「音夢ってさ・・・」
卒パの練習の後、桜公園で一緒にチョコバナナを食べていたことりが突然訊いてきた。
「朝倉君のこと好きなのかな?」
「はぁ?」
思わず俺は聞き返してしまった。
「朝倉君を1人の男の人として好きなのかなって」
ことりは相変わらずの笑顔で・・・ではなく、真剣な顔で訊いてくる。
「へ、変な事言うなよ。音夢と俺は兄妹なんだぞ」
少し慌てながら俺はそう答える。
「でも、音夢の朝倉君を見る目ってなんか恋する女の子の目なんだよね。」
「そんなの分かるのか?」
「もちろん、同じ恋する女の子ですから」
「へぇ、ことりって好きなやついるんだ」
俺は真剣に驚いてしまった。
学園のアイドルと言われていることりに好きなやつがいるとは・・・
きっとそいつは半数以上の風見学園男子生徒の敵なんだろうな〜
全くそいつは果報者だな。ことりが彼女なら人生も楽しかろう。
「・・・うん。今度その人に告白しようかなって」
ことりの頬がうっすらと赤くなっている気がする。
「そ、そうなんだ」
いかん。何を慌ててるんだ俺は。思えば今日の朝もそうだったんだ。
音夢のやつが朝からことりのことが好きなのかどうかとか聞いてきたりするからだ。
そのせいで朝からことりと見つめ合ってしまったのも音夢のせいだってのに。
それなのに去り際に、ことりに見えないよう、さりげなく足を踏んづけてくるし。
「そんなこと訊かれたんだ・・・」
ことりは小さな声で何か言った。
「え?悪い聞いてなかった。何て言ったんだ?」
「いえいえ、音夢はお兄さん思いなんだなって。
そうだよね、音夢と朝倉君は兄妹なんだし、音夢の見つめる目は世話の掛かるお兄さんへの母性本能なのかな?」
ことりの中でさっきの質問は自己完結したらしいけどちょっと待て、
「俺はそこまで音夢に世話になった覚えはないぞ」
「そんなことないと思うけどな〜美春ちゃんがよく言ってるもん。『朝倉先輩は音夢先輩におんぶに抱っこなんですよ〜』って」
あいつ。ことりにまでそんなこと言いふらしてるのか。
「今度会ったらあの軽い口が簡単に叩けないようにしてやる」
「あははは、でもそれならすごく嬉しいな」
「美春を痛めつけるのが?」
「違うよ〜。音夢が応援してくれること」
「はい?」
どこでそんな話が出て音夢が誰の何を応援するんだ?
「それなら・・・」
音夢に気兼ねなく告白できるよね・・・
「それなら?」
「ううん、なんでもないよ」
「なんだそりゃ?言いかけでやめられると、すっげ〜気になるんだけど」
「ほらほらそんなこと気にしてたら人間大きくなれないよ」
「別にならなくてもいい」
『かったるいから』
ものの見事に二人の声は重なった。
「俺はことりにまでパターンが読まれてるのか・・・」
「だんだん私も朝倉君のことが分かるようになってきたって事だよ」
そう言うとことりはチョコバナナを食べ終えてベンチから立ち上がった。
「さ、練習、練習。早く秘密基地に行こ」
「あ、あぁ」
次の瞬間、俺は思わずことりに見とれてしまった。
風が吹き、桜の花びらがことりの周りを飛び回る。
その風でことりの髪が舞い上がり、桜の匂いとともにことりの甘い髪の香りを俺に届けた。
まるで夢の中にいるような不思議な感じ。
そして朝の音夢の言葉を思い出す。
俺は音夢の言うように、ことりのことが好きなのだろうか?
でも・・・
「朝倉君」
「えっ?」
「卒パ楽しみだね」
でも、今は・・・今はただ、ことりと一緒に同じ時間を過ごせるだけでいい。
この何ものにも変えることの出来ない楽しい時間を。
そして卒パでことり達の演奏が成功してくれればいい。
好きだとかなんだとか、そう言うことは置いといて、それだけで俺は満足だった。
また、強い風が吹き桜の花びらが舞った。
それはまだ桜が散る前の話。
終わり
初めて公開したSSです♪作ったSSとしては6番目というところでしょうか?
書いてはいるけど発表していないのが5つありますが、多分他は未完になりそう・・・
大体の筋書きは出来てはいますが、清書してないのばっかりです。
ことりの誕生日に合わせようとかなり短時間で作た上に、短いため自分でも何が書きたいのかよく分かりませんでしたw
ゲームの中のワンシーンを自分なりに作り変えたんですが、この日の朝の音夢とのやり取り知らない人には意味不明ですね。
ご意見、ご感想等ありましたらPROFILEよりメール、またはBBSでお願いします。
では次回作でまたお会いしましょう