D.C.外伝『ハルと呼ばれる少年』第4.5章
「怪我・・・」A
保健室は意外にすぐに近かったので、さほど時間はかからなかった。

ハル「失礼します」
音夢「美春!? どうしたの!」

音夢姉ちゃんは驚きの表情を隠せない。

美春「・・・」

美春は大好きな音夢姉ちゃんの問いかけに応じようとしなかった。段々と、瞳が潤ってきていた。

ハル「実はこいつ、ハードルで無茶をしすぎてしまって・・・。
右脚を思いっきり上げたら、急に脚を痛めてしまったんです。特に、太腿とかかな」

俺は事のいきさつを音夢姉ちゃんに説明した。

音夢「よく無茶をする子だから・・・」
ハル「美春のやつ、こんな怪我が今まで結構起こっていたと思いますよ。
2年前だって、生死を彷徨うかというほどの怪我を負っていましたから」

まさか、ロボ美春の出番ほどの怪我じゃないよな。
あいつはあいつなりに美春になりきっていたが、俺の記憶はさすがに覚えていなかった。そうなると、俺も近寄りがたかった。
だから、美春の怪我が軽く済んでほしい。
それに、ハルちゃんファンクラブの実権を握っているのは美春だし、欠席されたら、一体どうなることやら・・・。

音夢「怪我についてはよく私もわからないから、とにかく応急処置はするね」
ハル「ええ、お願いします」
音夢「あと、学校が終わったら、近くに病院があるから、そこに行ってね」
ハル「病院?」

この辺りに大きな病院があるのは知っていたけど、場所はわからないな。
ここに再来した時に1回あったけど、あれは萌さんによって運ばれたわけだし、小さい頃にもあったけど、あれも運ばれて・・・。
俺自身で行ったことはなかったはず。

音夢「はい、これ」

音夢姉ちゃんはメモ用紙に簡単な地図を書いてくれた。

ハル「ありがとうございます」
音夢「あと、美春に1つ言うことが・・・」

音夢姉ちゃんは、

音夢「あんまり、大げさな行動はしないでね」

ぐずりと涙を流している美春の鼻の頭を、手でちょこんと叩きながら言った。
そして感極まった美春は、

美春「うわわわああん!!! 音夢せんぱぁい〜〜〜!!!!」

美春は音夢姉ちゃんに抱きついた。しかし、右足が不十分なため、音夢姉ちゃんのところに倒れこんだ。

音夢「ちょっと、美春」

美春は音夢姉ちゃんの胸(まぁ、当たり前だけど、服越しから)に顔を押しつける。

美春「うわわわああん!!!!!」

ホントに音夢姉ちゃんのことが大好きなんだな、美春って。
しかし美春のやつ、涙を音夢姉ちゃんの胸で拭いているとこがなんとなく、アダルチックだな・・・。

キーン、コーン、カーン、コーン。
授業が終わったようだ。

ハル「さ、十分気が済んだろ。帰るぞ」
美春「え、帰るって。制服まだ着てないし」
ハル「脚を怪我してんだろ。着替えれるのか?」
音夢「着替えれるんだよ。ただ、1人じゃ無理だけど」
ハル「え・・・」

俺が、美春の着替えを手伝え、と・・・?

音夢「あ、今、変な想像したでしょ」
美春「ムッ」
ハル「い、いや、してません、してませんよ」
音夢・美春「・・・エッチ」

この2人のダブルアタックはかなりダメージを喰らう。

ハル「と、とにかく、教室に戻るぞ、美春! 肩、貸してやるから」
美春「うん・・・」
音夢「お大事にね」

俺らは保健室を出た。

ハル「成田!」

と、出た瞬間、成田が待っていた。

成田「どうだ、美春の調子は」
ハル「あんまり、いいとはいえない」
美春「肉離れかもって・・・」
成田「そうか・・・」

今回の成田は表向きな杉並先輩に似た性格はなく、真面目に美春を心配していた。

成田「お前らの上履き、持ってきてやったぞ」
ハル「すまない、成田」

俺と美春は上履きに履き替えた。ただ、美春の場合は、俺が履かせたが。

ことり「大丈夫、美春ちゃん」

何と、ことりさんも、俺らを待ってくれていた。

ハル「え、ことりさん、何でここに」
ことり「だってびっくりしたんだもん。グラウンドを見ていたらいきなり美春ちゃん、倒れていたんだから」
美春「白河先輩・・・」
ことり「肩、貸しましょうか?」
ハル「え、ええ。お願いします」

