D.C.外伝『ハルと呼ばれる少年』第5章
「救護室、兄、こまち」@
美春「って、D.C.と関係ないよ!」

ハル「いいだろ、俺の話なんだし」

美春「何でこまちちゃんなの?月城さんとか水越先輩とか白河先輩がいるのに」

ハル「それはだな、前の話(ファンクラブ編)でこまちちゃんが俺にプールへ誘ったことがあったの覚えているか?」

美春「初対面でいきなりだったよね」

ハル「そう。
しかし次の話第4章では、そのこまちちゃんとプールに行ったことは書かれていなかった。
プールでの出来事はどうなったんだ、という読者の声が飛び交っていたから、それに応えて急遽書くことを決めた」

美春「でも少数のついていない話って、ハルちゃんのシリーズではメインなんだよ」

ハル「いいじゃないか。作者も、アリスや環先輩、ななこ先輩、叶先輩、クマ編で頭を悩ましているんだから。つーか、これこそ外伝だろ」

美春「何か月城さん達がかわいそうだよ」

ハル「いつのまにかこのシリーズから忘れられている存在の兄貴なんか、もっとかわいそうだと思うが・・・」

美春「・・・それは言えてる」

ハル「ま、時間がある時でいいから読んでくれよな。
兄貴が出るかどうかはわからんが・・・」

美春「朝倉先輩はおそらく出番ナシ・・・。美春はちゃんと出てるよね。ね?ね!」

ハル「・・・お前はしばらく引っ込んでろ」

美春「うぅ〜〜ひどいよぉ〜〜」






ハル「あちぃ〜」

俺は朝、炎天下の中、バス停のベンチで寝そべっていた。
こんなとこ、早く抜け出したいと思っていた。
なぜわざわざこんな暑い日に、屋根のないバス停で待っているのか。




こまち『あの、今度の日曜、空いていますか?』
ハル『え? うん、まあ、空いてはいるけど・・・』
こまち『あの、プールに行きませんか?チケットが2つあるんですけど、みんな予定が入ってるって・・・。だから、ハル先輩と一緒にと思って・・・』
ハル『まぁ、いいや。チケット頂くよ』




あの時は何とも思わなかったが、確かに女の子と2人きりでどっかに出かけるのはちょっと緊張する。
美春とは週に2、3回は買い物とか一緒に行ってるが、あれはもう日常の中の生活に入っているから何とも思っていない。
あいつからすれば俺は、荷物係。やな扱いだ。これも日頃美春をいじめている(時には助けるときもあるが)俺への罰だというのか。
時々音夢姉ちゃんも買い物に同行すると、その荷が倍に俺に降りかかるが・・・。

こまち「・・・んぱい、ハル先輩!」

気がつけば、こまちちゃんの顔が俺の目の前にあった。

ハル「え、あ、あれ、こまちちゃん。いつの間に」

俺はゆっくりと身を起こす。

こまち「もう、この暑さでのぼせてしまったんですか? しっかりしてください」
ハル「ごめんごめん。やっぱ女の子とこうして2人きりでいるのって緊張してさ。
それよりも、ホントに今日は俺とこまちちゃんだけなの? 友達とか呼んでないの?」
こまち「ええ。みんなキャンセルしてるんです。何かみんな忙しそうで・・・。
今日はいつも友人と一緒に行く所なんで、おすすめの場所とか紹介しますよ。
いつもとはいっても、今まで2、3回程度しか行ってないですけど・・・^^;」

ま、俺もさくらパークのプールに行ってなかったからな。館内のプールは全くわからん。

こまち「今日はまさにプール日和ですね♪」
ハル「ああ、立っているだけで汗が出てきちまうな」

ちなみに現在の気温は30℃。最高気温は35℃になるらしい。

こまち「部活とかでこれくらいの気温は慣れているんじゃないんですか?」
ハル「ムリムリ、サッカーって冬くらいにいつもやっているから、夏はバテちまうぜ。ま、実際バテたことなんてないけどな」

体育の授業でもサッカーは大体は冬に行う。なぜ冬にやるのかは疑問に思うが・・・。

こまち「プールに誘ってよかったです」
ハル「そういえば、こまちちゃんは部活入ってるの?」
こまち「はい、テニス部に所属しています」

道理でおしとやかなわけだ。
女の子ってやっぱり部活でその人の性格がわかる。
性格がさばさばした人、その人はおそらくバスケ部。
性格がのんびりとしている人、その人はおそらく文科系な部。
性格が温厚な人、その人はおそらくテニス部。
俺自身、バスケ部の女の子とはそれほど仲がいいというわけでもない。それも人によるが・・・。
逆にいえば、テニス部の女の子とはとても仲がいい。大半は俺のファンクラブの部員である。

