ToHeart2〜Baseball Days〜
1番セカンドこのみん
「野球しようよ!」
放課後の生徒会室に今日も突如として現われまーりゃん先輩はいきなりそんなことをのたまった。
まぁこの人がいきなりじゃないことなんて本当に稀だが、と河野貴明は考え直す。

「はぁ〜」
「って、何で溜息つくんだ、たかりゃん!せっかく人がパワプ○風に誘ってるのに」
「今度は何が原因ですか?」
「リトルバスタ○ズやってたらしたくなった!それだけだ、他に理由はない!」
相変わらず発想がブッ飛んでいる。
リトルバスタ○ズってのが貴明にはよく分からないが、野球をしたくなるようなゲームだったことは予測出来た。

「ってことで早速草野球大会に申し込んできた!練習開始だ〜!!」
「や・り・ま・せ・ん!」
「何で、何で、何で〜?」
「仕事中だからです。それで用が終わりなら帰って下さい」
「たかりゃんのドケチ〜」
まーりゃん先輩は駄々をこねる子供よろしく入り口の近くに寝転がって足をバタつかせている。
相変わらず貴明からはパンツがモロに見えているが、絶対にワザとであると確信させられる。
もうすぐ1学期も終わりで仕事が山ほどある。
そんなことをしている暇はないと貴明が仕事に戻ろうとした時、生徒会室の扉が再び開いた。

「貴明〜、アンケート用紙回収して来たぞ」
「良いところに来た、ゆーりゃん」
先ほど雑用を押しつけた生徒会専用雑用の雄二だ。

「どうしたんっすか、まーりゃん先輩?」
「この野球大会に出ようって誘ってるのにたかりゃんが冷たいんだよ〜」
まーりゃん先輩は手に持っていた、おそらく草野球大会の案内の紙を雄二に手渡す。

「野球大会?それはオレも遠慮したいトコなんっすけど?」
「ほほう、これでもかえ?」
「こ、これは・・・!喜んで参加させて頂きます」
何だと?と貴明はいきなりの雄二の翻意にいぶかしむ。

「うむ。それじゃあちしは他にも参加する人を探して来るな。サラバだ」
「雄二、どういう風の吹きまわしだ?」
「男には・・・どうしてもやらなくちゃいけない時ってのがあるんだぜ、貴明」
雄二がこういうことを言う時には絶対に裏がある、そう貴明は確信した。

「・・・何に釣られた?」
「な、何のことだ?」
「惚けるな。その紙は野球大会の紙だろ?景品か何かに釣られたんじゃないのか?」
「いやいやそんなことは無いぞ。純粋なスポーツをしたいという想いからだ」
視線が左上を向いている。典型的な嘘吐きのパターンである。

「それなら今すぐグラウンドでやってる野球部の練習にでも参加して来いよ」
「俺はこのメンバーで野球がしたんだよ!」
「ただいま〜」
そこへこのみがナイスタイミングで帰還する。

「良いところに来たこのみ。雄二が持ってる紙を奪い取るんだ!」
「・・・了解であります、隊長!」
一瞬何事か?と停止したこのみであったが、とりあえず奪おうという結論に達したのだろう。

「うわ、止めろコラ!ああ!」
このみは素早く雄二の手から紙を奪い取ると、貴明に手渡した。
貴明は素早く紙に目を通し、雄二が釣られそうなものを見つける。

「副賞、緒方理奈の限定DVD・・・これか?」
「悪いか〜!!あの物の価値の分からん姉貴のせいで買えなかったんだ〜〜〜!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうしたんだよ、いきなり黙って。って、あだだだだだだだ」
「とことんタイミングの悪い奴だ」
これまたナイスタイミング(雄二にしては悉くバットタイミングだが)でタマ姉こと環が戻って来ていた。
暴言を吐いた雄二は環によってアイアンクローの刑に処せられている。

「全く、一体何を騒いでるの?」
「まーりゃん先輩の持って来たこれ」
貴明は死体と化した雄二を跨いで環に草野球大会案内の紙を見せた。

「・・・・・・ふぅ〜ん。野球大会ね。面白そうじゃない」
「え゛っ?」
「副賞のDVDとかはどうでもいいけど、温泉行きたかったのよね〜」
「そういやDVDの上にでかでかと書いてたな」
DVDの方はおまけだろう。他にも良くわからん副賞がつらつら書いてたし。
思うに下の方はバザーのような、いらないもの在庫一掃セールみたいな感じであろう。

