補足この話は音夢ルートのラストシーン、屋上からエンディングの桜の木のシーンまでの空白のストーリーを独断と偏見により構成されてます。




「風見学園です!速くお願いします!!」
純一は携帯電話を握り締め叫んだ。

『さよならだね、兄さん』

ふざけるな!なにがさよならだ!

純一は音夢を背負い、階段を駆け下りる。上履きのまま校舎を出て、校門へと急ぐ。
「なんだよっ!まだ来てないのかよ!」
その時になって正門側からでは車が入って来れないことに気付く。
「くっ、裏門からなら!」
裏門は教員の乗用車が出入りしていた筈。純一は裏門へ向かって走り出した。

次第に救急車のサイレンが近づいてきた




さくらは、『秘密基地』とよんでいた桜の木の下にいた。
「おばあちゃん・・・」
そっと、木に触れ呟く。


「音夢っ!音夢っ!!目を開けてくれっ!」
救急車は水越総合病院へと急いでいた。
救急隊員が音夢の容態をみるが、様子を見るからに思わしくないことが手に取るようにわかってしまう。
「音夢・・・お願いだ・・・死なないでくれ・・・」
純一は音夢の手を握り締めていた。


「諦めれたと思ったのにな・・・」
まるで、桜の木に話しかけるように・・・
「でも・・・これ以上・・・」
そして、桜の木に抱きついた。
「これ以上、音夢ちゃんを苦しめたくない・・・お兄ちゃんを悲しめたくない!」
その目からは涙が溢れてきた。
「ごめんなさい」
さくらは泣いていた。
「今まで・・・ありがとう」


救急車は水越総合病院へと到着した。
音夢をのせた担架は治療室へと走る。
「音夢っ!しっかりしてくれ」
純一は音夢を呼び続けた。その顔は涙で濡れ、すでに目が赤く腫れていた。


枯れない桜の木は不思議な光に包まれていた。
「私はもう・・・大丈夫だよ」
その光は次第に強くなっていった。
「・・・・・・さよなら、おばあちゃん」

枯れないと言われ続けた桜の木は弾ける様にその花びらを全て散らせた。

さくらはその花びらを・・・夕日に照らされたその花びらを見つめていた・・・・・・・・・




「音夢っ!!」
遠くて・・・そして、すごく近くで純一の声が聞こえた。

『兄さん・・・?』
ゆっくりと目を開けるとそこは見慣れない所だった。

「ね・・・音夢?」
「兄さん?どうしたの」
純一は一瞬驚いたような顔をしたが、次の瞬間音夢に抱きついた。

「えっ?にっ、兄さん・・・」
「よかった・・・よかった・・・」
その時になって初めて純一が泣いていることに気付いた。

「・・・兄さん?」
純一は力を抜き音夢を見つめると不意に唇を重ねた。
唇と唇が触れ合うだけの・・・でも、熱いキスだった。
そっと、唇が離れた。

「に・・・・・・兄さん?」
「・・・・・・・・・心配させやがって・・・馬鹿」
互いに顔が赤かった。

「あれ?・・・・・・えぇ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
やっとのことで、音夢は自分が置かれてる状況を把握した。
周りには呆気にとられたり、顔を赤くした看護師や医師が居た。

「ちょ・・・ちょっと、兄さん。恥ずかしいよ・・・」
消えそうな声で音夢は言った。

「言っただろ」
そんな音夢の耳元で囁く。

「自分がどんなバカなこと言ったかのかって後悔させてやるって・・・なっ!」
「あっ・・・」
自分が学校の屋上で倒れたことを思い出した。
意識を失う直前、そんなことを聞いた覚えがあった。

「だからって・・・」
音夢は、さらに顔を赤くした
「・・・もう、バカ兄さん」
周りなんてもう関係なかった。

二人は再び唇を重ねた。




翌日、二人は寄り添って水越総合病院をあとにした。
音夢の回復ぶりには医師も目を丸くした。元から原因不明の不調だっただけに何故治ったのかも不明だった。
でも、二人にはそんなこと関係なかった。また一緒に居られるだけで・・・それで・・・

「そうだっ!音夢」
「うん?なあに」
「看護学校、行って来いよ」
「えっ!?」
「気がついてないとでも思ったか?諦め切れてないんだろ。・・・行って来いよ」
「あっ・・・わかっちゃった?」
「当たり前だ!俺はお前の『恋人』だぞ。傍に居てくれるのは嬉しいけど、やっぱりさ・・・そういうのを邪魔したくないし」
「でも・・・」
「俺なら心配しなくても大丈夫だ!だから、安心して行ってこい」
「・・・・・・ありがとう、兄さん」

二人は寄り添って家路に着いた。
純一が郵便受けを覗くと一通の手紙が入っていた。





終わり

アルフレッド奈園さんあとがき
どうでしたでしょうか?小説初挑戦です。
ちょっと、矛盾しているところもあるとは思いますが・・・
にしても、キスシーン・・・書いてて(打ってて)恥ずかしかったです。いやはや・・・
兎にも角にも、楽しめていただけたでしょうか?



                                           
枯れない桜が散ったとき
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