ハル「大変だね、風紀委員と部活両立して」
こまち「風紀委員はまれに行うので、それほど苦にはなっていませんよ」

と、ここで待っていたバスが到着し、俺達は乗車した。

ハル「やっぱ冷房付きの車両は最高だな、オイ!!」
こまち「あ、ああああの、声大きいです・・・」

こまちちゃんは恥ずかしそうに俺に注意する。
たまには俺もスカッとしたいのである。

ハル「いいじゃん、バス誰も乗ってないんだし」
こまち「そうですけど・・・。
今日は土日だけあってほぼ貸切ですね」

乗っている乗客は4、5人程度しか乗っていなかった。
子供連れなどいなく乗っているのはお年寄りや主婦だけだった。

ハル「こまちちゃん、いつもバスで行っているんでしょ?」
こまち「バスは帰りに使うので、往路は友人と歩いていっています」
ハル「それにしても、このバスってもとが閑散としてるんじゃないの。占領し放題だし」
こまち「いえ、この次のバス停でたくさん乗ってくるんです。
次のバス停は駅前ですから」
ハル「じゃ、そこまで席2人分占領しちゃおうか」

とりあえず俺とこまちちゃんは一番後ろの5人がけの席に座った。

ハル「ほら、バスの中がほとんど見渡せるよ」
こまち「特等席ですね」
ハル「このまま席3人分陣取って、寝ようかな」
こまち「ハル先輩って・・・」
ハル「ん?」
こまち「意外と子供っぽいところもあるんですね」

じ〜と見つめていたこまちちゃんが静かに言った。

ハル「え!?」

俺はその場の空気を読み、少し恥ずかしくなる。

ハル「それは、美春の影響だからだ。あいつのガキな面が俺に回ってきたんだよ」
こまち「でも私達の中では、ハル先輩は大人っぽいイメージが大きいです」
ハル「そうか? 部活ではこんな感じだけどな」

俺は部活の後輩とはバスの中で一番後ろを常にキープして雑談したり、貸切になるとガキのように盛り上がる(運転士の方、ごめんなさい・・・)

ハル「こまちちゃんはどっちの俺が好き?」

こまちちゃんは驚き、顔が徐々に真っ赤に染まる。

こまち「そ、それは・・・両方・・・好きです・・・。
大人な先輩も・・・無邪気な先輩も・・・」

やっぱみんなちゃんとクラスメートや気になる先輩・後輩を見ているんだな。
俺、兄貴と一緒でそんなところにも関心がないからな・・・。




こまち「プールに着きましたよ」

俺らはバスの出口に行く。

ハル「あぢぃ・・・。バスに出た瞬間、熱風が」

バスの床下から出る熱風が俺の顔にかかる。
俺は思わずバスに戻ってしまった。

こまち「バスから出たくないですね」
ハル「ホントだ。このまま折り返すか」

こまちちゃんは苦笑い。呆れているのかもしれない。

こまち「それじゃ来た意味がないですよ。すぐに入場券を出して着替えましょう」
ハル「そうだな」

俺らはバスから降り、プール入り口へ直行した。

こまち「早く着替えましょう」

そして入り口を入り、真っ先にロッカーに向かった。

ハル「やっぱ日陰は涼しいな」
こまち「ええ、クーラーも要りませんね」
ハル「んで、何でロッカーの前なんかに? 更衣室には行かないの?」
こまち「実は私、もう服の下に着ているんです」