「春休みにも町内会チームで野球やったじゃない。他もあれくらいのレベルならちょっと練習すれば全勝出来るわよ」
「いや、でも生徒会の仕事が」
「夏休みは長いんだから毎日コツコツやれば大丈夫よ」
そんな夏休みの宿題じゃあるまし、と貴明は思ったが環が決めたことに逆らえた試しなど無い。
早々に片付けて夏休みに学校に来るなどということを貴明はしたくなかったのだ。

「・・・このみは」
「楽しそうだね!春休みの時は観てるだけだったし、タカくんやタマお姉ちゃんと一緒に野球やりたいな〜」
「決まりね」
この二人が乗り気な時点でどうしようもない。
貴明は素直に参加しようと思ったのだった。




「よくもこれだけのメンバー集めたもんだ・・・」
1時間後、まーりゃん先輩に体育館に呼び出された貴明たち生徒会メンバーと

「久寿川先輩、戻ってこないと思ったら・・・」
「ご、ごめんなさい。そのまーりゃん先輩に頼まれて」
相変わらずまーりゃん先輩の頼みは断れない久寿川ささら。

「ふっふっふ、河野貴明!今日は野球で勝負よ!」
「はいはい」
「流すな〜!!」
「大体何で勝負するんだよ?打率か?」
「う。それは今から考えるのよ!」
相変わらず勝負のことしか考えてないのか?と思わされる長瀬由真。

「るーこちゃんも参加するんだ。何か狙ってる景品があるとか?」
「まーがちーをくれると言うからな」
「ちーってマッチ棒だよね?」
「違う、ちーだ」
雄二とるーこ。間違っても雄二は生徒会雑用であってメンバーではないと貴明は心の中に付け加えた。

「ねぇねぇダーリン。野球って初めてするんだけど、あたしに出来るかな?」
「いや出来ない方がおかしくない?サッカー以外でも・・・新体操除いて得意なんだし」
「それもそうだね〜」
それより問題はメイドロボが参加出来るかの方なんだが。
・・・黙ってりゃ分からないかと貴明は自己完結した。バレなければイカサマじゃない。
河野はるみことミルファ。

「お、お兄ちゃん。菜々子頑張るね」
「別に無理しなくていいんだよ、菜々子ちゃん。応援してくれるだけで嬉しいし」
「ううん。菜々子お兄ちゃんと一緒に野球するも」
「分かった。一緒に頑張ろう、菜々子ちゃん」
「うん」
菜々子は嬉しそうに貴明に微笑んだ。

「貴明〜」
「珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃん」
「さんちゃんがどうしても、って言うから参加すんねんで?参加する以上はさんちゃんの為にも絶対勝つんや」
「分かったよ」
双子の姫百合珊瑚と瑠璃。

「このみの一大事って聞いてやって来たよ」
「一大事ってほどじゃないよ。でもちゃるとよっちと一緒に野球出来るなんて楽しみだね」
「任せろ。よっちがこのみの為にホームランを打ってくれる」
「人任せ!?」
ちゃるとよっちこと山田さんと吉岡さん。
どうやって1時間で勧誘したのか甚だ疑問である。

「花梨は何で参加したんだ?」
「副賞にあるUMA探査装置ってのが欲しいんよ」
「そ、そうか」
うさんくささ満点のUMA好き笹森花梨。

「貴明さん、野球って初めてなんですけどお役に立てますか?」
「大丈夫。みんな素人だし。一緒に頑張ろう」
「はい」
いろいろと運命的な草壁優季。

「あたしなんか参加させても意味ないわよ?」
「い、郁乃〜。せっかくまーりゃん先輩が声掛けてくれたんだし」
「いやいやいくのんには重要な任務を授ける。誉れ高きスコアラーだ」
『スコアラー?』
年子の小牧愛佳と小牧郁乃の姉妹。郁乃は最近退院したばかりなので車椅子に乗っている。
以上計18名だ。よくもこれだけ集まったものだと貴明は感心した。




