ふぅ〜、ようやく5時限目が終わった・・・。
残るはあと1時間か。さっさと終えて、さっさと帰るか。
んで、最後の教科は・・・・・・。
ハル「・・・」
・・・。
美春「春菜ちゃん、どうしたの?」
ハル「・・・」
成田「カチコチに固まってるな。体調不良か?」
美春「春菜ちゃん、一緒に更衣室に行こ。早くしないと体育始まっちゃうよ」
・・・そう、この日最後の授業、体育が残っていた。
ハル「うっ! うぐぐっ・・・」
美春「春菜ちゃん、どうしたの?」
ハル「ごめん、ちょっとお腹が痛み始めちゃって・・・」
もうこの手しかない。
さすがに体育の授業に出るわけにはいかないだろ。体は女でも、俺、男だぞ。好きで女になったわけじゃねェのに。
ましてや、更衣室なんかに行ったりしたら、俺、どうなっちまうんだ。視線を逸らしてもあたり一面は生着替えの宝庫っ!
男として夢の場だが、いざ入ろうとすると、緊張で震えが止まらない。
成田「食あたりか? よく噛んで飯は食ったか?」
美春「違うと思うよ。春菜ちゃんはここでの体育が初めてだから、緊張しているんだよ」
ハル「い・・・いや、本当にお腹が・・・」
腹痛とごまかすしかない。何とか更衣室だけは避けたい。
成田「じゃ、俺は体育があるから、あとはわんこ嬢に託す」
美春「了解!」
ハル「ぁ・・・」
成田がいなくなったところで完全に俺は、乙女達の渦に巻き込まれてしまった。
美春「春菜ちゃん、保健室の場所わかる?」
保健室! そうか、保健室に逃げても、あそこには音夢姉ちゃんがいるんだった!
くっそォ! 一体どこに逃げればいいんだ!
ハル「あ、そうそう、保健室の場所もわからないんだった・・・」
美春「そうだ、お腹が痛いんなら、ここから近いトイレ教えてあげようか?」
ハル「大丈夫、自分で探すから」
俺は更衣室へ行く女子一同から離れた。
これで俺もやっと自由の身だ。
あ、そうだ。このまま研究所に行っちまおう。こそこそと行けばみんなにもばれないし・・・。
さくら「ダメだよ、無断で帰ったらズル休みだよ〜」
ハル「げっ! さくらさん、いつの間に」
後ろには、さくらさんが俺を見ていた。
さくら「ボクはさっきからハルちゃんに声をかけたつもりなんだけどな。
もちろん『春菜ちゃ〜ん!』って言ったはずなんだけど」
ハル「・・・そりゃ気づくわけないでしょ」
俺は小さな声でボソッと『俺の名前は春巳なんだから』と言った。
ハル「それに、女子だけの体育に参加しろって言うんですか」
さくら「ははっ、しょうがないよ。今のハルちゃんは風邪で寝込んでいるっていう設定で、そのハルちゃんの代わりが春菜ちゃんっていうことになっているんだから。
女の子である春菜ちゃんを、男の子達の体育に入れさせるわけにも行かないでしょ」
ハル「俺は構わないっすよ。普段が男子だけの体育のほうで出ているんですから」
さくら「・・・でも、男の子達の体育って今、柔道やっているんでしょ」
ハル「う・・・」
そ、そういえば、今の状態の俺が強制で男子のほうの体育で授業受けたら、柔道受けさせられんだよな。
女の子の体で柔道って・・・^^; ぜってェうちのクラスの男どもは寝技を申しこむよな。
このでかい胸で押しつけられて、さぞ男どもは幸せそうに昇天!
そして投げ技とか組み手の練習のときに、柔道着がはだけ、またまた昇天!
もう授業どころじゃねェな。
さくら「まだ休み時間だって10分もあるし着替える時間はあるよ。久しぶりに授業で女の子達と遊んだら? ハルちゃんファンクラブは約9割以上が女の子だから、女の子の気持ちとかもわかるかもよ」
ハル「・・・どうしても帰るのは駄目ですか?」
さくら「だ〜め!」
俺は渋々、更衣室に戻ることにした。
ハル「俺は何も見ていない・・・。女の子の艶かしい体なんて、見ていない・・・」
俺は自分の心に暗示をかけた。とはいってもこの時点では何も見ていないが。
そして、更衣室を開けた。
美春「あ、春菜ちゃん。お腹、大丈夫だった?」
ハル「う、うん」
かろうじて美春は既に体育着に着替え終わっていた。
他の女の子達も外で遊んでいる。
美春「あとは、春菜ちゃんだけだよ」
ハル「そう・・・だね」
なんだ、この変な感じは。やっぱり異性(外見では同性)に見られるのは、こんなにも恥ずかしいものなのか。
俺は制服のボタンを外した。
美春「春菜ちゃんって、胸大きいね。何かバストアップのトレーニングとかしてるの?」
バ、バストアップ!? 知るか、そんなん!!