じつのところ、俺だけじゃどうにもバランスがとれていなく、もう1人必要だった。
ことりさんが来てくれたおかげでバランスは綺麗に整った。あとは、成田が上履きや筆記用具などをもってくれるし(要は雑用だな)

ハル「あの、ことりさん」
ことり「何ですか?」
ハル「こいつ、自力で着替えるのがおそらく無理っぽいので、手伝ってもらえませんか?」
ことり「いいですよ」

ことりさんは笑顔で応対した。

突如、またも美春は涙が溢れ出した。

ハル「泣くなよ! みっともない」

俺らは廊下を歩いていた。
階段も1歩1歩を大事にし、昇る。
そんな状況下で美春はまた泣き出しそうだった。

美春「だって、みんな、こんなにも、心配してくれて、いるんだもん・・・」
ハル「何を言っているんだ、何かあったら、お互いに助け合うってのが、親友ってものだろ」
ことり「そうですよ、こういう時に助け合わなくちゃ」
美春「・・・美春、感激です」
ハル「これで、親友の大切さがわかったろ」
美春「うん」
ことり「より友情が深まりましたね、私たち」
ハル「ですね」
美春「うぅ・・・また涙が・・・」
ハル「ま、たまに泣きたきゃ、思いっきり泣くのも悪くはないな」

気がつくと、俺らの教室の前に着いていた。

ハル「では、ことりさん、あとは頼みます」
ことり「了解です」

俺は教室のドアを開けようとしていたが、

成田「あんまりすぎないか・・・」
ハル「何が?」
成田「俺のことが・・・俺のことを・・・一言もいじってくれないとは・・・」
ハル「・・・だって、成田だもん」




それからというもの、美春は松葉杖を使うほどではないが、俺の肩を借りて登下校する形となった。
美春の要望でおんぶして登校する時もときたまあった。
ハルちゃんファンクラブというのはホントにあってよかったのかもしれない。
俺を見て、美春のボランティアが増え続けていた。少し甘やかしすぎるくらいに、みんな、美春を心配してくれている。
ちなみに怪我は「肉離れ」だった。




美春の脚が少し良くなったある時、俺と美春は、ことりさんに夕食を食べに来ないかと誘われ、下校の時にことりさんの家に寄り道した。

暦「いらっしゃい、仲良しカップル」
ハル「単なる兄妹ですよ」

ちなみに、俺はまだ自分が兄と考えている。

美春「違います、姉弟です」

やはり3月16日と3月17日じゃ、美春のほうが姉ってことになるのか・・・。

ハル「あの、ことりさんは?」
暦「まだ帰ってきてないけど、じきに帰ってくるでしょ。先に部屋で待ってて」
ハル・美春「はい」




暦「おかえり、天枷姉弟がご到着」
ことり「え、もう来ているんだ〜」

私は急いで、私の部屋に急いだ。制服のままだけど、そんなことは気にしない。
と、部屋の前で、私は足を止めた。

美春「んぅ・・・」
ハル「ここはどうだ?」
美春「あ・・・い、痛い・・・」
ハル「そ、そうか、じゃあ、ゆっくりいくぞ」
美春「う、うん・・・」

私はハルちゃんと美春ちゃんの会話をドア越しに聞いていた。
何をしているのか気にもなったが、何となく今入ったら、お邪魔な気もしていた。
なので、そのまま聞き続けていた。

美春「あっ・・・くぅ・・・」
ハル「おい、変な声を出すなよ」
美春「だ、だって・・・い・・・痛いんだもん・・・」
ハル「・・・ったく。じゃ、そっといくからな」
美春「はぁぁ・・・ひぅぅぅぅぅっ!!」
ハル「お、おい」

もう我慢できなくなった私。
私は豪快にドアを開けた。

ことり「ちょっと、私の部屋で何をしているの!?」
美春「あ・・・」
ハル「え・・・?」

私は2人を見て、目を丸くした。

ハル「何って、見ての通り、美春の脚のリハビリですよ」

ハルちゃんは美春ちゃんの前に立ち、両手をつないでいた。
美春ちゃんは右足を少し浮かしていた。

ハル「ははぁ〜ん。さてはことりさん、何か変な想像でもしましたね」

ハルちゃんは不気味な笑みを浮かべる。

ことり「ええ、べ、別に、そんなこと考えていませんよ(汗)」
ハル「まあいいでしょう。
実は、音夢姉ちゃんから、定期的に美春の脚のリハビリをするようにって言われていて、
ことりさんが来るまで、俺の監修の下、ここで美春のリハビリに徹底的に付き合っていたんです。
しかし、まだリハビリを始めて1,2日しか経っていなくて、美春は怖がるし、変な声出すし、大変なんですよ」
ことり「でも、誤解しちゃうよ」
ハル「すみません。あとことりさん、何か美春が喜ぶようなリハビリ法とか見つかりませんかね」




