ToHeart2〜Baseball Days〜
4番ピッチャーまーりゃん
「まーりゃん先輩、場所ってここで良かったですよね?」
「う・・・む」
「ここで合ってますよ、河野さん」
「でも久寿川先輩、あっちご老人ですよ?」
土曜日、サハラン球場に来たのはいいが、グラウンドにはユニフォ−ムを着たご老人がいた。

「シルバーってまさか・・・」
「そうみたいですね」
「これなら勝てそうね」
確かに郁乃の言う通りこれなら勝てそうだが、あっちは大丈夫なのか?
特に監督であろう人の足元が覚束ない気がするんだが。

タマ姉と相手の監督がジャンケンをする。タマ姉がチョキ、相手の監督がグーだ。

「ごめん。ジャンケン負けちゃった。でも先攻だから一緒よね」
「勝ったら先攻にするって言ってたけど、何か理由があったの?」
「先制した方が気が楽かと思っただけよ」
まぁ確かにいきなり追いかける立場ってのも嫌だしな。

「姉貴、ベンチは表だから3塁になるのか?」
「いえ、負けた方が選べるようになってるわ。ってことで1塁よ」
しかし向こうが後攻を選んだ理由は何だろう?7回裏に攻撃しないで済むようにしたいとか?

「愛佳、これはどこに置いたらいい?」
「え〜っとそっちの奥が良いかな」
俺は愛佳の示した場所へドリンクを置いた。まだ朝で涼しいとは言え、今は夏だ。
野球している内に脱水症状になるなんてことになったら試合どころじゃない。




「珊瑚ちゃん、これ相手のメンバー表ね」
「うちの出番やな。え〜っと・・・」
珊瑚ちゃんが凄まじい勢いでノートパソコンを叩き、繋ぎ合せたプリンターから紙が数枚出て来た。
何度見てもこの時の珊瑚ちゃんは二人羽織にしか見えない。

「ネットで調べて出て来るくらい有名な人がいるのか」
「元プロ野球の選手がいるよ!?」
「元プロって何十年前よ・・・」
「バッテリーとセンターか。見た目以上に手強そうね」
どうやら見た目に騙されると痛い目に遭いそうだ。
先攻は俺達来栖川エレクトロニクスズ。先制点が取れれば良いんだけど。

「打順はピッチャーの藍原さんが9番、キャッチャーの吉田さんが5番、センターの新城さんが4番」
「4番、5番をランナー無しで迎えるためにも初回は三者凡退がいいわね」
特に新城さんはこのデータを見るに昔はパワーヒッターだったらしいし、ランナーがいないに越したことは無いだろう。

「お客さんが増えてきたんよ」
笹森さんに言われて球場内を見回すと、ポツポツと人が増えて来た。9時前でしかも草野球だというのに。

「町興しも兼ねてるらしいですから。入場するだけで商店街で使える割引券が貰えるそうですよ」
と久寿川先輩が説明してくれた。ってことは割引券目当てか。道理で変だと思った。

「向こうのチームの胸のマーク」
「え?」
草壁さんに言われてシルバーフォックスの胸元を見る。

「キツネだぞ、うー」
「でも尻尾が多いよ?」
「あれは・・・九尾の狐か?」
遠目では分かり難いが、菜々子ちゃんの言う通り尾が多い。
狐で尾が多いとなれば九尾くらいしか出て来ない。

「ナインに掛けてるんでしょうか?」
「九尾の狐って人を惑わしたりするわね」
「変化球的な攻め方があるかも知れないわ」
多分草壁さんの言ってることが当たりなんだろうが、郁乃ちゃん、タマ姉が言ってることも的を得てるように感じた。
そう、相手はただの老人達じゃない。元プロの混ざった百戦錬磨の老人達なんだ。




「貴明さん、頑張って下さいね!」
「イルファさん!」
雄二とのキャッチボールを終えて、ベンチに戻ろうとしたところでイルファさんに声を掛けられた。
フェンス越しにイルファさんと、何と朝見送ってくれたシルファちゃんもいる。
普段は引き篭もって家から出ようとしないというのに。まぁ、それは人見知りが激しいせいなんだけど。