「皆の者、注目。これより俺の演説を始める!」
演説?俺を含めた全員の視線が壇上にいるまーりゃん先輩に向いた。

「その前に役職発表。監督、キャプテン、プレイングマネージャー、スカウト、コーチまとめて俺!」
プレイングマネージャーの意味を分かって言ってるのだろうか?それだと監督を入れる意味が無い。

「諸君!道のりは決して平坦ではない。試合中に死ぬものもいるであろう」
アスト○球団じゃあるまし、草野球で死ぬのは勘弁して欲しいところだ。

「国民よ立て!悲しみを怒りに変えて、立てよ国民!ジオ・・・あたしは諸君等の力を欲しているのだ。」
まだ誰も死んでないんだが・・・。それに今ジオンって言いそうになってただろ。

「人は平等ではない。生まれつき足の速いもの。美しい者。親が貧しい者。病弱な体を持つ者。
生まれも、育ちも、才能も、人間は皆違っておるのだ。そうっ!人は差別される為にある!」
最近どこかで聞いた言い回しだ。ぶるぁぁぁぁぁとか言いそうな人が言ってた気がする。

「だからこそ、人は争い、競い合い、そこに進化が生まれる。不平等は悪ではない!平等こそが悪なのだ!
諸君!自らの道を拓くため、なんみ・・・求める副賞を手に入れるために!
あと一息!諸君らの力を私に貸していただきたい!そして私は・・・まーの元に召されるであろう!!」
召されるの!?もう何が言いたいのか良く分からなかったな。
久寿川先輩と菜々子ちゃんは何か感銘を受けたのか拍手をしているが、その他は茫然としている。

「練習は来週の終業式より開始する。目指せ優勝!」
「お〜!」
健気に菜々子ちゃんが一人で呼応する。俺もやっといた方が良かったな。
菜々子ちゃんが困惑してるし。

「元気が足らん!そんなことで勝てるか!目指せ優勝!!」
『お〜〜〜〜〜!!!!!』
こうして俺達は草野球チームを結成したのだった。




「それじゃ練習開始だ!気合入れて行くぞ、皆の者」
終業式の後、山田さんと吉岡さん、菜々子ちゃんが合流して10日ぶりに全員が集合した。
今日から夏休み・・・正確には明日だが。まーりゃん先輩は先日同様やたらと気合が入っている。
まぁ俺も恥をかくのは嫌だからと、あれから毎晩100回素振りしたりしてたんだけど。

「ノック行くぞ〜。まずは6-4-3だ」
「いきなりレベルが高過ぎます!まずはキャッチボールでしょ!?」
「むぅ。仕方ないな。それじゃキャッチボールからだ」
「その前に柔軟運動しないと・・・」
タマ姉の言う通りだ。いきなり運動して身体にいいわけがない。

「何で俺が貴明と柔軟しなきゃいけないんだよ」
「男同士でするのは当然の流れだろうが」
雄二が文句を垂れてるが、女の子と柔軟なんて出来るわけがない。
・・・・・・危ない。雄二が変なことを言うから妄想してしまうところだった。
相変わらず愛佳が色っぽい声を出しているのは、聞こえないフリでいこう。




「キャッチボールの後は・・・ノックだ」
「どんだけノックが好きなんですか・・・」
まーりゃん先輩に任せていたら試合まで辿り着けそうにない。

「練習考えておきましたから、こんな感じで行きましょう」
とタマ姉が柔軟とキャッチボールの最中に考えたという練習プランを書いた紙を提示する。

「さすがタマちゃん。俺様もそう思っていた」
「それぞれの能力が知りたいし、トスバッティングと守備練習を平行にしましょう」
完全に監督が入れ替わってるけど気にしないでおこう。
世の中には適材適所という素晴らしい言葉がある。

「そういやまーりゃん先輩」
「何だね、たかりゃん?」
「この野球の道具ってどこで調達して来たんですか?どれも新品みたいですけど」
「我々には心強いパトロンがいるのだよ」
「パトロン?」
どこの誰が草野球なんかに支援してくれるんだ?

