D.C.外伝『ハルと呼ばれる少年』第三章
「孤独、タイムスリップ、さくら」@
俺はいつもと全く変わらぬ朝を迎えた。
だが、俺はどことなく脳に違和感を覚えた。

ハル「何かおかしいな。昨日までの記憶とは違って、何か新しい記憶ができたような・・・」

ま、細かいことは気にしないほうが身のためだろう。




夏も終わって、新学期が始まった。
確か、この学期って『文化祭』、『体育祭』があるんだっけ。
それに俺もよくわからない『サバイバルゲーム』という行事もある・・・。
一体、どんな行事なんだ。
ちなみにやるのが11月中旬なので、まだまだ先の話だ。




授業1時間目

さくら「じゃ、新学期早々、確認テストをするよ」

クラスメートのほとんどがため息をついた。
もちろん、全員というわけでもない。

成田「・・・ふっ、その程度で弱音か」

まるで杉並先輩のような存在の俺の同級生『成田』が俺の背後からささやいた。

ハル「お前な、それをこのクラス全域に言ってみろ。一瞬にしてお前の命が縮むぞ」
成田「ほぅ〜、そうか」

こいつは俺の中学からの親友だ。
そう、初音島を出て数年経った中学校で知り合ったのだ。
そして俺が失踪して、こいつも後をついてくるかのようにこの風見学園附属に入学してきた。

ハル「まさかな、テストがいきなりくるとは・・・」
美春「ハルちゃん、夏休み前に芳乃先生が言ったはずだよ」
ハル「ん〜、覚えてない」
成田「凡人のへったくれもない言い訳だな」
ハル「何ぃっ!」

やっぱりこいつ、杉並先輩だぁ!!

ハル「バカ言うな! 俺だってお前の次に優秀なんだぞ」
成田「ふ〜ん、だが俺に勝ったことは?」
ハル「・・・ない」

簡単にこいつを紹介すると、
苦手な教科:ない
嫌いな食べ物:ない
性格:人を鼻で笑う奴
最近のマイブーム:杉並先輩と一緒にいること
好きな人:いない
とまぁこんな感じになる。
この成田という奴は決して杉並先輩に似た性格をしていなかった。
だが、ある理由により、こんな性格に変わってしまった。
熱き男になれば、優秀な生徒として時には俺に助言をくれる。
それも、杉並先輩のように・・・。

さくら「ほら、そこの2人! もうテスト始めるから静かにしなさい」
ハル・成田「・・・はい」




休憩時間

さくら「でも、入学当初のハルちゃんと成田君は随分、成長したと思うよ」
成田「そうですか?」

こいつ、先生に対しても杉並先輩の真似ている。

成田「いえいえいえ、更生してもう勉強面も春巳君よりは上を行ってますから」
ハル「こいつ・・・」

成田のおかげで話題は俺のことになってしまった。

さくら「でも、ちゃんとしてよ、ハルちゃん。美春ちゃんの成績がいまひとつなんだからね」
ハル「いや、あいつはあいつなりに精一杯頑張ってるから、許してやってくれないか。俺らみたいに、怪しい動きとかもしていないし」

美春は中の中といった、ごく平凡な頭脳をしている。
暇な時間はひたすら勉強しても、成績がいまひとつということは、陰で遊んでいるに違いないだろう。
言わなくても、想像がつくが・・・。

さくら「でも、ホント杉並君の真似似てるよ。本物と同じくらいで」
成田「あの、これは俺の性格なんですが・・・」

ちなみにこいつを更生させたのは、杉並先輩だ。そして俺を更生させたのは、さくらだ。

さくら「そんなハルちゃんも孤独が好きな不良少年にならなくてよかったよ」
ハル「まぁ、中学時代では何かと色々あったから」

そういえば1度、さくらが俺らの中学に来たことがあった。
その1度だけだが、おそらくその日、さくらが来なかったら美春に再会するまで俺は孤独を好んでいただろう。

成田「ホントだな。中学と現在では天と地の違いだったからな」
ハル「俺も、今とは全く違った生活をしてるしな」

美春と一緒の生活は初めは違和感あったが、もうそれも慣れて、今あいつとは妹同然だ。
・・・とはいっても、俺のほうが弟にされているのが現状だ。

さくら「あの時は、ボクもどう対処すればいいのかわからなかったよ」



さくら『とはいっても、あれはボクがハルちゃんの世界にタイムスリップしただけなんだけどね』





さくら年齢不詳(現在の歳)、ハル14歳、成田14歳

中2になって2学期初頭の時。

先生「こら、成田! お前、授業をサボって将来をどうするつもりだ」
成田「・・・うるせぇ。将来なんて別に、何も考えていない」
先生「飯田もだ! お前は四六時中寝てばっかりで、授業に参加しろ!」
ハル「・・・」

その頃の俺は無口なうえに、友達があまり居なかった。
それに、友達なんて必要ないと思っていた。だから、クラスでも孤立していた。
いじめというものもクラス内であったが、俺の場合、クラスの弱い奴をいじめている奴をいじめていたりもしていた。
成田は授業中に脱走したり、クラスメートとは殴り合いになったりと、まさに不良だった。

成田「あ〜あ、いいじゃないの。勉強なんかにゃ問題がないしさ」

こいつはテストの時だけ勉強をする。それもテスト前日に詰め込み式でテスト範囲を記憶している。
それで、こいつはテストで赤点を取ったことはない。だが、結果はそれほどよくはない。

先生「それはそれ、これはこれだ。態度がよくならんと、高校に行けなくなるぞ!」
成田「高校なんて、興味ない」
ハル「・・・この世に居る人たちに、興味がない」
先生「何だと!」