「応援にきてやったれす。ありがたく思うんれすね、ご主人様」
「ヒッキーが出て来るなんて雨でも降るんじゃない?」
「うるさいれす、ミルミル」
フェンス越しに口論する二人。何で仲良く出来ないんだろうか。

「貴明さん、今日の為に私が一人一人に応援歌を作って来ましたから」
「え゛っ?」
「コンピューターで管理された鮮やかな演奏と応援団で応援します」
そう言ってイルファさんが示した先には座席に音響機器が所狭しと並んでいた。

「あの・・・普通の応援歌でいいです」
「ええ!?私の作った音楽じゃダメですか?」
「とてつもなく嫌な予感がするので謹んで遠慮します。甲子園とかで聞く音楽でいいですよ」
「分かりました・・・」
あからさまにショボンとするイルファさん。だが、ここで妥協するとこっちがショボンとなりそうだ。
本当は応援もいらないって言いたいんだけど、さすがにそんなことは言えないよな〜

「あ、瑠璃様〜!」
「・・・イルファ、そのカメラは何や?」
瑠璃ちゃんを見つけて俄然テンションの上がるイルファさん。
だが瑠璃ちゃんが指さす先を見て俺も瑠璃ちゃん同様顔が引き攣った。
音響機器の方に目が行って気付かなかったが、野球中継の時に使うようなビデオカメラが置いてある。

「瑠璃様の雄姿はこの放送用ビデオカメラで一挙一動収めさせて頂きます」
「いらん!もし撮ってもビデオテープ叩き割るからな!」
「そ、そんな瑠璃様のお姿を収めようと借りて来たんですよ?」
「いらんったらいらん!そもそも実況しながらどうやって撮影すんねん」
「え、実況?」
寝耳に水である。イルファさんが実況?

「はい、実況と解説もするので楽しみにしていて下さいね。あ、そろそろ放送席に行かないと。それでは失礼します」
「こらイルファ〜!まだ話は終わっとらん〜!」
「それじゃあれす、ご主人様」
シルファちゃんに手を振りつつイルファさんが実況する光景を想像する。
メイドロボが実況?俺の想像の中では実にシュールな光景であった。




「タカくん、このみ応援に来たわよ」
「お母さん」
「春夏さん」
イルファさん、シルファちゃんと交替するかのように春夏さんが現われた。

「お弁当作ってきたから、試合が終わったらみんなで食べましょうね」
「ありがとうございます、おばさま」
タマ姉がベンチから出て来て春夏さんに礼を言った。
おばさんだと怒るけど、おばさまなら怒らないんだよな。
・・・でも多分俺がおばさまって言うと怒るんだろうな。

「本当は私も参加したかったんだけどね〜」
『あはは・・・』
俺とこのみは苦笑するしかない。本気で今からでも参加しそうだから困る。

「両チーム整列!」
「頑張ってね〜」
「はい」
「頑張るよ」
春夏さんに見送られて俺達はホームベースに向かって駆け出した。
向こうのベンチからもご老人方が駆け足で来る。意外に軽快だ。
しかし近くで見ると本当に老人だ。電車やバスで席を譲るレベルである。
でも監督以外足取りはしっかりしてるよな〜

「互いにスポーツマンシップに則ったプレイをして下さい。礼!」
「「「「「「「「「お願いします!!!!!」」」」」」」」」




「よ〜し円陣を組むのだ!」
「え?やるんですか?」
「人も多いですし・・・恥ずかしいです」
「バカもの!恥ずかしくて野球が出来るか!」
出来ると思うけど突っ込まないでおこう。どうせ言っても変わらない。草壁さんの言うことも最もだ。俺も恥ずかしい。
でもまぁせっかく練習したんだし、やらなきゃ損した気分だ。
円陣を組みまーりゃん先輩が右手を胸元に当てる。俺達も同じように胸元に手をやった。

「俺達は誰だ?」『来栖川エレクトロニクスズ!』
「誰よりも汗を流したのは?」『来栖川エレクトロニクスズ!』
「誰よりも涙を流したのは?」『来栖川エレクトロニクスズ!』
「誰よりも野球を愛してるのは?」『来栖川エレクトロニクスズ!』