こまちちゃんは胸元の襟を伸ばし、俺に見せる。そこにはわずかながら、紐が見えた。

ハル「マジ? 俺持ってきただけなんだけど・・・」
こまち「じゃあ更衣室に行きましょう。今なら開園して間もないのでいくらか空いていますし」
ハル「ああ」

俺は更衣室で水着に着替えた。こまちちゃんには近くで待たせてもらった。
数分後。

ハル「どうだ」

俺は更衣室のドアを開けた。

こまち「腹筋が割れてる・・・!」

まぁ、運動系の部活に入ってるしな。

こまち「私の水着はどうですか?」

こまちちゃんは性格にしては意外と大胆な紐パンの水着を着けていた。

ハル「うん、色っぽいと思うよ」
こまち「え・・・色っぽい」
ハル「どうかした?」
こまち「いえ、そんなこと言われると恥ずかしいです」

しっかし優等生なこまちちゃんがこんな露出度高めの紐パンを着けるなんて・・・。
萌さんと感じが一緒だな。

こまち「この水着、友達からのおすすめらしいので買っちゃいました」
ハル「ちなみにこまちちゃん、他に水着は?」
こまち「ええ・・・それがこんなビキニのようなものはなく、普通のです・・・」

女の子って一緒にプールとか夏に行きそうなイメージがするけどな。
それに、何だ『普通の』って・・・?

ハル「初めは水に慣れるために流れるプールからいこうか」
こまち「はい!」

俺らは楕円形になっている流れるプールに着水した。

ハル「おお、水に押されているな」

俺はその流れに身を任せ、クロールで先を泳いだ。

こまち「ハル先輩、待ってくださいよ〜!」

すっかり俺はこまちちゃんを忘れていた。

ハル「あ、ごめんごめん。俺、プールの中ではスライダーの次にこの流れるプールで泳ぐのが好きなんだ」
こまち「でも、このプールってお客さんがたくさんいるから泳ぎづらいのではないのですか?」
ハル「まあな。
でも、早く来れたおかげでまだ人があんま集まってないから泳げるぞ」
こまち「あ、先輩! 待ってください!」



ひとしきり泳いだ俺とこまちちゃんは流れるプールから上がった。
プールサイドから上がる瞬間のこまちちゃんは爽快感がわいていた。

ハル「こまちちゃん、次、スライダーに行かない?」
こまち「す、スライダー・・・ですか?」

どこか顔色がおかしいこまちちゃん。

ハル「え、もしかしてやったことないの?」
こまち「はい、大丈夫ですよね」
ハル「大丈夫だって。俺もついているから。どれにする?」

スライダーには3連式のスライダーと半月型をしたもの、そして覆っているスライダーの3種があった。

こまち「じゃあ、先に空いている3連式のスライダーで次に覆っているスライダーで行きたいです」
ハル「よし、わかった。行こう」




3連式のスライダーは1度に3人が滑れるので待ち時間もそれほど必要はなかった。

係員「はい、どうぞ」
ハル「いくぞ、こまちちゃん」
こまち「ええ、負けませんよ」
ハル「よーい、ドン!」

俺は即座に傾斜が激しいところで仰向けになった。
こまちちゃんはなかなか滑ることができず、四苦八苦のようだ。

こまち「先輩、速いですぅ〜〜!」

やがて俺の姿勢に気づき、真似をしてようやく滑り始めた。

ハル「ちっ、何だよ、こいつ」

俺の横を駆けぬける男が一人いた。

男「ふ・・・」

そいつを追ったが俺は差を縮めることはできなかった。

ハル「しかしここで加速をつけようとしても、奴も同じ方法で来るかもしれんな」

ザッブーン!!
プールに着水した。

ハル「くそ、2位か・・・」

このスライダーで1位になると2時間に一度起こるトーナメントの参加権がもらえる。
そのトーナメントで見事総合1位になると景品をもらうことができる。
俺は密かにそれを狙っていたが頂くことはできなかった。
俺はプールから上がる。濡れた髪を掻きあげる。
周りの女子が俺を見ている。ま、おそらく一部は俺のファンクラブの一員だろう。
が、1位を取った奴との戦いですっかりこまちちゃんを忘れていた。
俺としたことが・・・。

ハル「・・・(汗)」

上では、手間取っているこまちちゃんが焦っていた。




こまち「先輩、すごいです。熾烈な争いでしたね」
ハル「まあな、1位にはなれなかったが・・・」

こまちちゃんと一緒にいるところを見られると厄介なことになる。
ファンクラブの人に気づかれないうちに俺らはそそくさと次のスライダーの列に並ぶことにした。




ハル「げっ!」

そのスライダーはさすがというか、人気施設でもあるため長蛇の列が出来上がっていた。

こまち「待ち時間60分ですよ。他にします?」
ハル「いや、どちらにせよ待ち時間に時間帯は関係ない。ここで待とう」
こまち「先輩って、徳川家康型ですか?」
ハル「え、まあな」

