D.C.外伝『ハルと呼ばれる少年』第4.9章
天枷教授のつれづれ日記「change to girl」A
翌朝。
俺は目を覚ました。
時計を見た。まだかろうじてみんなが起きていない朝の6時。

「・・・」

何ら変わりのない天井。俺はじっと見つめていた。
昨夜の教授の言った一言は、まだ頭の中に残っている。




明日を楽しみにすることじゃな




明日を楽しみにしろって言われても、何があるんだ?
特に今日の予定は何もない。単に風見学園に登校するだけ。しいて言うなら、部活がないかな。
俺はベッドから起きるため、掛け布団に手をかける。と、そこで俺は違和感を覚えた。

「?」
胸のあたりにふくよかな感触がする。
そう思うと、着ているパジャマが窮屈に思えた。

「・・・嘘?・・・・・・?」
どこかでかわいらしい女の子の声も聞こえた。美春にしては随分可愛い。
が、美春の部屋からは物音がしない。まだ寝ているのだろう。
となれば、

「声が・・・変わってる」
もう俺は分かった。

「何だよ、これっ!」
俺は女の子に変わってしまったらしい。
教授の言ったことがよくわかった。そして教授の好みもわかった。

「あのスケベじじい、後でよく覚えてろよ」
何でこんなことになったのか。
俺はあの研究室の飲料水をちょっとだけ飲んだことに、後悔をしていた。
まさかあの飲料水には、性別変更の薬が入っていたなんて、思いもしなかった。

「胸がきついな」
ぱっと見、今の俺の胸のサイズは、萌さん以上にでかい。
胸がとてもきついし、お尻もきつい。

「あ〜、もう! パジャマなんて着てらんない!」
俺はパジャマ(上半身)を脱ぎだした。
女にトランクスの下着って、かなり違和感あるよな・・・。つーか、想像したくない。
だが、

トントン!

う、嘘。誰だ、こんな時に。

「ハルちゃん、入るよ」
「ぁ・・・」

!!!
ちょっと待った、ここで入られたら困る。
声が変わっているから、むやみに返事もできないし、この格好で外に逃げ出すのもパジャマがきついから出られない。
つーか、今の格好じゃ外にも逃げ出せない。

「まだ起きてないの、ハルちゃん」
外で美春の声が聞こえる。
美春がここからどこかに行ってくれればと俺は願っていた。

「教授さえいれば・・・」
そうだ、教授だ。教授が来てくれればそれでいい。
頼む、来てくれ教授。さっきの暴言は撤回するからさ。

「入っちゃうよ、ハルちゃん」
やめてくれ、美春。ここで入られたら・・・

ガチャ!

「あれ、ハルちゃん。まだ寝てるのかな」
美春は俺の部屋に入り、俺を探した。
真っ先に美春は俺のベッドを確認する。しかし、そこに俺はいなかった。

「ベッドにはいないってことは、もう起きたのかな」
美春は俺が起きたことを確認し、部屋を出て、ドアを閉めた。

・・・。

「・・・危なかったぁ」
俺は美春との仲がこれで終わると思っていた。
俺は押入れに隠れていた。さっさと私服に着替えておこう。制服を着るのも、この状態じゃぁ・・・なぁ。

トントン!

「・・・」
美春のやつ、また戻ってきたっていうのか。
俺は再び、押入れに隠れた。

「わしじゃ」
俺はほっと安心した。上半身の服のボタンを全て外した状態の俺は、部屋のドアを開けた。

「な、何ちゅう格好をしておるのじゃ!?」
「・・・この身体にさせたのは誰のせいだっつーの」
教授が入る。と、廊下で、

「あれ、ハルちゃんは部屋にはいないよ、教授」
美春!?
俺はまた急いで押入れに隠れた。

「み、美春、外で待ってなさい」
「でも、部屋にハルちゃんはいなかったよ」
「ぬぅ?」
ここにいるよ、教授。俺はここだ。

「なんじゃ、ハルはいないのか?」
「うん、そうだよ」
ちょっと〜、俺はここだって〜

「どこに行っておるのじゃ、あいつは」
「さぁ、美春にもわからないよ」

バタンッ

「・・・ちくしょ」
何でこんなことに・・・
俺は後悔していた。押入れから出てきて、着替えを始めた。

ガチャ!

「・・・え゛?」
誰かが入った。ちなみに俺は上半身はモロ出しだ。
俺は慌ててパジャマで胸を隠した。朝から一苦労だ。

「!!」
「・・・俺だよ」
二度も同じ反応を示すか?