ハル「い、いや、何もしてないよ」
とにかく俺は自分の今の体をあまり見たくなかった。自分が女性の体になってしまったことが、未だに信じきれなかったから。
6時限目の時間がそろそろ迫ってきたため、俺は急いで体育着に着替えた。
美春「でもホント憧れちゃうよ。春菜ちゃんの体つきって、ハルちゃんが好きそうだもん。
四六時中、でれ〜としちゃってると思うよ。胸の大きい子って、ハルちゃん目がないから」
俺を変態扱いするな。
はぁ〜、今日が水泳じゃなかっただけでも幸福だ。
もし水泳になってたら、授業に集中する暇がなかったな。
乙女達の水着姿があちらこちらにあったはず。目を必死に逸らしても、つい目線は女の子達に・・・。
美春「すごかったね、春菜ちゃん。ソフトボールで3人連続三振にしちゃうなんて」
そう、つい俺は本気を出してしまったため、ボールを剛速球で投げ、3者凡退にしてしまったのである。
あ、でも俺の体の筋肉は普通の女の子と変わっていないらしい。ちゃんとあの液体を作る際に、教授はそれも計算していたのだろう。
何の目的なのかわからんが、かわいい女の子がほしかったのだろうか。美春だけじゃ教授にとっては足りないというのか。
ハル「うん、前の学校でもソフトボールは遊びでやっていたから」
いつまで俺は嘘をつけばいいんだ。正直、もう嘘をつくのにも疲れた。
でもこれで帰・・・―――
美春「あれ、春菜ちゃん。授業終わったら制服に着替えなきゃだめだよ」
そ、そうだ。着替えなきゃ・・・。
いっそのことトイレで着替えようかな。でも、明らかに怪しいよな。
ハル「あ・・・そ、そうだったね」
美春「あれれ、春菜ちゃん。もしかして見られるのが恥ずかしいの?」
美春は至って真面目に言った。少しいじわるで言っていたようにも聞こえたが、今の美春は何も考えていなかったのだろう。
風呂に入っている美春に、俺がいたずらでいつも言っている台詞だ。
ハル『なぁ、美春。見たいテレビ番組があるからさ〜、時間がねェんだ。風呂、入ってもいいか?』
美春『ええ?? だ、駄目だよ』
ハル『何だよ、いいじゃねェか。それとも何か、見られるのが恥ずかしいのか』
美春『・・・』
まさかここで美春から仕返しを食らうとは・・・。
ハル「・・・ちょっとだけ恥ずかしい」
美春「でも、春菜ちゃんの胸触ってみたいなぁ〜」
ハル「はい?」
ちょ、ちょっと待った! こりゃヤバイ状況なんじゃないの!?
何つーか、『百合』ってやつ? たまんねーぜ!
なんて言っている場合じゃねェ、ここから逃げねーと。
って、着替えている途中に逃げても、廊下で大量の男どもに見られるだけだ。
それに時間ももうねェ。
なら、手はこれしか―――
美春「はぅっ!!」
俺は美春の背後に回り、鉄拳を美春の頭部に当てた。
美春は気を失った。
ハル「今のうちに・・・」
着替え終わった俺は美春をオンブし、教室に駆けながら戻る。
ようやく俺らの教室の階にたどり着いた。
階段の踊り場で美春を降ろし、
ハル「ごめんな、美春・・・」
俺は教室に戻る。
ハル「ふぅ〜、間に合った」
成田「おや、わんこ嬢と一緒じゃなかったのか」
俺の前に成田が立ちはだかる。
ハル「え、う、うん。美春はトイレに行ってるって」
早くいつもの俺に戻りたい。
口調を女性言葉にするのも、もう疲れた(と言いながら、汚い言葉も発しているけど)
成田「ほう、しかし、結局ホントにあいつは学園に現れなかったな」
ハル「あいつ?」
成田「ハルのことだ」
ハル(ギクッ!)
俺は思わずびくっと反応する。
成田「どうした。何かハルについて情報を知ってるのか?」
ハル「い、いや、私は何も知らないよ」
成田「そうか・・・。
あいつがいないと、少し寂しいものだな」
杉並先輩みたいに、鋭くなくてよかったかも。
やっと下校する時間だ。
しかし、
女生徒「ねえねえ、一緒に帰らない? カラオケ行こうよ」
同級生から誘われた。女の子ならではの誘いか。
ハル「ごめん、ハルちゃんのとこに行かなきゃいけないから時間がないの。
また今度ね」
女生徒「えー、ちょっと残念」
ハル「^^;」
今はすぐにでも本来の俺に戻ること。
そして自由になること。
研究所に戻れば、さくらさんや教授が待っている。
俺はこれで元に・・・
不良生徒1「お〜いお〜い、何をそんなに急いでるの?」
が、商店街に入った矢先、俺は不良生徒に絡まれてしまった。
ハル「え、あ、あの・・・」
不良生徒2「こんな時間に1人でいると危ないよ」
不良生徒3「俺達とどっかあそぼーぜ」
こんな時間って、まだ夕方だっつーの。
相手は3人か。
ハル「・・・」
俺は周りを確認した。風見学園生は誰もいない。
なら、
ハル「・・・ふん」
一暴れだ!