鳴かぬなら鳴くまでまとうホトトギス、か。

ハル「こんなところに信長型の奴なんていたらそれはそれで怖いけどな」
こまち「警察が動いちゃいますよ」

報道陣も殺到だな。




そしてその時が近づいてきた。

ハル「こまちちゃんは先を行きなよ。あと、くれぐれも上体を起こさないようにね」
こまち「起きるとどうなるんですか?」
ハル「うん。
向かってくる風によって(空気抵抗によって)その人の速度が落ちるんだ。このスライダーも水だけの運動の力を使っているだけだし。さっきのこまちちゃんはその空気抵抗によって慣性による速度が上がらずビリになった。その空気抵抗をなくすために、早く進むには仰向け姿勢を維持すること」

おおっと、ここで俺の博識な一面が見れたかな。まぁ、基本中の基本だな。

こまち「そんな、怖いですよ」
ハル「そうか。俺は速いから下手するとぶつかるかもしれないぞ」
こまち「それなら、先輩が先に行ってくださいよ」
ハル「いいの、後でアドバイスとか必要になったって遅いからね」
こまち「いいです!」

そして俺の番がきた。

ハル「ひゃっほ〜!!」

やっぱりこの滑る感じがいい。
普通の滑り台とは違って風景も違う。ま、この覆っている状態じゃ何も見えないけどな。

こまち「いや〜〜〜!」

上からこまちちゃんの声が聞こえる。やっぱり初体験なんだな。
俺は上を見た。と、

ハル「ぬおっ!」

何と、こまちちゃんの足の裏が目前まで迫っていた。こまちちゃんも仰向け状態で滑っていた。
俺は確かに仰向け状態で滑っている。だが、なぜ同じ状態でこまちちゃんのほうが・・・そうか!
さっきの俺の計算に、体重を入れるのを忘れていた。
摩擦の力が若干働いている。いくら同じ状態でも物体の物質量が大きいとその間の摩擦力も大きくなる。
女子の体重は男子よりも軽い。それにこまちちゃんは小柄だから俺の体重を1とするとおよそ0.7くらいか。
摩擦の力もこりゃ違いに差が出るな。
ってか、早く止めなきゃ。

ハル「こまちちゃん、上体を起こして!」

俺はこまちちゃんに叫ぶ。

こまち「な、何ですか?」
ハル「上体! 上体を起こして!!」

どうやら下方の俺の声があまり聞き取れないらしい。

こまち「先輩の言ったとおりの状態にしていますよ」

違う、そのじょうたいじゃない。
時、既に遅し・・・。

ドガッ!!

Finishのところで俺とこまちちゃんはぶつかった。
何とかスライダー内での衝突は免れたが、プールのところでこまちちゃんのかかとが俺の頭部に見事に直撃した。

こまち「ごめんなさい! 先輩、大丈夫ですか?」

ブクブクブク・・・。

こまち「先輩!?」




気がつくと、救護室のベッドにいた。

こまち「ごめんなさい、本当にごめんなさい」

こまちちゃんは俺の手を握っていた。

ハル「いや、俺の計算ミスだ」

しばらく、俺はこまちちゃんの涙を流している顔を眺めていた。




オバさん「これから気をつけなさいよ」
ハル・こまち「はい」





続く

あとがき
こまちちゃんのキャライメージがあんまり出来上がってなかったので、製作にもしんどかったです。
我ながら外伝っぽいですが、D.C.キャラ抜きのストーリー作るのは大変ですね。
そしてさくらパークのプールの構造なんぞ全く無視して書いてま〜す。
ハルがキザっぽくなってしまいました^^;

管理人から
部活によって性格がある程度分かるってのはありますね〜
でも大学に入ると大抵の人がテニスサークルに入ってしまうので該当しませんが。
むしろサークルに入ってない子の方が温厚だと個人的な観点からは考えてます。
話がズレましたが、のかーびぃが私的に気に入ってるこまちメインの話です。
本当はもっと早く掲載したかったのですが、SSを掲載するにはPRESENT欄とSS欄その他諸々作り直す必要があって遅れました。
あ〜しかし読んでたらウォータースライダー行きたくなってきた。
去年はプール行ってないからな〜。のんびりと遊びに行きたいところです。幸い時間はあるので。
ってまたズレた。貰ってから半年以上も経ってて本当にすみませんでした。
次は素早く掲載出来るとので1週間以内に更新させて貰います。



                                        
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