「明日になれば分かるぞ」
「はあ」
一生分からない方が良さそうだと思うのは多分間違いじゃないだろう。




「郁乃はルール大丈夫なのか?野球とか観ないだろ?」
「今本読んで勉強してる。ルールだけじゃなくスコアブックも付けないといけないしね」
昨日言っていたスコアラーのことだろう。変なトコで郁乃もマジメだ。
いや・・・本来マジメなんだけど、愛佳を困らせたくて不真面目を装ってるだけか。

「大変だな」
「それくらいしか手伝えないし」
「そんなことないぞ。応援してくれるだけで嬉しいよ」
「あんた・・・よくそんなこと真顔で言えるわね」
「え゛っ?何か変なこと言ったかな?」
「別に。次あんたが打つ番でしょ。さっさと行きなさいよ」
なんか郁乃の顔が赤かった気がするけど、どうしたんだろう?
それはそうと、俺ももうちょっとルールの勉強しといた方がいいよな。
せっかく郁乃がスコアブック書いてくれても読めなきゃ意味ないし。




翌日
「そんじゃユニフォームと背番号配るぞ〜」
「ユニフォーム!?」
「すっげぇ〜。本格的だな」
「我らのチーム名は名づけて、来栖川エレクトロニクスズ!」
・・・は?来栖川・・・エレクトロニクスズ?どこかで聞いたような名前だ。
というか思いっきり聞いたことがある。
家庭用メイドロボHMXシリーズの開発で知られる、来栖川グループの電子工学部門である。
つまるところイルファさん、ミルファちゃん、シルファちゃんの製作元だ。

「思いっきり広告じゃないですか!」
「仕方ないだろ〜。ユニフォーム作って貰ったんだから」
「うちが買おうか〜?って聞いたんやけど、まーりゃんがいらへんってゆうてん」
と珊瑚ちゃんが言った。

「へぇそうなんだ。まーりゃん先輩もたまにはまともなこと言いますね」
「たまにはとは失礼だぞ、たかりゃん」
チーム名はちょっと恥ずかしいけど、タダみたいだし貰えるのなら有り難く頂こう。
しかしそんな有名企業が草野球で宣伝しても意味無いと思うんだけど。
多分珊瑚ちゃん経由で頼んだんで、向こうも断れなかったんだろう。

「だからな、バットとボール、グローブにヘルメット、プロテクターも買ってんで〜」
「前言撤回」
一瞬でも感心した俺がバカだった。やたら綺麗な野球道具は珊瑚ちゃん提供だったのか。

「それじゃ1番は当然オレ!2番はたかりゃんだ」
「え?俺がキャッチャー?」
「うむ。俺の嫁として認定する」
「何で嫁なんですか・・・」
「バッテリーは夫婦だと言うだろ?」
「女房役とは言いますけど、嫁とは言いませんね」
この人の脳内はどうなっているんだろうか?

「細かいこと気にするな。んで3番はタマちゃんだ」
「はい」
「さっきから選考基準が見えないんですけど・・・」
「キャッチャーは体当たりとかされる危険性があるからな、男じゃないと。んで背の高いタマちゃんをファーストに」
なるほど。一応は理に適ってるわけだ。草野球で体当たりがあるかどうかは別にして。

「4番はこのみんだ」
「はいであります、隊長!」
「違う違う。ここではキャプテンと呼べ!」
「了解であります、キャプテン!」
「うむ」
「もう訳が分からん」
このみがセカンド

「5番はゆまりゃん」
「あたし?サードか・・・。ま、いっか」
由真がサード

「6番はよっちーだ」
「よっちー?」
何かどこぞのヒゲオヤジが乗る爬虫類の名前みたいだ。

「よっちからよっちー」
「あ、ハイっす」
「頑張ってくれたまへ」
吉岡さんがショート

「7番ははるりゃん」
「はるりゃん?」
またまた聞きなれない名前が出て来た。

「河野はるみではるりゃん」
「はいは〜い」
そういや結局メイドロボは参加していいのかどうか調べるの忘れてた。
もうどうとでもなれ。多分そういうことは主催者側も想定していないだろう。

「8番はるりりゃんだ」
「センターとか面倒そうやな〜」
センターが瑠璃ちゃん。

「9番はるーりゃん」
「るー」
ライトがるーこ。

「ちょっと待った〜!俺レギュラーじゃないの?」
「ん?悪いがゆーりゃんは戦力外通告だ」
「そんなバカな!?」
まーりゃん先輩が投げる球でヒットが全く出てなかったし、妥当と言えば妥当だ。
トスバッティングならまともに打ててたのに、よっぽど運が悪いんじゃないんだろうか?