ことり「リハビリ法?」
ハル「特に、俺が望んでいるのは、脚の痛みなんてすっかり忘れてしまうリハビリ法」
ことり「バナナとか使ってみればいいんじゃない」

俺はそれを三度もしてみた。
しかし俺がバナナの皮で滑り、軽い打撲をし、美春より俺のほうが怪我をするだろうと予測したので、ひとまず保留。

ハル「バナナにうってつけのものってあるんすかね」
ことり「それなら、私の手料理にバナナも入れましょうか?丁度作ろうとしていましたし」
ハル「あ、それいいっすね」
美春「お願いします!」

美春はやけに張りきっている。
やはり大好物になると、疲れや痛みなんて忘れるのだろう。
何と、何事もないように、只今両足で立っている。

美春「!」
ハル「?」
美春「い、痛たた・・・」

まだまだ回復は先の話か。
しかし、料理は効果的だ。俺はあんまり料理はしないほうで、バナナ料理なんて一度も手をつけていない。
ことりさんがいてくれて、ホント丁度よかった。美春の脚の回復は少し早くなりそうだ。
で、結局、リハビリ法は見つかったのかな。




美春「おいしい!」
ことり「ありがとう」
ハル「うまいですね」
暦「しかし、ハル、女中が3人もこの家にいたら、落ち着かないだろ?」
ハル「え、ええ^^;」

暦先生にことりさん、俺の隣には美春がいるもんな。
こうやって男1人に女3人での夕食なんて初めてだから、緊張もするなぁ。

ことり「ハルちゃん、今日はここで泊まったら?」
ハル「と、泊まり?」
暦「そうだ、泊まってけ。時間ももう遅いし、丁度お前たちは制服の格好だもんな。
この家から登校できるだろう」
ハル「美春はどうだ、ここで泊まるか?」
美春「もちろん」

おいおい・・・、何でそんな当たり前のように即答するんだっつぅの。

ハル「本当にいいんすかぁ?」
暦「ああ、お前たちの家には私から伝えておく」
ハル「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて」




ことり「そういえば、ハルちゃん。お風呂とかどうしてるの?」
ハル「お風呂? 俺は普通に入っていますけど・・・」
ことり「そうじゃなくて、美春ちゃん、脚を怪我しているんでしょ?どうやって美春ちゃんはお風呂に入っているの?」

ことりさんの部屋にいることで、少しのぼせ気味な俺は、ことりさんと話していた。
ちなみに美春はことりさんのベッドで昼寝(夜寝?)をしている。

ハル「女性スタッフとかが美春の脚をサポートしているんですよ。そっと風呂に入れて・・・。
俺も美春が風呂に入っている所を見たことがないからわからないんですけど・・・」

そりゃ、いくら美春でも、俺が覗いたら、風呂桶とか投げてくるだろうな。
投げるところなんか、音夢姉ちゃんのように。

ことり「じゃあ、今回は私に任せてくださいよ」
ハル「え、やり方とか・・・」
ことり「でも、お姉ちゃんにやらせてあげるより、私のほうがいいでしょ。美春ちゃんもきっと喜ぶだろうし」
ハル「お願いします」

俺は一礼した。




その夜は美春はことりさんと一緒に寝て、俺は1室部屋が空いていたので、そこで寝ることにした。
白河家にお泊りした貴重な体験だった。

美春編終了
次号ハル編





続く

あとがき
どうも、ハーディス@海です。
これは肉離れした時に思ったことです。
とはいっても、ことりの家に泊まるというのは、私の理想です。
何か、この回の話は少し趣旨が変わっている所もありますが、気にしないでください^^;

管理人から
勘違いしちゃうことりが可愛いですね〜
しかし肉離れどかしたことないので、どの程度の痛みなのか全く自分には分からないです。
美春、ことりって本編では全然絡まないので、こういう風に絡ませれるのはSSの特権ですね。



                                         
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