先生は俺の胸倉を掴んだ。
音夢姉ちゃんとヤクザとの一件があったが(音夢編2話参照)、あの時の俺はもう既にそこにはなかった。
胸倉をつかまれても、俺は表情1つ変えもしなかった。

成田「じゃ、いいっすよね。もう説教は」
先生「まだだ、帰るんじゃない」
成田「やなこった。めんどくせー」

成田はそのままどこかに行った。

ハル「・・・いつまで掴んでんだよ、おっさん」
先生「おい、お前、誰に言っていると思ってんだ」
ハル「・・・お前にだよ、おっさん」

俺は掴まれた腕を振り解き、職員室を後にした。



家に着くも、決してそこには平和というものはない。

父「おらァ、酒もってこんかい」
母「ほらょ、さっさと持ってけ!」
父「何?てめェ誰に言っているつもりだ」
母「てめェにだよ、じじい」

両親とも、酒に酔った生活を送り、俺はというと、

父「何だ、てめェ。ゲームなんかしやがってよ」
ハル「・・・うるせぇな。老いぼれじじいはさっさと引っ込んでろ」

勉強もせずかなり荒れた生活をしていた。こんな環境の中での生活が原因で俺は勉強嫌いなうえ、時には両親と殴り合いになったりする。
まぁ、俺の孤独好きな性格もここから生まれたのである。



夜9時。またもこの家族で夫婦+息子喧嘩が勃発した。
事の発端はわからないが、いつもこんな感じだ。

父「おい、バカ息子。てめぇを見てると、むかつくんだよ!」
ハル「・・・そうか、じゃあこっちからも言わせてもらう。てめェのようなささくれに言われる筋合いはない」
父「何だと、コラァ!」
母「うるせェんだよ、酒臭ェおっちゃんよ」
父「てめぇは黙ってろ!」

そして母はさっきまで父を挑発していたのに、急に俺に向いてきた。

母「あんたもあんただ。中学生がいつまで起きているのか・・・」
ハル「・・・まだ9時だ。俺の心配より、てめぇらの体の心配したほうがいいんじゃねぇのか。毎晩、酒なんか飲んでよ」
父・母「黙ってろ!!」

ちなみにこんな喧嘩がいつも続いているが、言っていることはいつも同じことだ。
こいつら、同じことをどれくらい言えば気がすむんだ。




学校に行くとなると、

先生「おい、そこの不良。どこにいくつもりだ」
成田「どこに行ったっていいだろ」

こんな有り様だ。
授業が始まると、成田はどこか教室を出る。

ハル「・・・」

ピコピコ。

俺はとういうと、授業関係なしにゲーム機を持ってきて遊んだり、寝たりしていた。



休み時間

女子「ねぇ、飯田君。消しゴムあるかな?」
ハル「・・・ああ」
女子「使っていい?」
ハル「・・・いいけどよ、昨日先公が言ってたノート写し、お前のを写してもいいか?」
女子「う、うん。いいけど・・・」

この頃の俺は、あまりクラスメートとはなじめなかった。
こんなシーンも少なくはないが、日が経つにつれ、俺に語りかける人は少なくなった。




俺と成田はその頃はあまり互いに口にはしなかったが、不良同士、何かと仲良くしていた。

成田「おまえさ、授業ばっくれんの初めてじゃねぇのか?」
ハル「・・・さあな。俺でも授業抜け出すことくらいはある」

成田はタバコを吸っていた。俺は興味がなかったので吸わなかった。
成田は飲酒をしているのかはわからないが、タバコならいつも吸っているという。
タバコなんか吸って、何が面白いのか。

成田「なぁ、お前ホントに記憶がないのか?」

突然、成田が俺のことを訊いてきた。
当時の俺はあの事故(美春編参照)の一件で記憶喪失になっていたため、美春のことしか覚えていなかった。
そして自分の名がわからぬまま、俺はほとんどの人から『飯田』と呼ばれていた。自分が本当に飯田という名字なのか確信がつかぬまま。

ハル「・・・ああ。昔住んでいたところも覚えてない」
成田「お前は、ここに来る前は初音島ってところにいたんだよな。それは覚えているのか」
ハル「・・・」

俺は頭の中で昔の出来事を思い出させようとしたのだが、美春のことしか思い出せない。
あの事故のことも記憶がうっすらだ。

ハル「・・・さあな」
成田「お前って、本当に無口だな」
ハル「・・・昔はそうでもなかったけどな」

俺の両親のせいだ。

成田「お前って、奇妙な奴だ」
ハル「・・・」

キーンコーンカーンコーン!

成田「けっ、もう終わりか。じゃ、一暴れしてくるか」
ハル「・・・勝手に行け」

こいつ、またクラス内暴力をするつもりなのか。
ま、俺には関係のないことだ。どっか、暇つぶしに本屋でも寄ってくか。
俺はまだ学校の授業があるにも関わらず、勝手に外に出たりもしていた。

この頃の俺は全く初音島の人々のことなんて考えていなかった。
・・・時々、美春のことを思い出したりしたこともあったけど。





続く

あとがき
どうも、海です♪
このシリーズもさくら編を迎えました。
今回は魔法使いとしてのさくらではなく、姉御としてのさくらが当時不良だったハルを更生させていくストーリーです。
意外にあっさりと更生すると思いますが、時間があるときに読んでくださると幸いです^^

管理人から
送って頂いてから丸2ヶ月経ってます。本当に作業が遅くてすみません。
新キャラ成田も出て来て、ここにさくらがどう絡むかが大変気になりますね。
のかーびぃの中学校はここまで荒んではなかったのでちょっとイメージがし辛いです。
それでは次回第2話をお楽しみに。



                                         
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