D.C.外伝『ハルと呼ばれる少年』第5.25章
「暴走車を捕まえろ!」@
「音夢先輩、こうして一緒に登校するの、何か久しぶりですね」

いつもの登校風景。でも、今日は珍しく私は美春と2人きりで登校していた。
ハルちゃんが初音島に来るまでは兄さんか美春とでいつも登校していた。
しかしハルちゃんが現れて、美春はハルちゃんと一緒に行くことが多くなった。

「うん。いつも兄さんと一緒に行ってるからね」
私自身、兄さんと登校するのも頻繁になった。
時々は別の人々と一緒のこともある。中にはハルちゃんと一緒となることも。

「そういえば何で今日は音夢先輩、美春を呼んだのですか?」
「それがね、いつものように兄さんを起こしに行ったんだけど・・・」




トントンッ!

「兄さん、入るよ」

ドカッ!
ドアが勢いよく私のおでこに当たる。中から慌てて兄さんが出てくる。

「痛ったぁ!」
「悪りぃ、音夢。時間がないんだ」
「に、兄さん。今日は早いんだね」
「悪い、朝飯は無し。いってきまーす!!」
兄さんは何も食べず、駆け出してしまった。

「もぅ・・・」
兄さんと何も話すことできなかったなぁ。




「音夢先輩のところでもそんなことがあったのですかぁ」
「私の所って、もしかして美春のところでも同じことがあったの?」
「はい、ハルちゃんが朝からバタバタしていました。
ハルちゃんの場合、いつも朝が早いので見慣れてはいるんですけど、今日は何かいつもより少し急いでいましたよ」
「何があるのかな」

何かあると予感はしていたのだけれど、この時の私にはなにも予想することができなかった。




「どうだ、杉並」
「うむ、順調だ。翌日の行程はこんな感じだな」
「おお〜、よくまとまってるな」
杉並先輩と兄貴はコンピュータ室にいた。

「つーか、何で俺まで・・・」
ついでに俺と成田も入室していた。

「ん、お前は体力がうちの学園の中で一番あるからな。力仕事のために呼んだんだよ」
「力仕事って・・・俺、確かに持久力はあるけど、筋力はあんまないっすよ」
「よいではないか。我がお師匠のもとで働けるなんて、これ以上のものではないぞ」
「そこんとこ頼むよ。兄貴からの命令も聞けないのかい」
「・・・わかりましたよ」
やなことが起こるだろうと俺も予感していた。




ともちゃん「それで、あれからことりは進展はあった?」
ことり「進展って?」
みっくん「そりゃ、朝倉君かハルっちとに決まってるでしょ」

(形だけの)デートする回数も朝倉君とでは最近は減ってきている。
ハルちゃんはというと、2人きりのチャンスがなかなかなくてデートというデートもほんの数分でしかできない。

ことり「現状維持ってところかな」
ともちゃん「現状維持ねェ〜」
みっくん「いいの、早くアタックしないと他の女の子とかに取られちゃうよ」
ことり「う、うん。でも、何か恥ずかしくて・・・」

私自身、やはり異性に告白するなんていうのは、どうも胸がムカムカとする。
言いたいことは脳裏にあるとしても、それをなかなか口に出すことはできない。

みっくん「でも、今朝ハルっちがかなり慌てて学園に走っていたところ見たよ。
あの様子だと、今日もハルちゃんにアタックするのは無理かもしれないね」
ことり「まだ時間はあるんだし、焦らなくてもいいでしょ」
ともちゃん・みっくん「甘いっ!」
ことり「うぇ!?」




「おや、時にハル坊。その生徒手帳の中に入っている女の子は誰だ」
生徒手帳を開けカレンダーにメモしていた俺に、杉並先輩が言う。

「杉並先輩知らないんですか。彼女は『伊川夏海』ですよ。通称『なっちん』。俺、秘かに彼女のファンなんですよ」
「彼はなっちんオタクなんですよねェ」
「アホ! ファンなだけだ!!」
俺は成田の頭に鉄拳を食らわせる。

杉並「それは意外や意外・・・」
純一「聞いたことがなかったな」
ハル「まぁ、それが知っているのは美春と成田だけですからね」
成田「否定する奴ほど余計にオタにみえる・・・」
ハル「・・・死にたいか、成田クン」

正直、別に俺がなっちんのファンだという噂は広まっても構わない。
世の男どもの人気は計り知れないなっちん。
そもそも、本来D.C.にもどの作品にも取り上げられていない彼女のプロフィールが気になるだろう。
年齢は19。俺と2つしか変わらない。
身長161cm、体重は公式では発表していないが45kg前後だという。

3サイズはB88(F)、W56、H87
「まだまだ幼い顔立ちでそれに似合わぬ豊満な肉体と可愛げな声」が彼女の売りでもある。
俺はその顔立ちで惚れた。
しかし、その体つきをおしげもなく晒しているため男どもの視線は自然とそちらに向く。かくして、人気NO.1のグラドルにまで輝く。
ちなみに俺はファン歴3年というまだまだ中堅レベルである。もちろん成田も俺がファンであることはよく知っている。
ただ、萌え属性がどうのこうのでは希少だが否定する奴らもいる。それでも俺は気にはしない。
俺の前で否定する奴には・・・命の保障はないと思え。

杉並「ふむ、確かにこれは・・・」
純一「ことりといい勝負だな。ありえないが、風見学園に彼女が来たらことりと音夢で戦争が起きるかもな」
ハル「多分、ことりさんと音夢姉ちゃんのファンクラブ会員の中にはなっちんのファンがいるでしょう」

