ハル「うぅ・・・ねみぃ・・・」
俺は朝から眠かった・・・。とても・・・とても・・・・・・・。
美春「おはよ、ハルちゃん」
ハル「ん、今日はお前が当番か」
大分『ハルちゃんファンクラブ』という言葉にも慣れた。
しかし、その同盟の仕事内容は全てこの美春が事実上の実権を握っている。
何かやっかいな事がありそうだが、今の所これといったことは起きていない。
ハル「なァ、美春」
美春「うん?」
ハル「・・・」
美春「・・・?」
ハル「・・・」
美春「・・・」
ハル「・・・おやすみ」
俺は再びベッドで体を休める。
美春「あ、寝ちゃだめだよ」
俺は瞼を閉じながら、美春に反論した。
ハル「しょーがねぇだろ。昨日に限って、なぜか寒くて眠れなかったんだから」
美春「寒かった?」
ハル「エアコンの設定を変え過ぎたら、エアコンが壊れた」
その瞬間、美春は大いに笑いだした。
恥ずかしい・・・。大体、設定を変えすぎて、エアコンが壊れるなんて、今まで聞いたことないぞ。
どうなっているんだか・・・。
美春「それに、今日は休みじゃないよ。ちゃんと学校に行かなきゃ」
ハル「もういいよ、今日ぐらい休ませてくれ」
俺はとても眠たかった。体がだるい。あんまりこんな日はなかったのだが、エアコンの故障なだけで、こんなにも代償が大きいものなのか。
美春「朝倉先輩みたいになってもいいの?」
ハル「・・・やだ」
美春「一度長時間体を起こしたら、もう目が覚めるんだよ」
目が少しばかり冴えてきた。
ハル「おはよう、美春」
俺はいつものように美春と登校した。
美春「今日はハードルがあるんだよ」
ハル「ハードル? 最後の授業にか?」
そういえば、体育着持ってきたかな・・・。
俺は鞄の中を開けてみた。
ふぅ、何とかある。寝起きが悪いと、寝ぼけていて、何か忘れていそうな予感があるんだよな。
時に、それは的中する時もある。
ハル「なぁ、美春。シャーペン2本持ってないか?」
美春「え、忘れたの?」
ハル「・・・あ、ああ、ペン一式を・・・」
要は、筆箱を家に置いてきたのだ。俺としたことが・・・。
しかし、美春は特に抵抗もなく、難なく受け入れてくれた。
美春「わかりました。この『ハルちゃんファンクラブ』代表である天枷美春が・・・」
ハル「はいはい。使わせて頂きます」
美春の長ったるいセリフは今まで事あるごとに耳によく入る。
確か、「この『ハルちゃんファンクラブ』代表である天枷美春が、首謀天枷春巳様の力に貢献すべく、
そなたのその要望に喜んでお受け賜ります」だっけかな。
本当にファンクラブなんてあってよかったものなんだろうか。
杉並「おはよう、諸君」
ハル「杉並先輩」
背後からいつものように、ぬっと出てきた。
しかし、今日は傍らに成田の姿が見えない。
ハル「今日は成田と一緒じゃないんですか?」
杉並「あいつは、本日は体調不良で静養。
調子が良ければ午後にでも現れる」
そういえば、あいつ体育が好きだもんな。
時々女子と合同での授業ともなると、あいつなりに余計にはりきっているし。
杉並「しかし、ハル坊」
ハル「ハル坊?」
杉並「お前の新しい名だ」
ハル「・・・いらないです」
杉並「お前は罪深き男よ。あの学園のアイドル2人を、お前のファンクラブのモノにしたんだからな」
おそらく、ことりさんと音夢姉ちゃんのことを言っているのかな。
ハル「別に、あれは美春が・・・」
あれは無理やり美春が加入させたものだ。とはいっても、加入した人たちはみんな喜んでいたけどな。
杉並「気をつけろ。特にその学園のアイドル2人の親衛隊どもにはな」
ハル「親衛隊?」
ファンクラブ=親衛隊ってことだろう。杉並先輩はそそくさと学園に入り、姿を消す。
美春「は、ハルちゃん・・・あ・・・あれ・・・」
美春はこわばった表情で先を指した。
すると、
男生徒「おい、ハルがあそこにいるぞ!」
上級生「よぉし、一同、任務を言う。今から、天枷春巳を撃退!」
学園の正門で、男どもが誰かを待ち伏せしていた。
そして「おーーーー!!!」という喚声をあげる。中には物騒なもの『金属バット』を持った奴までいる。大げさすぎる・・・。
おそらく、あれが音夢姉ちゃんとことりさんのファンクラブの会員なんだろう。
音夢姉ちゃんとことりさんが俺のファンクラブに入ったことで、双方の会員の全員が憤りを覚え、俺をこらしめる、と。
美春「は、ハルちゃん・・・」
美春は呆然としている。
ハル「・・・」
普通の男子生徒は俺を見ても、フツーにスルーしているのに、
音夢姉ちゃんとことりさんのファンクラブに関係している男どもは、メラメラと闘争心を燃やしている。
ははぁ〜ん、俺をこらしめようと。
だが、俺を誰だと思っているんだ。昔、心を閉ざした不良の少年だった俺に、拳を交えたいなんて、無謀にもほどがあるぜ。
いつでもかかってこい!
