私と姉とそして…
〜Break Time〜
「それじゃあ、まゆき後よろしくね」
由夢ちゃんとの約束通り――ううん私が勝手に約束しただけ――ではあるけど、やることを済ませて早く帰ることにした。

「はいはい、後のことは気にしないで…早く帰って妹くんを慰めるんでしょ?」
「うん。ありがとね」
「だからいいって、…よく分からないけど、早く元気になると良いね妹くん」
まゆきはもう弟くんの存在を忘れている。
だから、由夢ちゃんがなんで落ち込んでいるのか分からない。
それでも早く帰るように言ってくれてホントに良いパートナーだと思う。

「ホントにありがとね、まゆき!」
「何度も言わせないの、いいって言ってるでしょ」
「うん。じゃあまた明日ね!」

帰りの途中で寄ったスーパーで、由夢ちゃんが元気になるような料理を考えた。
ふと携帯のディスプレイを見てみると…

『着信あり…1件』
と書いてあった。見てみると…

『発信者…由夢ちゃん』
とある。もう一度ディスプレイを見てみる。

『発信者…由夢ちゃん』
何度見ても由夢ちゃんからの電話だった。すぐ私は由夢ちゃんにかけた。




プルルル…プルルル
携帯に電話がかかった。

「誰からだろう?」
プルルル…プルルル
私は決意したように、兄さんとの思い出を書いていた。
かったるいので携帯の電源を切ろうと、ボタンに触れようとすると、

『お姉ちゃん』
とディスプレイに書いていた。
私はすぐに電話に出た。

「もしもし、お姉ちゃん?」
『由夢ちゃん!?』
私の携帯にかけているのに私が出たことに驚いた様子のお姉ちゃん。

『由夢ちゃん。さっき電話もらったのに出れなくてゴメンね』
「ううん。いいよ別に」
『……なんか、いったら由夢ちゃんに失礼かもしれないけど、なんだか声が元気になったね』
「……私もう泣かないから」
『え?』
お姉ちゃんは聞こえなかったらしく
『ゴメン由夢ちゃんもう一回言って?』
「私もう泣かないから」
さっきよりも、気持ち力強く…
「それから、兄さんは絶対帰ってくるから」
『!?』
……
『うん…そうだね…私たちが信じてないといけないよね…弟くんの事…』
「うん、これだけ言いたかったから電話したの。それじゃあ、やることがあるから切るね。」
『ゴメンね。忙しいときにかけちゃって、もうあと少しで帰れるからね』
「分かった。じゃあね」
『うんまた後でね』
ピッ
それからまた思い出を書き始めた―――




「ただいま〜」
「………」
私が家に帰ってみると、由夢ちゃんは一生懸命何か書いていた。

「由夢ちゃ〜ん?何してるの?」
「………」
聞こえていないようだった。
何を書いているのか後ろから見てみると…

「ん〜?」

『――兄さん
今、何処にいますか?ちゃんとご飯食べてますか?私たちはいつまでも兄さんが帰ってくることを願っています。――』

「由夢ちゃん…」
「あれ?お姉ちゃん?どうしたの泣いてるよ」
「――え?」
由夢ちゃんが言ったとおりうっすらと頬が濡れていた。

「ごめんね由夢ちゃん――お姉ちゃんのせいで弟くんは――」
「いいんだよ。今はそんなことより兄さんが帰ってくることを信じていないと…私たちしか覚えてないんだから…」
といって私を抱きしめてくれた。それから――「電話でもそういったでしょ?」と付け加えた。

「――うん、うん…」
姉が妹の胸に顔を埋める――いつもとは違う立場――お姉ちゃんぶっていたのはただの強がりだった。

「一緒に、帰ってくるって信じよう…」
「うん」
「だから泣いてなんていられない…」
「お姉ちゃんも泣いてなんていられないね…」
涙をぬぐって言った。これは決意の言葉――

「お姉ちゃんは強いよ――兄さんがいなくなってからも、ちゃんと学園に通ってるし」
「違うよ…弟くんがいない現実から目をそらしたかっただけなんだよ…ちゃんと弟くんのこと考えてた由夢ちゃんの方が偉いよ…
大事な人だもんね――」
弟くんの事諦めるため――由夢ちゃんと弟くんを応援するために…

ふと、悲しそうに言った一言――もちろん私は兄さんに対するお姉ちゃんの気持ちは気付いていた。
でも、お姉ちゃんに負けたくなくて兄さんにこっちを向いて欲しくて必死だった。
そのうち、兄さんの事しか考えられなくなり、周りが見えなくなり、自分の利益になる事しか考えれなくなった。
最悪だった自分――そんな自分と決別するためにも、決意したのだった。

「私は諦めない」
「うん、私も」
姉妹で互いに決意した。『桜内義之という存在が必ず帰ってくる、と――』





後編に続く…

Yu*H.Aさんから頂きましたD.C.U由夢SS「私と姉とそして…」のBreak Timeです。



                                        
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