3つ目については疑問だが、他は誇っても良いと思う。それだけの練習はして来たつもりだ。
あと愛佳が噛んでた気がするけど、聞かなかったフリしよう。

「戦う準備は出来ているかぁぁ!?」
『おぉおぉぉお!!!』
「我が校の誇りを胸に狙うはただ一つ!!!優勝のみ!いくぞぉぉぉ!!」
『おぉぉぉぉぉおおお!!!』

ベンチでは郁乃がやれやれといった感じなのが、俺の位置から見えた。
それと観客の人達が茫然としてるけど、気にしないでおこう。気にしたら負けだ。




「プレイボール」
「ついに始まりました来栖川エレクトロニクスズとシルバーフォックスのリーグ第1戦第1試合。実況&解説は私イルファと」
「ウグイス嬢はシルファでおおくりするれすよ」
「本格的だな」
バックネット裏で二人のメイドロボが実況をしている。ってかシルファちゃんも実況するんだ。

「さぁ、先攻は来栖川エレクトロニクスズ」
「1番セカンドこのこの」
「シルファちゃん、それじゃ分からないでしょ?」
「いいんらもん。このこのはこのこのらもん」
「もういいです。私がやります。1番セカンド柚原様」
「様でもおかしいもん」
「でも呼び捨てにするわけにもいかないでしょ?」
「さん付けにすればいいんれす」
実況席が揉めてるな〜。とりあえず様付けは勘弁して欲しいところだ。

「あっと、第一球投げました。ストライク」
「遅いことはないよな・・・」
「むしろ早くねぇか?あれが60過ぎの投げる球かよ」
「しかし、このあちしの球ほどでは無いな。かっ飛ばすのだ、このみん!」
確かにまーりゃん先輩の球速は120km/h超えてるからな。
しかし雄二が言うことも最もだ。目測だがおそらくあちらも120km/h近くは出ているだろう。

「スピードガンで測ったで。118kmやて」
「普通に速いですね・・・」
「ふ、ふん。大したことないな」
確かにまーりゃん先輩の方が速い。まーりゃん先輩のMAXで125km/hだ。
だからと言って、常時125km/hが出るわけじゃないし、球速はほぼ互角だと考えた方がいいだろう。

「裏を返せば練習で多く打って来た球速よ。打てないことは無いわ」
タマ姉の言う通りだ。練習通りにすれば打てるハズだ。

「シルファちゃん、応援歌は?」
「忘れてらの。このこののテーマ曲は小さな勇気〜がんばれ女の子〜らの」

カキーン

「柚原さん打ちました。センター前ヒット!」
「・・・まだ流してないのに」
「このみナイスバッティング!」
「それじゃ早速・・・」
タマ姉が早速このみにサインを送る。いきなり盗塁?さすがタマ姉の采配は積極的だな。




「2番センター瑠璃様」
瑠璃ちゃんはやっぱり様付けのままか。

「きっとここは私のためにホームランを打ってくれると信じています」
「妄想乙らもん」
「シルファちゃん、どこでそんな言葉覚えたの?」
「貴明の部屋」
なんか身に覚えのないことを言われている・・・

「るりるりのテーマ曲はいつも一緒、ずっと一緒らの」
ボタンひとつで応援歌が流れるとは本当に便利だ。
ところで俺の時は本当にちゃんとした曲が流れるんだろうな?

「ピッチャーセットポジション、あっと牽制球!柚原さん頭から帰る・・・アウトです」
「あ」
「え!?」
「マジ?」
「う、上手い」
「感心してる場合か、貴明。アウトになっちまったぞ」
いや、今のは相手ピッチャーを褒めるところだろ。それほど見事な牽制だった。
まーりゃん先輩の牽制とは雲泥の差だ。

「ごめんなさい」
「いやいや今のは相手が上手かった。ドンマイ」

カキーン

「瑠璃様打ちました!大きい、大きい、大きい、大きい、大きい、あ〜風に戻されました。センターフライです」
「風なんてちっとも吹いてらいもん。それに定位置らもん」
「瑠璃ちゃんはセンターフライか」
「貴明何してんだよ、お前の打順だぞ」
「え?あ、そっか」
うっかりしてた。ネクストバッターズサークルに入ってないといけなかったのに。




「3番ファースト貴明さん」
「結局ご主人様の曲はろれにするの?」
「そうね。チーム応援歌の予定だったHeart To Heartにしましょう」
「わかっらの」
スタンドから音楽が聞こえて来る。・・・まぁこれならまだいいか。

「ボール」
確かに老人にしちゃ早いけど・・・

「若いのはいいのう。わしはしゃがんでるのも辛いわい」
「いやいや十分お若いですよ」
キャッチャーの老人、吉田さんだったか?が話し掛けて来る。話術で惑わす気だろうか?