ハル「・・・上等じゃねぇか、テメェら。かかって―――」
美春「ハルちゃんファンクラブ会員集合ーー!!」
ハル「!?」
俺が、けんかをかおうとした矢先、美春の一声と同時に、俺の周りを女の子達が囲む。
女生徒「我がハル先輩に何をするつもりでいるのですか!」
そして俺の周りには女の子オンリーの包囲網が出来あがる。
ハル「な、何だ、これ」
近くの女の子が俺に答える。
少女「ハル先輩の身に何かが起こりそうになったら、私たちがハル先輩をお守りします!」
ハル「え?」
な、なんだ!? まるで俺の防衛隊が出来上がっているではないか。
美春「美春が作ったんだよ」
原因はこいつかぁ!
ハル「しっかし、やっかいなことになっちまったな・・・」
男どもは大体、30人くらい。それにひきかえ、こっちは女の子は10人。
どうみても、こっちが不利である。
女上級生「ハルちゃんに触らせはしません」
男上級生「ほほぉ、えらく威勢がいいな。しかし俺らに勝てるとでも思ってるのか」
少年「たいした力なんてねェくせによ」
しかし、俺を囲った女の子達は前をゆく。
少女「私たちに、暴力をしようっていうの。暴行罪で通報するよ!」
男上級生「っ・・・」
女上級生「暴力行為は、許されるとでもお考えのつもり?」
その瞬間、親衛隊の男どもは後ずさり。
そうか、男が女に暴力をするっていうのは、確か、法に違反しているって聞いたような・・・。
少女「学園の校則をよく見直しなさい!」
なるほど、男は武力で勝負しようと。しかし、我がファンクラブの女の子達は口で勝負ということか。
そりゃ、頭の回転を比べれば女の子のほうが強いよな。口論なんかも大半は女の子は勝ってるし。
そして、男どもは一斉に散った。
ハル「ふぅ〜」
俺は、何かからの解放感を覚える。
女上級生「ハルちゃん」
ハル「はい」
女上級生「いつまでも、貴方を見守り続けていますからね」
・・・。
ハル「え、ええ」
何か、朝から妙な雰囲気になったな^^;
そして時間はいつのまにかお昼を過ぎ、最後の授業、体育になった。
美春「もう、ハルちゃん。見ないでね」
ハル「着替えぐらい別のところで着替えろ!」
ハル「おっし、燃えてきたぜェ!」
成田「体育というものはこうでなきゃな。
女子(おなご)の前でなきゃ、燃えんし」
美春「あ、あはは・・・」
体育教師「じゃ、ハードルについて説明するぞ」
教師はハードルの記録について説明をした。
そして俺たちは記録をとった。
成田「では、俺の華麗なる跳躍力でも見せようぞ」
ハル「いや、跳躍力よりもインターバルの歩幅に気をつけたほうがいいと思うぞ・・・」
成田はそれなりにハードルを『華麗に』飛び越える。
観衆「「「おおお〜!」」」
どよめき声が聞こえる。まぁ、綺麗に飛べてはいるが・・・。
教師「7秒78」
またもどよめき声が聞こえた。何と、成田はクラス内での新記録を樹立した。
ハル「あいつ、そういえば、脚が早かったけな。
いや、ハードルを飛び越えている時間が短いだけか」
そして、教師は俺の名を出す。
俺の本番が始まった。しかし、本当に体育というのは燃えるものだな。
徐々に闘争心が燃え始めた。それは俺だけでなく、
美春「おっし、いっちょやりますかぁ!」
美春も俺と同じく燃えていた。しかし、そのおかげで後にああなるとは・・・。
俺はほんの少し、調子に乗りつつ、飛び方とインターバル間の歩数を気をつけた。
そして、記録は、
教師「・・・な、7秒55・・・」
何と、成田の記録を上回った。
ハル「っしゃ! No1だ!」
俺は気づいていなかった。その瞬間、我がハルちゃんファンクラブの女子のほとんどが目を輝かせていたことに・・・。特に、
美春「かっこいい〜」
美春とかは、普段のバナナを見つめる瞳と同じくらいに目が輝いていた。
しかし、そう考えてみると、俺の価値って、バナナと一緒なのか・・・。
そんなに好意があるなら、バナナ以上に好意を抱いてくれ〜!
