」
俺は痛みに絶叫する。
「戴きました」
頭は財布を取り確認する。
「何だ、千円しか入ってねェ」
頭はカード入れ類を確認する。すると、中から美春の写真が出てくる。俺がいつ美春の記憶がなくなるかわからないため、常に保管していたのだ。
「何だ、こいつは」
「・・・てめェらとは関係ねェよ」
「ほう、記念に戴こうかな」
「やめろ! 汚ねェ手で美春の写真に触るな!」
俺は珍しく声を荒げて焦っていた。今更ながら奴らに弱い自分を見せてしまった瞬間だ。
「・・・どうせ知らねェ奴だからいらねェだろ。俺のコレクションにしてやる」
俺は最後の抵抗をする。
「・・・悪趣味な奴だ」
俺の言葉が癇に障ったのか、
「何ぃぃぃ!!」
頭は俺が右手に持っていた拳銃を奪う。俺は何も抵抗できない。
「お前の最期は自分の拳銃だ。死ねェェェェェェ!!!!!!!!!」
おそらく奴は俺の心臓を狙っているのだろう。それでも俺はもう何も抵抗ができない。
「・・・ふふ・・・・・・」
もう・・・何も・・・抵抗も・・・・・・。
・・・・・・。
・・・。
・・・バンッ!!!!
「!!」
俺は撃たれた・・・のか。
それにしては不思議と痛みがない。
俺は閉じていた目を開いてみる。そこには・・・・・・
「痛ってェェェェ!!!」
しかしなぜか頭が手を痛めている。頭の手から血が流れる。
頭の手から俺の拳銃が落ちる。
だが、俺は手に取ることができない。俺は再び瞼が重くなる。
そして俺の耳に入ったのは・・・・・・
・・・・・・ブルンブルンブルン!!!!!
バイクの音だった。
「な、何だ!? こいつは!?」
「ぎゃああああ!!!!!」
「やめろぉぉぉ。轢かれるぅぅぅ!!!」
次々と相手の悲鳴が飛び交う。何が起こっているのかわからなかった。
「轢きころされてェか、てめェらァァァァァ!!!!!!!」
聞き覚えのある声がした。
目を開くと・・・・・・
辺りはあっという間に焼け野原となった。
・・・・・・。
「な、何なんだ、あの女!! 一旦退くぞ!!」
奴らは逃げ出した。
何が起こったというのだろうか。
「目ェ覚めたか」
俺に声をかける人・・・
「姐さんが、助けてやったぞ」
それは・・・
「・・・夏日さん」
俺の目の前には姐さんの顔があった。
いや、これは膝枕をされている。
「ほれ、これアンタの拳銃だろ」
姐さんは俺の手に拳銃を持たせる。
「それと・・・」
「・・・」
「『夏日』って呼びにくいだろ。『姐さん』でいいよ」
別に夏日さんでも呼びにくくはないが、彼女が言ったとおりに俺は
「・・・姐さん」
と呼んだ。
「その拳銃・・・」
姐さんが持っている銃は『Na』と書かれていた。成田のだった。
成田は『Na』、俺は『Ha』、酒々井は『Si』、久住は『Ku』
何だか元素記号みたいだ。
「ああ、アンタの仲間から貸してもらったのさ」
やがて、
「おい、飯田! 大丈夫か!」
成田達が追いかけてきた。
「何で、姐さんが・・・こんなところに・・・?」
姐さんの証言によれば、俺が喫茶店から去った後に奴らとどこかに行ったことに不審に思い追いかけた。しかし途中で行方を失った。
そんな時に成田たちが拳銃を持ちながら走っているところを見かけ、成田の拳銃を貸してもらい、倉庫裏から俺の声が聞こえたことを元にバイクで突入したという。
「どうだ、強いだろ、あたし」
「アンタ、何者なんだ」
バイクと拳銃だけであんな10人をどうしたというのだろうか。
かすかに目を開いたときはバイクで突入し、拳銃を撃ちまくっていた。が、一瞬の出来事で何が起きたかわからない。
「・・・元帥の娘だよ」
春巳組一同は驚愕した。
「げ、、、元帥の・・・娘!?」
成田が驚く。
「・・・マジか」
シバも驚く。
「道理でオーラが元帥と似ていたわけだ」
久住も驚く。
「何を感じてんだ、お前」
酒々井がツッコミを入れる。
ふいに元帥を思い出す・・・――――――
『おらァ、てめェら! 持ち場につけェェい!!