「ストライク」
ワンストライクワンボール。アウトローに2球連続。もう1球見るか?
ツーストライクに追い込まれても、この球速なら三振することはまずないだろうし。

「ツーボール」
「ピクリともせんのう。何か狙っておるのかね?」
「いえいえ出たトコ勝負ですよ」
今のもアウトコース。今の球はストライクに入れる気だったんだろうか?

「ストライク。ツー&ツー」
平行カウントか。徹底してアウトコース攻めだな。クリーンナップだから警戒しているのか?
でもコースはそこまで厳しくないし打てるな。

「ピッチャー第5球投げました」
アウトコース、予想通り!

カキン

「あ・・・れ?」
今の・・・変化した?ジャストミートしたと思ったのに。
コースも甘かったし捉えたと思ったのだが・・・

「ピッチャーゴロです。来栖川エレクトロニクスズランナーは出たものの三人で攻撃を終えました」
「よっこらしょっと。惜しかったのう、打ち損じとは」
「・・・どうも」
キャッチャーの吉田さんがバットを渡しながらそんなことを言って来た。
打ち損じはそうだろうけど、今のストレートだったか?




「どんまい、たかりゃん」
「すいません。まーりゃん先輩に回したかったんですけど」
三者凡退じゃないけど、三人で攻撃を終えてしまった。先制点取りたかったんだけどな。

「無得点か。まぁまだ1回だ。気合入れて行こうぜ」
「お〜!」
「タカ坊」
「何?」
「今の打席何か気になったんじゃない?」
タマ姉は俺にファーストミットを渡しながら聞いて来る。
さすがタマ姉。ちょっとした俺の表情から違和感に気付いたのだろうか。

「何か手元で変化した気がしたんだ」
「変化・・・ね。何か気付いたことがあったらすぐに言うのよ」
「分かった」
あっちのチームのバッティングはどうなんだろうか?

「ボール」
「ツーボール」
「スリーボール」
「フォアボール」
「ドンマイ、まーりゃん先輩」
最近はストライク入ってたんだけどな、まーりゃん先輩。

「向坂先輩、今の打つ気なかったように見えましたね」
「そうね。小牧さん、もう一つ気付かなかった?」
「え?え〜っと・・・・」
「随分インコース寄りに立ってましたね」
「ほえ?」
「郁乃ちゃん正解。あれだけ寄ってると、ご老人相手にはいくら傍若無人のまーりゃん先輩でも投げ辛いでしょうね」
万が一ぶつけて何かあっても事だし。まぁぶつけるよりはいいけど。
しかし初回ノーアウトから苦手なランナーが出てしまった。大丈夫だろうか?

「とりあえずこれなら前進守備でいいでしょう」
タマ姉から前進守備のサインが送られる。まぁ当然か。長打も考えられないし。

「ツー&ツーに追い込みました。未だにシルバーフォックスはバットを振っていません」
「振る気無いんじゃないんれすか?」
シルファちゃんの言う通りなら助かるんだけど、それは無いよな・・・