「私たちは応援させて貰うね」
「せいぜい頑張んなさいよ」
小牧姉妹がそう言うのも無理は無い。
郁乃は車椅子だから無理だとして、愛佳は相当下手だからな〜
だがマネージャーとしてなら愛佳は大変重宝する存在ではある。

「待った待った。まだ終わって無いぞ。
10番がかりりゃん
11番がさーりゃん
12番がまなちん
13番がゆうりゃん
14番がちゃるちー
15番がさんりゃん
16番がいくのん
17番がなーりゃん
18番がゆーりゃんだ」
どうもまーりゃん先輩の呼び方だと誰が誰だかよく分からない。
え〜っと、笹森さん、久寿川先輩、愛佳・・・

「ん?今ゆーりゃんって2回言いませんでした?」
13番と18番で2回言った気がする。

「13番はゆうりゃん、18番がゆーりゃんだ」
どこが違うのかサッパリ分からない。多分雄二と草壁さんの優季だろう。

「どっちがどっちなんですか・・・」
「ん〜じゃあゆうりゃんをくーりゃんかこーりゃんにするか?」
「だからどっちがどっちなんですか・・・」
もう訳が分からん。まーりゃん先輩は草壁さんがゆうりゃんで、雄二がゆーりゃんと指をさして説明する。

「じゃあゆーりゃんが草壁さんで」
「違う。ゆうりゃんがくーりゃんだ」
「あ〜もう面倒臭い」
ゆうりゃんがくーりゃんでゆーりゃんがこーりゃんか?何が何だか分からん。

「くーりゃんって草壁さんの『く』ですよね?」
混乱している俺の横で愛佳がまーりゃん先輩に尋ねた。それも分かり辛い気がするけど・・・

「草壁さんはそれでいいの?」
「あ、はい。くーりゃんですか。可愛いですね♪」
草壁さんは嬉しそうな笑顔を返してくれる。まぁ本人が気に入ったならいっか。

「そんなことより!18番はカッコ良いけど、レギュラー交代してくれよ〜」
エースナンバーだから有り難く受け取っておけばいいものを。
まぁ草野球では18番なんて9割9分補欠の称号だが。

「頼む、貴明。俺にレギュラーを昼飯1食分で譲ってくれ」
「安っ!」
別にレギュラーにそこまで拘りは無いが、そんな値段で譲っては俺の信頼に関わる。

「分かった。2食、いや3食奢るから。何ならジュースも付けていいぞ」
「ええい、鬱陶しい」
「うるさいわね。それじゃ私が交代してあげるわよ」
「マジで!?さっすが姉貴!それで何食奢ればいいんだ?」
「いらないわよ!」
タマ姉はやれやれと言った感じで背番号を手渡そうとして止まった。

「そうね、その代わりあんたタカ坊とポジション代わりなさい」
「え、何で?」
「い・い・か・ら」
「あだだだだだだ、分かった、分かりました〜〜〜!!!」
「ん〜それじゃ2番がゆーりゃんで3番がたかりゃん、18番がタマちゃんだな」
キャッチャーはかなり大変だろうし、雄二がやってくれるなら助かる。
でもファーストも最もボールが来るところだから責任重大なことに変わりは無いが。

「それでは早速ユニフォームで練習するぞ。着替えたらグラウンドに集合するのだ」
「何でユニフォームで?」
「試合当日着て動きが鈍いと意味が無いだろ?」
「それも・・・そうですね」
今度こそまともなことをまーりゃん先輩が言った。





続く

途中から貴明視点になってるのは、ただ野球の心理的やりとりを描写していきたかったからです。
まぁ単純に三人称が書き難いってのもあるんですが。
当初は貴明をキャッチャーにして、守りのシーンでも心理的やりとりを盛り込もうかとも思ったんですが、
それだと余りにも文章が長くなってダレるので断念。でも補欠キャッチャーにしたので後半の投手戦に出番があります。
ちなみに野球はそこまで詳しくないので、変なトコがあったら突っ込んで下さって結構です。
しかし1週間で上手くなるか、とか能力的なものは話が作れなくなるので、その辺りは暖かい目で見守って下さい。



                                      
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