不良生徒2「ぐっ!」
不良生徒3「がはぁっ!」
俺はまわし蹴りとかかと落としを相手に食らわせる。
別に下着が見えたって、何とも思っちゃいねェ。一暴れをするのなら、別だ。
ハル「何だ、どいつも軟弱な奴しかいねェじゃん」
不良生徒1「な、軟弱だとぉーー!!」
残る不良生徒は俺に飛びかかる。
ハル「おいおい、女の子相手に何本気になってんだよ」
そして不良生徒の拳を片手で止め、
不良生徒1「つ、強ぇ」
ハル「あんたも軟弱者だな」
不良生徒の拳が俺の顔に当たることなく、俺は不良生徒の急所を蹴った。
ハル「バーカ!」
周りを再び確認した。
商店街の人たちは驚いていたが、その中に風見学園生はいなかった。
俺は急いでその場を後にした。
少し先に、ことりさんがいた。
俺は避けようと思ったのだが、ことりさんも俺と同じく避けようとしていたので、
ことり「きゃっ!」
ハル「ご、ごめんなさい!」
肩がぶつかってしまった。
が、今の俺など見向きもしないだろうと思い、俺はそのまま走り去った。
ことり「ちょっと、あなた・・・!」
ことりさんの言葉なんて、聞こえなかった。
しばらく全速力で走って、人気が少なくなったところで、壁際にもたれかかった。
ハル「はぁ・・・はぁ・・・。そういえば、体が女の子だから、あんまり遠くへ走れないな」
本来の俺なら、研究所までとはいえないが、研究所の手前の交差点くらいまでなら行けた。
しかし、男の子と女の子の体力は違う。教授はそれも、頭の中で計算をしたのだろう。
ホントによくできた身体性別転換薬だ。
ハル「ただいま」
教授「おお〜、愛しの春菜ちゃ〜ん」
俺は鞄を教授にぶつける。
教授「ぐほぉ」
ハル「さっさと俺を元に戻せよ」
教授「こらこら、もっとかわいい言葉を使いなさい」
さくら「そうだよ、もっとかわいくしなきゃ」
さくらさんも玄関に来た。
ハル「・・・好きで女になったわけじゃないですよ。それより教授、早く俺の体を元に戻せ!」
教授「せっかちな奴じゃのぉ。お前さんのセクシーな体をわしのカメラに収めたかったのじゃが・・・」
ハル「いいから早くしろ!」
教授「昨日まであれほどの暴言を吐いた奴に、戻すべきなんじゃろうか?」
ハル「・・・わかったよ、勝手にしてろ。
カメラ撮るならさっさとな」
教授の横でさくらさんは苦笑いをしていた。
教授はデレ〜と鼻の下を伸ばしていた。
さくら「相変わらず、教授は変態さんだね」
教授「そりゃ、照れるに決まっておるじゃろ。こんなナイスバディな娘がおるんじゃから。こんなチャンス、逃すわけにはいかん!」
この、エロガッパ・・・。
さくら「でも、ボクだってここにいるんだけどなぁ・・・」
教授「じゃ、ハル。さっさと研究室に行くぞ」
さくら「ちょっとぉ〜、ボクを無視しないでぇ〜」
こうして俺の体は元に戻ったのであった。
続く
あとがき
どうも、ハーディス@海です♪
女子の体育は中学までは見れたのですが、高校になって完全に分かれてしまったので、全く見れません。
水泳の授業もないので、少し寂しいです。
ちなみに私は水泳は趣味の1つでもあります。軽く500mは行けます。
管理人から
高校の時は確かに見る率が激減しましたね〜
体育館とグラウンドだったり、柔道が増えたせいで見れなかったりと。
ちなみに女子の柔道は下に体操着とか着るので肌蹴ても意味無いですよ。
水泳は1年生の時だけあって、その時は見ることが出来ましたが、実際見たいと思うような子がいなかったのが現実です。
思えば水泳なんて長らくやってません。遊びに泳ぎに行ったりはしますが、25mすら連続して泳いでませんし。
以前から100mすら泳げませんでしたが、おそらく今は50mもキツイのではないかと・・・
ちなみにどうでも良いことですが、のかーびぃは背泳ぎが出来ませんw