「走った!?」
「マジかよ!?」
「スリーバント!?タカ坊!」
タマ姉の声が聞こえて来るより先に俺は走り出していた。

カキン

冷静に球を処理する。そして雄二が送球先を指示した。
「貴明、ファーストだ!」
「おう!って誰もいねぇ」
そうか、セカンドのこのみは盗塁に備えて二塁に入ったんだ。

「タカ坊、自分で走りなさい」
「分かった」
ランナーの足は当然早くない。

「アウト」
悠々とアウトを取ることに成功する。

「三塁だ!」
「え?」
しかし、いつの間にか1塁ランナーは3塁に向かっていた。
雄二の声がなければ全く気付かなかっただろう。

「このっ!」
しまった、送球が逸れた。由真が何とか捕ったものの
「セーフ!」

「くそ」
「1アウトランナー3塁か。え〜と今の場合はスコアブックにどう書くんだっけ?」
「ヒットはもちろん、暴投、後逸、ボーク、色んなパターンで失点の可能性があるのが3塁にランナーがいるってことなのよね」
「まーりゃん先輩、頑張れ〜」
久寿川先輩が応援してるけど、多分今のまーりゃん先輩には聞こえてないだろうな。
しかし今のプレイにエラーは付かなかったが、俺のせいでもある。

「あ〜もう。こうなったら三振奪ってやる」
ツーナッシングと追い込んだ3球目。まーりゃん先輩から雄二へ逆サインが出た。
あのサインは・・・スライダーだ。




「げっ!」
「暴投で1点と」
「い、郁乃。落ち着いてる場合じゃないよ。点取られちゃったんだよ?」
「慌てたからって何も変わらないでしょうが」

「今度こそ!」
「スライダー。右打者の外角に逃げて行く球ね。でもボールだけど」
「スリーボール」
「フォアボール」
せっかくツーナッシングだったのに、四球で歩かせてしまった。

「タイム」
雄二がタイムを取って内野陣を集めるジェスチャーをする。




「まーりゃん先輩落ち着いて下さいよ」
「あたしは落ち着いてる!」
「まだ1点入っただけっすよ」
無安打で1点。さらにランナーが出た。落ち着けって方が無理か。

「1点で抑えましょ。次はあたしがホームランで返してやるしさ」
「由真にホームランが打てるとは思えないけどな」
「何ですって〜!」
「じゃあ次の回で俺が」
『絶対に無理』っす」
「ハモるな〜!!」
俺と由真、吉岡さんも見事にハモってしまい、お互いの顔を見合わせて笑い合った。

「酷いよ、みんな」
「そうだ、このみも言ってやれ」
「私もハモりたかったのに」
「そこかいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
見事なボケをかましたこのみを見て俺達は更に笑う。
傍から見れば点を取られたのに笑っているという変な光景に映るだろう。
まーりゃん先輩も釣られて笑っている。

「あはははは。あ〜笑った笑った。じゃ、ゆまりゃん任せるぞ。」
「え?ええ。任せてください」
良かった、これなら大丈夫そうだ。

「あ、まーりゃん先輩。プランKで行きましょう」
「K・・・んふふ、たかりゃんお主も悪よのう」
「成功するかしら?」
「大丈夫。今の笑いが良い隠し蓑になって成功するよ」
プランK。内野手にのみ関係する禁じ手である。まぁ禁じるほどでもないけど。

「1アウトランナー1塁でバッターは4番に回ります」
「アウト」
「あれ?」
「隠し球れすね。せこいれす」
「すいませんね。これも勝負ですから。ツーアウト〜」
Kは隠し球のKである。しかしこうも上手く行くとは思わなかった。

カキーン

「な!?」
「は、入りました。4番センター新城選手のソロホームラン」
ギリギリだったとは言え、ホームランには違いない。
風はほとんど吹いてないから流されたわけでもない。完全に捉えられた。
せっかくまーりゃん先輩が立ち直ったと思ったのに。

「タイム」
「いらん!俺様を信用しろ」
タイムを取って駆け寄ろうとした雄二をまーりゃん先輩が制した。

「まーりゃん先輩頑張って〜!」
ベンチから声援も飛んでくる。きっと大丈夫だ。そう、まだ1回の裏なんだから。





続く

今話から結局タイトルを1番から順番にしました。
ってことで2度目の4番ピッチャーまーりゃんですが、話的には4話になります。
それにしてもまだ1回の裏終わって無いんですけどw
何だ、これ?2話で試合終わらす予定だったハズなんですが、この調子だと試合前考えてもまだ3話は掛かります。
さすがに次からはもうちょい省略する予定ですが、6話で2試合目が始まるかどうかは際どいところです。
ちなみに掛け声は某高校野球漫画から。



                                         
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