しめ殺すぞ!!!』
「・・・」
俺は何も言えなかった。ちなみに元帥の口癖は『殺す』である。元帥の下での修行は本当に拳銃を向けられて撃たれたり、100km/hで走る車に向かって実弾1発のみで車を爆発させたりと一度三途の川を見てしまいそうな恐ろしいものだった。
要するに、元帥というものは俺が一番恐ろしかった人である。
「あ、つぅか、早く秘薬を。春巳が危ない!」
そして俺は姐さんの作った薬で傷は治癒したが、それでも病院で2ヶ月の入院生活を余儀なくされた。
・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・。
・・。
・。
「すごい生活だったんだね」
さくらさんが言う。
「俺と成田に話しかけたのは寂しさを消すためだったのですかね。
あるいは俺らといると何か盛り上がるかもしれないと思ったからなのかわからないですけど」
兄貴達と遊んでいた秘密基地で俺はさくらさんと2人で思い出話をしていた。
今日はなぜか半日授業だったので、午後は予定がなかった。だからさくらさんと秘密基地にきている。
何で行く気になったのかはわからんが。
「ハルちゃんは美形だからね」
「でも姐さんは俺に恋愛感情持っていなかったんです。友達間隔で接してたから」
時々ドキッとする行動に出ることもあったが、結局進展はなかったな。
「でもボクがハルちゃんの世界に来たときはいなかったよね」
ペットボトルのお茶を飲み、さくらさんが言った。
「あの時は、姐さんはまたバイクでどっかに行っちゃったんですよ。
姐さんはバイクと祭りをこよなく愛してますから」
だから、男に恵まれないのかな。それはないと思うけど。
あ、あれか。扱いづらい人だもんな。勝手に1人で盛り上がったりするから。
「それにしても、秘薬を飲んだわりには入院生活2ヶ月は長くない?」
「・・・やられたんですよ」
「やられたぁ?」
元帥の秘薬を飲めばとても酷い重傷(中には心肺停止という危険な状態でも)も、かすり傷程度の軽傷になるが俺もそうなるはずだった。しかし、その後、
「おっし、応急処置完了!
これで帰れるでしょ。中に入っていた弾も取れたし」
姐さんは俺に秘薬を飲ませ、秘薬により体内から浮き出た弾を外に出した。
「姐さん、ありがとう!」
「じゃ、何かあったらすぐに電話をよこして。バイクで応戦するから」
と、姐さんはバイクで帰還した・・・が・・・。
バキッ!!!
「ギャァァァァァ!!!!!」
最悪な事態が起こった。俺は完全に意識を失ってしまった。
「飯田!?」
「あ、ごめんごめん」
何と、姐さんはバイクで俺の右脚を踏みつけてそのまま帰ってしまったのだ。
姐さん曰く、たまにある操作ミスだとか・・・。
「お、おい。骨、折れたんじゃねェか」
「冗談じゃねェ。誰か元帥の秘薬ねェか」
「あるわけねーだろ。あれは姐さんしか持ってねーからさ」
「・・・病院行決定だ」
まさか、姐さんのせいで4ヶ月も日が延びたとは・・・当時は思ってもみなかった。
「とんだ姉さんだね」
「姉さんじゃなくて姐さん」
あんな人が実の姉だったら、神経が持たない。
「・・・懐かしいです。今はこうして美春とも暮らしているわけですから」
「そういえば、カシラから奪われた美春ちゃんの写真はどうなったの?」
「姐さんが財布も全て取り返してくれました。美春の写真を見て少し嫉妬してましたけど」
さくらさんも俺にじ〜と嫉妬した目で見る。
「ホントにモテモテだね、ハルちゃん」
「・・・どういう意味ですか」
と、さくらさんが話題を変えた。
「成田君見なかった?」
「え、成田ですか。あいつ今日は何か慌ててどっかに行っちゃったんですけど、見てないですね」
「あの成田君どうなったんだろう。杉並君の更生術が効かなくなっちゃったのかな」
「・・・いえ、杉並先輩に洗脳されてますよ」
俺と2人きりの時はもとの成田になっているが、教室に入るなり杉並先輩とはまた1つ違った戯言を言いまくっている。
♪〜
さくらさんの携帯が鳴った。
「さくらさん、携帯持っていたのですか?」
「風見学園で何かあったらって言われたからね。その時の連絡用」
さくらさんは携帯に出る。さくらさんに携帯は合わない気がするけどな・・・。
だが、さくらさんの表情が変わる。
「・・・わかった!」
携帯を切る。
「何があったんですか?」
「ハルちゃん。風見学園には来ないでね」
「来ないでって、一体学園で何が」
さくらさんは何も言わず戻っていく。
俺は不吉な予感がした・・・。
続く
あとがき
小説書き終わって思いましたが、このストーリーは思いっきり本来のD.C.からかけ離れていますな。
管理人から
本編ストーリーからは大きく離れてますが、この展開はこの展開でありかと思います。
近日中に3話もアップさせて頂きますね。