「やはりかわってしもうたか」
「教授、いた?」
美春までも入ってしまった。女の体になってしまった俺の体を美春はマジマジと見ていた。

「・・・」
「・・・だ、誰」
「え・・・」
やばい、言葉が出ない。
だからって、全く別人の名前を出したって、俺の彼女と勘違いされるだろうな。
でも返答がなければ、怪しまれるし・・・

「わ、わしの親戚の娘じゃ」
咄嗟に教授が言った。よく言ってくれた、教授。

「何だ、てっきりハルちゃんと何か関係のある人かなって思っちゃったよ。
美春とは初対面だよね。天枷美春です。よろしくね。」
「・・・は、はい、よろしくお願いします」
こうなりゃ、教授の親戚を演じなきゃならんな。

「でも、何でハルちゃんの部屋に入っているの?」
へ、返答が思いつかない・・・
つーか元々、ここは俺の部屋だっていうのに・・・

「ええ、い、いや、ここは・・・だ、誰の部屋かなぁ〜と思って」
「そういえば、パジャマ姿でハルちゃんの部屋にも入っているし・・・」
美春は怪しいと感じ、じろ〜と俺を見る。

「その今の格好・・・すご〜く怪しい」
そういや、俺、まだ着替えている状態なんだっけ。上半身裸だし・・・。

「そ、その・・・」
「こいつは、夜行列車でここまで来たのじゃ。だからここにな、朝についてな、とても眠いんじゃ。
じゃから、わしがハルの部屋に連れ込んだのじゃ」
教授が咄嗟にフォローしてくれる。

「あのパジャマ、ハルちゃんのと同じだね」
「あ、あれはな、こいつの持ち込んだやつなのじゃ。偶然じゃな、ハルの寝間着と同じとは」
「じゃぁ、ハルちゃんは?」
「さぁ、あいつは・・・部活じゃろ」
「でも、今日は部活ないとか言ってたよ」
う、さすがは美春だ。ファンクラブ参謀だけある。

「朝のジョギングじゃろ。もっと鍛えたいとか言ってたからな」
勝手なこと言いやがって、クソじじい。

「そうなんだぁ。じゃああと少しでハルちゃんは帰ってくるね」
ほっと胸を撫で下ろした美春は1階に駆け下りた。

「ちょっと、俺は一言も鍛えるなんて―――」
「・・・やはり飲んだのか」
「・・・」
教授は至って真面目だった。

「ごめんなさい」
「困った奴じゃ」
「そもそも、教授、あんなの作って、何の目的で使うんだよ」
「ぬ、そんなのわしの勝手じゃ」
ホントに勝手なじいさんだ。

「それに、今日は学園だって休みじゃないんだ。俺はどうしたらいいんだよ」
「女の体になっても、口調が汚いな、お前。せっかく容姿がいいというのに、口調が汚かったら、幻滅じゃ」
教授は俺の体をジロジロ見る。その顔つきは、完全なるスケベじじいだ。鼻の下を伸ばしている。

「うるさい、好きで女になったわけじゃねェ」
「ふむふむ、わしの推定じゃと、B94・W59・H90といったところじゃな」
「何!」
「まぁ、いいわい。今日はここで休みなさい」
「ちくしょ、皆勤賞を狙ってたのに」
「じゃあ行くか?」
「行きたいけど、この体で俺の名前言っても、信じてくれる人なんて、いな・・・」
と言いかけたが、該当する人が1人いた。

「わしが芳乃に言う。ハルの代わりで登校するってな」
「・・・」
「それと、厄介なことにならんように、お前さんが女になったことは、秘密にな」
「さくらさんには、もう知られていると思いますよ」
「あやつは別じゃ。お前さんが女だというのは、わしと芳乃、そしてお前だけの秘密じゃ」
「ああ。でもよ、俺の名前はどうなるんだ? 春巳のままじゃバレちまうぞ」
「そういえば、そうじゃったな。じゃ、今日だけお前さんの名前は―――」




「よろしくね、春菜ちゃん」
何とか風見学園まで来れた。
しかし、何で風見学園の制服がうちの研究所にあるんだ? しかも女子用。
ま、美春ロボのためかもしれんが、少しサイズが小さいな。特に胸が・・・。

「う、うん、よろしく」
それに、教授から短時間で女の子の口調を伝授してもらったんだっけ。結構実践がきついな。
俺だって普通に話したいのに・・・

「何かわからないことがあったら、言ってね」
美春って、結構親切なんだな。ま、俺が鈍感だったのかもしれんが・・・
そういえば、下半身がスウスウするな。スカートなんて当たり前だが一回も着たことないから。

「春菜ちゃん、トイレに行きたいの?」
「え? そういうことじゃ・・・」
「トイレはね、廊下の突き当たりにあるよ」
「あ、ありがとう・・・」
しょうがないので、俺は廊下を出た。と、

「ん?」
「・・・!」
杉並先輩とこういう形で対面してしまった。はやくこの場から逃れなきゃホントに厄介なことになる。

「おや?」





続く

あとがき
どうも、ハーディス@海です♪
ありがちな話ですが、どうしても主人公を女にしたかったんです。
そういうこともあってか、この話の内容が少々『12禁』っぽくなってしまいました。
中にはちょっとヤバめの部分もありますが、何とかとどめてありますので^^;

管理人から
D.C.系では存在品い90越えですねw
しかしまぁ実際胸があるって肩が凝るって本当なんですかね。男じゃ一生分からないことですが。
SSで12禁ってのは基準が微妙ですね。まぁ絵がありなら12禁くらいっぽいですが。
結局1話から1週間も経ってしまいました。遅れて本当にすみません。
次は今月中に更新出来ると良いんですけど・・・



                                        
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