成田「ほぉ〜、女性陣狙いか」
ハル「別にそんなつもりじゃねーけどさ・・・」
俺はフツーにやっているだけだ。女の子目的でやっているわけじゃないってのに。
ことり「ハルちゃんって・・・やっぱりすごいんだなぁ・・・」
ことりさんのクラスでは、ミニテストの真っ只中だ。そのテストの答案を全て書き込んだことりさんは、教室からグラウンドを見つめていた。
そして、次は女子が記録をとる時間で、俺らは自由時間だった。
その間に俺は、男子とじゃれあいつつ、美春の記録でも見てみることにした。
しかし、女子のほとんどは、バーになぜかつっかかっていた。
教師「いいか、振り上げ脚を上げていないんだ。だからバーにつっかかる。
だから、思いっきり脚を上げろ!」
そして、美春の記録・・・
美春「いっきまぁ〜す!!」
相変わらず、キャピキャピとしていた。
ハル「あのバカが・・・」
美春は走り出し、バーを飛び越える。教師が言ったとおり、振り上げ脚を思いっきり上げ、1つ、そしてまた1つと・・・しかし。
美春「!!」
美春はなぜか苦痛の表情だった。
その表情を見て俺は、疲れているのだろうと思っていた。
そして美春のスピードが徐々に落ちてゆく。振り上げ脚もなぜか上がっていない。俺は少し違和感を覚えていた。
そして次のバーにさしかかった瞬間、
ドサッ
美春は飛び越えられず、そのまま前に倒れてしまった。
ハル「美春っ!」
その時の俺は何も考えていなかった。自然と美春のとこに駆けつけていた。
男子とのじゃれあいなんて、どうでもよかった。それよりも、美春の怪我が心配だった。
教師は駆けつけようとせず、記録所のところに突っ立っていた。
その時は、教師がウザイと思っていたが、やはり俺は、美春のことでいっぱいだった。
ハル「おい、美春。しっかりしろ!」
気がつくと、女子も美春のところに駆けつけていた。
美春「い、痛い・・・」
洋子「私、先生に言ってくるね」
ハル「なぁ、洋子。俺が美春を保健室に連れて行くって伝えておいてくれ」
洋子「うん」
美春の1番の親友である洋子は先生に事情を説明した。
女生徒「大丈夫・・・?」
女生徒「美春・・・」
女子の周りで、美春を心配かける声が飛び交う。
まぁ、こんな体育の授業で大きな怪我を負う生徒なんて、滅多にないからな。珍しいだろう。
ハル「心配するなよ。美春はたいした怪我を負っているわけじゃないし。
だって、考えられるとしたら、筋をつったか肉離れを起こしたくらいで、骨折はしていないんだから」
俺は女子達に言った。
これで説得力があるのかないのかわからなかったが、何か助言を言いたかった。
美春「ハルちゃん・・・」
ハル「俺の肩を貸してやるから」
美春はどことなく悲しそうな表情だった。
続く
あとがき
どうも、ハーディス@海です。
就職試験が近づく今、私は小説を書く暇がありません。
親から「勉強しろ」と言われ、PCは使えません。
というわけで、私は勉強(時にはゲームも)というものに迫られています。
あと言い忘れましたが、この怪我の話は私が怪我して思ったことをそのまま文字にしてみました。
管理人から
頂いてから5ヶ月も経ってます。本当にごめんなさい。
まだPCが故障する前からだったんで、余計に時間が経ってます。
それでは内容に。女子の前の体育で張り切るって言っても球技大会か、持久走くらいしか無かったですね、自分んトコは。
まぁ自分もご他聞に漏れず気合を入れてた訳ですが。
特に中学時代なんかの持久走の気合の入れ方は半端じゃなかったですね。
と少々話がズレましたが、やっぱりスポーツ出来るってのはステータスですよね〜