いつのまにか、兄貴と杉並先輩は俺の手帳からなっちんの(俺の持っている)カードを奪い眺めていた。

成田「お前が惚れるのも無理はない」

俺のことをよく知っているのは美春ではなく、実はこいつなのかもしれない・・・。

ハル「つーか、早く本題に入りましょうよ。時間なくなりますよ」
純一「そうだな」
杉並「では、本題に戻るぞ。ハル坊」
ハル「何をするんすか?」

ここから俺は杉並先輩のある行事の野望に巻き込まれることになった。




「月城さん、おはよう」
「おはよう」
「ハルちゃん知らない。朝から見てないんだよ」
「それが、私も見てないの」
「どこに行っちゃったんだろう、ハルちゃん」
美春は片っ端から俺を探していた。

「一緒に探そうか?」
「ありがとう、お願いします」




「水越先輩、ハルちゃんここに来ませんでしたか?」
「いや、ハルは来てないけど・・・っていうか、ハルって私らのクラスに来る奴だと思う?」
美春は脳内をフルに回転させ、俺の普段の素行を確認した。

「それもそうですよね。普段はいつも外でサッカーをしていたり、ベンチで成田君と話しているくらいですから」
「あ、そうそう。お返しみたいになっちゃうんだけど、朝倉見なかった?」
「朝倉先輩ですか、美春も見ていませんね」
「音夢が用があるって私に言ったんだけど、朝倉がいなくて・・・」
「欠席ですかね?」
「ううん、それでも授業にはちゃんと出てる。んで、授業が終わると疾風のごとく廊下に飛び出て・・・」
「朝倉先輩もですか。実はハルちゃんと成田君も同じなんですよ」
そして美春と眞子先輩は互いに目を合わせ、俺らの行動に疑いを持つのであった。




俺らはとういうと、杉並先輩のある計画の真っ只中だった。
しかし、杉並先輩の考えとしては随分と低レベルのものだった。

ハル「しっかし、杉並先輩にしてはガキがやりそうな考えだよな」
成田「これも男子生徒のため」
ハル「男子?」

どうやら、杉並先輩の研究のためではなく、これは男子からのリクエストらしい。
それにしても、杉並先輩も時には面白いことをするのだなと俺は思った。

ハル「なぁ、俺にも教えろよ」
成田「なら、これを持ちたまえ」
ハル「は?」

俺は成田からあるもの、ラジコンのリモコンを渡された。

ハル「これが、何だよ」
成田「ふっふ、後のお楽しみ♪」
ハル「はぁ・・・?」
成田「さっさと校庭に出ろ」

俺は放送部から借りた通信機を通して、杉並先輩と兄貴と連絡を取り合っていた。

杉並『では、試運転といこうか』
純一『春巳、そのラジコンを校庭のトラックに向かって走らせろ』
ハル「は、はい」

俺は成田に促され車を置き、リモコンのスイッチを入れた。途端、

ハル「げェェェェ!!!!!」

何とRCカーは、60km/hあろう速度で校庭トラックに突っ込んだ。
普通のRCカーではありえない速度だ。

ハル「な、何だこいつ! 急に加速しやがった!」
杉並『ハル坊、急いで止めろ!』
ハル「さっきからブレーキをかけているんすけど、操作が効かないんですよ!」

俺はブレーキをかけるため、進行方向の逆の位置に設定しているのだが速度は一向に落ちず、効くのは左右操作のみ。

杉並『なら、ここはハル坊の判断に任せる』
ハル「せ、責任転嫁ですか?」
成田「とりあえず、私達は車の後を追います」
杉並『了解。こちらからは朝倉を応援につけておく』
純一『おい、基はといえばお前の責任だろ』
杉並『コンピュータによる管理だからな。朝倉よ、パソコン等のメカには強いか?』
純一『そう言われると・・・あんまり』
杉並『だからだ、さ、急げ! コンピュータ管理は俺がやる。お前は少しでも早く現場に急行しろ』
純一『しょうがない』

兄貴達の回線が途切れる。それを俺と成田も聞いていた。成田が俺に命令する。

成田「俺たちも追うぞ、春巳!」
ハル「ちっ、杉並先輩の言うとおり、この状況では俺の操作にかかってるか!」

俺は車を右に転回させた。
そのおかげで正門に向かっていたラジコンカーは風見学園本校の入り口のほうに方向転換した。

ハル「成田、しっかりつかまえておけよ」
成田「任せろ、こういうのは・・・」

ビュンッ!!

成田「手馴れているのでね」

・・・。

ハル「・・・」
成田「んで、車は?」
ハル「・・・おい、何してる」
成田「うむ?」
ハル「・・・車、とっくに通過したぞ」
成田「俺の眼には全く見えなかったな」

俺は成田の胸倉を掴んだ。

ハル「・・・真面目にやってるのか」
成田「おいおい、お前、それじゃ朝倉妹と同じ『裏モード』だぞ」
ハル「ちっ!」

こんなところで成田を責めても時間の無駄だと感じたため俺は成田を放した。

ハル「追うぞ」
成田「OK!」

何か企んでいる感じはするんだけどな・・・。





続く

あとがき
今回は小説の組成の影響で「.25章」にさせていただきました。ややこしくて申し訳ないです^^;
社会人新生活に突入して全く時間がないです。自分の時間がほしいものです。
こうやって小説を書いていると、学生生活が懐かしいです(涙)

管理人から
ようやくある程度の修復が完了して更新にこぎ着けました。大変お待たせしてすみません。
伊川夏海という新キャラが出る気配がありますね。しかし、そこまでバッチリ知ってたら完全なオタですね。
さすがの自分でもキャラの3サイズを覚えるほど脳に余裕はありません。
まぁ胸だけなら数人はバッチリですが。それと誕生日もある程度は覚えてます。



                                        
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